
- 作者: 田中紀子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
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- 作者: 田中紀子
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内容紹介
ギャンブル依存症は意志や根性ではどうにもならない、「治療すべき病気」である。この病気が引き金となった事件を知り、私たち日本人は学ばなくてはならない。この国が依存症大国から依存症対策国へと変わるために。
世の中には、さまざまな「依存症」があります。
「アルコール依存症」などは、長年「本人の意志が弱いからだ」と思いこまれてきて、患者・家族ともに苦しみつづけてきました。
「酒好き」「ギャンブル好き」くらいであれば、本人の心がけや経済状況、健康状態で「断つ」ことも可能なのかもしれませんが「依存症」レベルとなると、「本人もやめたいのに、どうしようもない」のです。
ギャンブルであれば「好きでやっている」ようにしか見えないのが、困ったところでもあり。
僕自身、ギャンブル好きで、依存症なのでは、と自分でも感じていたこともありました。
ギャンブルって、本当に怖い。
そして、いまの日本では、ギャンブルがあまりにも身近なもの、手軽なものでありすぎるのです。
日本には1万1627軒のパチンコ店があり、459万7819台のパチンコ台やパチスロ台が設置されています(2014年末時点、警察庁生活安全局保安課発表)。
都道府県数で割れば一県あたり約250軒のパチンコ店があり、成人人口から考えれば、だいたい20人に1台くらいのパチンコ台がある計算になります。
パチンコは、現在「20兆円産業」であり、パチンコ人口は、約1000万人くらい。
ちなみに、20兆円産業といえば、外食産業やインターネット産業と同規模なのだそうです。
それでも、一時期よりはかなり下火になってはいるんですよね。
日本でもカジノ導入が議論されていますが、実際に僕が海外のカジノでも遊んでみた経験からすると、ごく一部のハイローラー(高額の賭け金で遊ぶギャンブラー)以外にとっては、敷居の低さや、お金の減り方など、パチンコはかなり短時間で多額のお金を失ってしまう遊び、ではあるんですよね。
最近は「1円パチンコ」とかもあるとはいえ、それでも店がやっていけるというのは、それなりに儲かっているからでしょう。
競馬などの公営ギャンブルも、インターネットで「どこからでも賭けられるようになっている」し。
基本的に「ギャンブルも社交になる、というような超上流階級の皆様以外は、近づかないほうが無難」なのですが、いまの日本で生活していて、「全くギャンブルに縁がない人生」というのも、なかなか難しいのかもしれません。
そこでハマるかどうかはひとそれぞれ、とはいえ。
「病的ギャンブラー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
世界保健機構(WHO)が”病気”と位置づけている「病的賭博(ギャンブル依存症)」にかかっていると考えられる人たちのことです。そういう人が日本では成人全体の4.8%、つまり約20人に1人いると推定されるといいます。
日本ほど、日常のなかにギャンブルが溶け込んでいる国はないといえます。
街なかにカジノがある国でも、サンダル履きで行けるような施設はほとんどありません。しかし日本では、買い物帰りの主婦がレジ袋を持ったままパチンコ店に入っていっても違和感がないのです。
ちなみにこの「20人に1人」というのは、単に「ギャンブルをやる人」ではなくて、「病的ギャンブラー」すなわち、ギャンブルによって借金をしたり、仕事に穴をあけたり、他の人に迷惑をかけたりするレベルの人です。
日ごろギャンブルに親しんでいる(?)僕でも、「そんなにいるのか……」と驚くばかり。
みんなそれを巧みに隠して生きているのか、そういう病的ギャンブラーばかりが集まってしまうようなコミュニティがあるのか……
『カイジ』とかを読んでいると、なんのかんの言っても、「ギャンブラー的な人生」に憧れてしまう人っていうのも少なくないんだろうな、とは思います。
この本のなかで、精神科医の森山先生が2008年に発表したという「病的賭博者100人の臨床的実態」という論文が紹介されています。
