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【読書感想】Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話 ☆☆☆☆


Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話

Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話

内容紹介
【予約キャンペーン】8月29日の発売を記念して予約〜発売直後まで99円セールを実施です!


「売らねば死ぬ、Kindle本のアフィを生活の糧になんとか1000日。日本で恐らく唯一、電子書籍の実売だけで食っている個人が電子書籍担当者のために書いたメディアづくりの実践本」


キンドルユーザーなら一度は見たことがあるかもしれない、ダンボールをかぶった怪しいアイコン。ヘビーユーザーならだいたいお気に入りに入ってるかもしれない、Kindle特化の電子書籍まとめサイト「きんどう 通称:きんどるどうでしょう」管理人のzonです。サイト開設1000日目を記念して「他業界や、出版社業界で編集や紙書籍の営業から、電子書籍の担当になった人」向けにこれだけできれば上手くいく!というところまで具体的にメディアづくりについてまとめました。


「週に一度更新するかしないかわからないブログに、ツイッターと同じ内容を垂れ流すフェイスブック。未読ばかりのLINEや最終更新が三ヶ月前のメルマガとかは負の資産でしかありません。中途半端に手を出すくらいなら最初から絞って順に育ていくほうが確実です【本文より】」


参考リンク:きんどう(電子書籍まとめサイト)


 電子書籍まとめサイト『きんどう』、本好き、電子書籍好きであれば、一度は覗いてみたことがあるのではないでしょうか。
 僕も日ごろからお世話になっているのですが、これは、その「中の人」であるzonさんが、「電子書籍まとめサイトでの本を売ったアフィリエイト収入で、1000日間(2年半)生計を立てていった記録」なのです。
 僕自身もAmazonアフィリエイトをやっていて、ネットでは電子書籍というのが、けっこう売れるものなのだな(とはいっても、この「中の人」とは二桁くらい違いますけど)、と実感しています。
 当たり前のことなんですが、ネットを使っている人は、(アプリを含む)Kindleを使える環境にある人が多いし、kindleには、気になったものを購入してすぐに読める、というメリットも大きいのです。
 旅行に出かけるときには「どの本を持っていくか」で悩むのが楽しみでもあり、面倒事でもあったのですが(本はけっこう荷物にもなりますし)、いまは、Kindleとネット環境があれば、どこでも「現地調達」ができますしね(それでも、電池切れなどに備えて、紙の本も最低1冊は持ち歩いています)。

 だいたい、最近はキンドルで一週間に2000〜3000冊。一ヵ月で1万冊近くが配信されているんですよ。よほど電子書籍の動向をウォッチしている方以外は把握できるわけないじゃないですか。だから、何が発売されてそれがどういう作品なのか、そんな書籍そのものの情報を知ってもらって興味を持ってもらえさえすればそれだけで差別化ができるので自然と数字につながります。つまり「読者への情報提供を徹底する」ことを目指してとにかく効率よく話題になるメディアを作れば電子書籍は売れていきます。


 「それだけで食べていけるレベル」のアフィリエイト収入となると、毎月数十万くらいが最低ラインと思われます。
 「100万冊売る」というのが「現実的な目標」として設定されているのですが、「ついで買い」で本以外のアイテムも売れていくとして、本が100万冊売れると、だいたい数千万円くらいの収入になるのかな(当ブログ推定)。
 ただし、この本のなかでは、amazonアフィリエイトの規約のため、どのくらい売れて、いくら稼げたか、というような、具体的な数字は出てきません。
 それはもう、致し方ないところなのですが、「中の人」のプロフィールに「フィクションも交えている」と書かれていることもあり、そこは「ちょっと物足りない」感じもします。
 「具体的な数字」の説得力って、大きいから。
 それに、「どんな本がいちばん売れたのか?」というのも知りたかった。
 Amazonの機嫌を損ねるのは致命的でしょうし、「中の人」のイメージを閲覧者に植えつけたくない、というのは、よくわかるのだけれども。


 『きんどう』というのは、僕からみると、「素っ気ないサイト」なんですよね。
 セールの紹介もテキストによるヘッドラインが主だし、それぞれの本の感想も、思い入れをふんだんに込めて、長々と書かれているわけではない。
 世の中の「アフィリエイトで稼いでいると言われるまとめサイト」の多くが、販売している商品へのリンクが満ちあふれ、人前で開くのが憚られるようなアダルト系の画像がトップページに並んでいるところもあるのに比べると、むしろ、「地味」な印象です。
 でも、この本を読むと、それは「戦略的なシンプルさ」であり、「あまりにもグイグイと迫ってくるような『書評』は、かえって、相手の読む気を削いでしまうところもあるのかな、と感じました。

