- 作者: 日野瑛太郎
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2014/08/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindle版もあります。
- 作者: 日野瑛太郎
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2014/11/14
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内容紹介
効率よく働いたって、どうせ定時には帰れない!
安定、独立、プライベート、自己投資…。すべてを手に入れる答えは「定時帰宅」を目指すことにある!
「会社に利用されたくない! (むしろ利用したい)」
「空気を読みすぎて動けない! (むしろ空気をかえたい)」
「バリバリ仕事ができなくても定時に帰りたい! (というよりもそれが許される人になりたい)」
という人必見。
「日本人の働き方」に疑問を問い続ける著者がおくる、これからの働き方の実践術!
「ま、帰宅部がいちばんのエリートですから。」
医療関係に勤めていると、「定時に帰れる職場なんて、あるのか?」と思うようなこともあるのです。
研修医をやっていた頃は、むしろ、17時を過ぎてから、自分の仕事がはじまるという感じでした。
その後も、自分の業績になるような研究などは、日常の臨床を終えてから、というのが「当然のこと」でした。
医療現場というのは、時間外に予想外のことがしばしば起こりますし、それに対して、「誰か」が対応しなければならない。まあ、それなりの給料ももらってるし……と言いたいところなのですが、この業界って、不思議と「仕事のキツさと給料が比例しない」のですよね。
朝から翌朝まで救急でてんてこ舞いしなければならない人が、「うちは勉強になるから」みたいな名目で、信じられないような安い給料で働いている。
ただ、そうやって能力を磨いておくと、たしかに将来、自分を高く売れる、というのもあるのですが……
その一方で、市中病院や民間病院のなかには、あるいは、外来のみのクリニックなどでは、「就業時間中はものすごく忙しいけれど、定時くらいに帰れるし、休みは本当にフリー、というところもある。
「原則的に休みはフリーじゃないか、何言ってるの?」と思われるかもしれませんが、入院患者さんを担当していると、なかなかそうもいかないわけで。「完全に当直医がみるシステム」は日本ではあまり受け入れられていないし、そもそも、ある程度大きな病院になれば、外来と病棟でおこるさまざまな事象を、きっちりこなせるようなスーパーマンなんてありえない。
残業の最大のデメリットは、「自分のために使う時間が減る」ことです。
恥ずかしながら、僕も会社員時代には、毎日のように残業ばかりしていました。
夜遅くまで残業していると、平日は家に帰ったら寝ること以外は何もできなくなってしまいます。せっかくの休日も、平日の疲れを取るためにゴロゴロしているうちに終わっていまい、なんだか仕事のためだけに生きているような、そんな暗い気持ちになったものです。
「こんな生活を老人になるまで繰り返すのは絶対に嫌だ」
そう思った僕は、どうすれば「会社のための時間」を削減し、「自分のための時間」を生み出すことができるかを真剣に模索し始めました。
最初に思いついたのは、「定時帰宅部」を職場で結成することでした。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
ではないですが、早く帰りたい人が徒党を組んで定時退勤をするようになれば、残業しなくて済むのではないかと考えたのです。
「定時帰宅部」には多くの参加者があったのですが、実際の活動は、なかなかうまくいかなかったそうです。
入部したい気持ちも、実行するのが難しかったのも、わかるなあ。
僕も「社畜ライフ」を長年送ってきていて、『脱社畜ブログ』に対しては、「東大を出たすごく能力がある人だからこそ、できる働き方じゃないか、ケッ!」というような黒い感慨を持っていました。
でも、最近になってようやくわかったのは、この本はそもそも「能力があるにもかかわらず、周りの空気に流されて、社畜化してしまっている人々への啓蒙書」なんだな、と。
逆説的にいえば、自分の能力に自信がない人は、「人が嫌がることを率先してやる」というような「便利なヤツ」として生き延びる、という戦略もあるのです。
「仕事を効率化すれば、それで残業は減る」というのは一見、正しいように思えます。
でも、これは実際にはウソです。
仮に、「効率よく働けば残業しなくてよい」という意見を真に受けて、仕事の効率を高める努力をしたろします。
努力の甲斐あって、今まで会社で10時間働くことで出していたアウトプットと同じ量を、今度は7時間で出せるようになりました。ではこれで、残業せずに定時に帰れるようになるかというと、話はそんなに単純ではありません。