 気をつけてほしいマナーについて-大事なポイントですが「買って」「読んで」「感想をくれ」等の読者に行動を頼むのはダメです。読者のやる気を削ぎます。感謝を基本とした行動が望ましいです。また、悪口や悪評に関しては反論はやめましょう。たしかに問題は自分にあるという場合は特定の誰かに向けて説明するのではなくただ一言「ごめん」とツイートしてしばらく黙るくらいが良いですね、あくまでも電子書籍を売るのが目的で、読者をねじ伏せるのは違います。

 僕はこうやって本の感想を書いていて、少なからず「紹介しているこちらの熱意が、うまく伝わっていないな」という「空回りしている感じ」になることがあるのです。
 「強くおすすめ」されると、かえって引いてしまうところがあるのだろうし、なるべく「自分の意志で見つけた(選んだ)」って思いたい。それは僕自身にも言えることです。
 そのあたりの「さじ加減」が、『きんどう』は上手い。
 「売りつける」のではなく、読者に「買うための理由」を提供しようとしているんですよね。


 この本、基本的には「アフィリエイトでラクをしながら一山あててやろう」という人たちを、意気消沈させる内容です。

 本書冒頭でも書いたんですが週末副業で10万円とかじゃなくて、どうやれば億まで届くかを考えているので、基本的にフルタイム以上の労働が前提となっています。人生のための仕事から、仕事のための人生になる感じで頑張りましょう。成果なんて簡単に出るわけないんですから。

 ゼロからメディアを予算かけずに成功させるならセンスもそうですがとにかく根性と犠牲が必要です。毎日四〜八記事アップして記事制作の練度をあげつつ、ツイッターは常時監視してメンションやタイトルなどのキーワードに反応する即レスの精神が重要です。とにかく、序盤は速度が命です。もちろん、中身のないプレスリリース紛いの記事でお茶を濁すのは読者のためにならないので、とにかく魂を込めていきましょう。
 二、三日に一記事? 土日は休み? 何年かけてメディアを成長させる気ですか。一日でも早い成長ペースに乗せるために、序盤に地獄を見たほうが後からサイト運営は楽になります。息をするように更新しましょう。更新こそが人生です。

 いやほんと、読んでいて、「電子書籍を売るだけで食べていくには、ここまでストイックにやり続けなければいけないのか……」と、ため息ばかり。
 アフィリエイトでラクして儲けやがって!って思ってしまいがちなのですが、これだけ多くのサイトがあるなかで、ずっと選ばれ続けるというのは、並大抵の努力ではダメなのです。
 Amazonアフィリエイトの場合には、紹介料の変更なども、「Amazon次第」ですし。


 zonさんは、この本のなかで、こう仰っています。

 ただ、売ることには熱心ですけども、わたしはそんなに読書家ではありません。みんな薄々気づいているとは思うのですが、もちろん普通の人より多く読んではいると思いますが、そこまで深く深く読み込むというわけではなく、情報を摂取して分類して活かしていくということに執心してるタイプなんですよね。
 ちゃんと物語を読んで面白いなーなんて感じる心はありますよ? あるんですけども、わざわざそれを書評するのはちょっと違うんじゃないかなと、みんな読みたい本を勝手に選んで読めばいいんじゃないかな、と。


 これを読んで、西牟田靖さんの『本で床は抜けるのか』に収録されていた、「現代マンガ図書館」の責任者・内記ゆうこさんの話を思い出しました。

 内記ゆうこさんのお父さんの稔夫さんが、この図書館をつくったのですが、1978年の開設時に3万点だった蔵書(および、マンガ関連の資料やグッズなど)が、現在は18万点もあるそうです。

「読むという意味で父はさほど情熱はなかったのではないかな。父がマンガを読んでいるのをあまり見たことがないんですよね。どちらかというと経営とか収集、保存、管理の方が好きだったんじゃないでしょうか。順番に並べるとか揃えるとか。そういうのが好きだった。私はマンガが嫌いというわけではないので、あればパラパラ見たりするんですけど、姉ほどではない。一方で、管理や整理するのがけっこう好きなんですよ。その点で、三姉弟の中で私が一番父に似ています。父も似ているって言ってました」

 zonさんも、こういう「管理や整理が好きなタイプ」で、そういう人のほうが「読むのがいちばん好きな人」よりも、「ネットで本を紹介してたくさん売る」ことに向いているのかもしれませんね。


 この電子書籍、8月29日発売で、僕が買った発売日当日は「99円」だったのですが、発売から時間が経過していくにつれて、値上げしていく予定だそうです(これを公開している8月30日の朝の時点で、150円になっています)
 「早く買ってくれた人が得をするシステム」というのが、うまくいくのかどうか、僕はそれも気になっています。



本で床は抜けるのか

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