「そんなに早く終わるなら、じゃあこれもお願い」
ということで仕事がさらに増やされるのが普通です。
仕事の効率を高めたところで、結局は同じように10時間働かなければならず、状況は変わりません。
むしろ、たくさん仕事をさせられただけ、損をした気分にすらなります。仕事の効率を高めれば高めるほど、仕事はあなたに集中するようになり、『帰れない』状況に拍車がかかる可能性もあります。
僕もこういう人をたくさん見てきました。
「効率よく仕事をこなせる人」は、それで仕事を早く済ませてラクになるかというと、「アイツならできるから」ということで、結局のところ、仕事を増やされたり、頼み事をされたりしがちなのです。
よっぽど「自分は余計な仕事はしませんオーラ」を発しているのでなければ。
そして、そういう「できる人」は、余分に働いているほど給料が上がっているわけでもない。
送別会でみんなに惜しまれ、ああ、羨ましいな、と思うこともあるのだけれど。
この『定時帰宅。』は、これまでの著者の本と比較すると、より実践的な内容になっていると思います。
これまでの著者の主張を読むたびに「本人はそれで良いのかもしれないが、結局、定時で帰った人の分の仕事は、残っている人が負担させられるだけなのでは……」と思っていたんですよ。
そのあたりについても、「少しずつ職場の環境を変えていくためのアプローチ」が紹介されています。
たとえば、こんなシチュエーションを考えてみましょう。
定時を過ぎたあたりから、あなたの同僚が急にソワソワしはじめました。
しきりに時計や携帯電話を確認しては、焦る様子を見せています。どうやら、今日はプライベートで何か大事な予定があるようです。
しかしこの同僚は、少し前に上司から「今日中にやらなければならない仕事」を振られていました。どうやらまだ終わっていないようです。このままでは、プライベートの予定に遅れてしまうかもしれません。
こういうときこそ、まさに「貸し」をつくる絶好の機会だと言えます。
ここでこの同僚の仕事を代わりに引き受け、プライベートの予定に間に合うように帰らせてあげることができれば、自分が同じような状況になったときにほぼ間違いなく助けてもらえます。
直接仕事を代わってあげることができないのであれば、
「今日、何か大事な予定があるんじゃないですか? 大丈夫ですか?」
と上司に聞こえるように、早く帰るための助け舟を出すだけでもよいでしょう。
「プライベートで予定がある」ことを知れば、上司も「別に今日中じゃなくてもいいよ」と振った仕事を引っ込めてくれるかもしれません。自分だと直接は言い出しにくいことを、代わりに言ってあげるというのも立派な「貸し」のつくり方です。
「フォロワーシップ」で、他人が帰りやすくすることによって、自分も帰りやすくなっていく。
自分の都合で「早く帰ります」とは言いにくいけれど、きつそうだったり、用事がある人を「○○さん、今日は早く帰ったほうがいいんじゃないですか」と言うのは、それほど負担がかからない。
自分から他の人に早く帰ることをすすめていけば、他の人も、自分に対して、いざというときにサポートしてくれる。
そういうネットワークをつくれば、あまり軋轢を起こさずに、うまくやっていけるのです。
「本当は早く帰りたい人」って、多いはずだから。
自分で「今日の仕事は終わったから、定時に帰ります」って、身構えずに言える世の中であれば良いのでしょうけど。
仕事をしていると、どうしても終わらない、残業しなければならない状況って、ありますよね。
それはそれで、仕方が無い。
でも、「帰れるんだけど、周囲の雰囲気的に先に帰るとは言えない」というのは、時間があまりにももったいない。
「俺が若い頃は、夏休みなんか取ったことはない」と言う上司でも、みんなで相談して同じくらいの夏休みを申請すれば、そこで「差別」することはできません。
そういうことを言う人はたくさんいるけれど、「アイツは夏休みを取らなかったから偉い」と褒められたとか、給料が上がった、というような話は聞いたことがないんですよね。
そもそも、去年、誰が何日夏休みをとったかなんて、1年も経てば、思い出せないですよね。
仕事上の人材はいくらでも替えが利きますが、プライベートであなたの代わりになる人は誰もいません。
たとえば、恋人と旅行に行く予定があったとして、一緒に行くのは絶対にあなたでなければなりません。他の人では意味がないのは自明です。プライベートに替えの人材はありえません。
そういう意味では、プライベートより大事な仕事なんてものは存在しないことになります。
これは本当に、そうだと思う。
でも、社畜ライフをずっと送っていると、家族に対しても「自分が傍にずっといると、かえって気詰まりなんじゃないかな?」とか、「もっと一生懸命、バリバリ働いているお父さんのほうが、カッコ良く見えるんじゃないかな?」とか、考えてしまうこともあるんですよね。
ワークライフバランスというのは、本当に難しい。