その100人のデータによれば、初診時の平均年齢は39.0歳で、ギャンブルを始めた平均年齢は20.2歳となっています。
平均27.8歳で借金を始め、初診までには平均1293万円をギャンブルに注ぎ込んでいます。平均負債額は595万円。100人のうち28人は自己破産を含めた債務整理をしていました。また、17人がうつ病、5人がアルコール依存症を併発させていて、本人だけでなく配偶者の15%もうつ病やパニック障害などで治療を受けていました。
ギャンブル依存は「それだけ」ではなくて、さまざまな精神疾患を合併する場合も多く、周囲への影響も懸念される、ということなんですね。
ただ、うつ病とかアルコール依存というのが、ギャンブル依存の原因なのか結果なのかは、現時点ではよくわかっていないそうです。
確実にいえるのは、「意志や根性でどうにかなる行動ではない」ということ。
あの大王製紙の元会長・井川意高さんが「ギャンブル依存になってしまった理由」について、著者はこんな推測をしています。
通常、多くの人は。こつこつとスモールステップをクリアしながら人生を歩んでいきます。テストでいい点を取って褒められる、仕事で契約を取る、などといったことがまさにそうです。
そのたびにドーパミンが出て快感を覚えて、その成功体験からまた努力を続けることができるのです。
しかし、褒められることや成功体験がなければ、自尊心が育ちにくくなるだけではなく、健康的なことでドーパミンを出すという経験ができず、良い記憶が定着しません。
つまり、テストで良い点を取る、受験で合格する、仕事で難題をクリアする……といったスモールステップをクリアできたときなどにでも「素直に喜んではいけない」と思うようになってしまいます。
ところがそうして育ってきた人がギャンブルで勝つと、驚くほどのドーパミンが出ます。それが普段味わったこともない感覚なので、快感に酔いしれます。そのギャンブルによる快感の記憶が、ギャンブルを繰り返しているうちに定着してしまい、ハマってしまうのです。
つまり、褒められたり、自分に満足することに慣れていなかった弊害だとも言えるのです。
これはあくまでも著者の推測ではあるのですが、井川さんのお父さんは大変厳しい人で、「父からの拳を受けながら、涙ながらに必死に勉強していた」そうです。
良い大学を出て、立派な経営者であったとされる井川さんが、なぜ、ギャンブルなどという「くだらないもの」にハマってしまったのか。それは、「ギャンブルで勝ったときだけが、自分を素直に肯定できる瞬間だったから」なのだろうか……
著者によると、「ギャンブル依存症患者は、日ごろはちゃんとしている人が多いし、エリートも少なくない」とのことです。
あまりにも子供に厳しくしすぎて、常に「油断するな!」と言い続けるのは、危険なのだな……
この本のなかでは、いま、実際に困っている人がどこに相談すれば良いか、回復の過程はどうなっていくのか、ということも紹介されています。
ただ、アルコール依存と同じで、「100%よくなる」というものではなく、一度落ち着いても、再発のリスクは常についてまわるようです。
これだけ「誘惑」が多い環境でもありますし。
依存症というと、薬物、アルコールの危険度が高く、その次にギャンブル、ゲームがくるように見られる傾向がありますが、ゲーム依存症も重篤な症状に陥ります。「依存症なんてうちの子には関係ない」などと思っていても、皆さんのお子さんはすでにゲーム依存症やネット依存症になっていることもあり得ます。
そこからギャンブル依存症になっていくことも考えられます。ゲームやネットとギャンブルは非常に親和性が高いものになっています。直接関係がないからと関心を示さずにいても、いつそれが自分の人生にクロスしてくるかはわかりません。
依存症は、誰もが他人事とは言っていられない病気なのです。
僕は逆に「なにものにも依存せずに生きていける人間って、どのくらいいるのだろうか?」と考えてしまうこともあるんですよね。
多かれ少なかれ、人は、何かを頼りながら生きている。
その依存の対象の質の違いがあるだけで。
あの林修先生や堀江貴文さんも若い頃競馬にハマっていて、馬券で生活しようとしたけれど、結局、できなかった。
それを考えると、僕ごときがどんなに懸命に予想しても、そんなに当たるものじゃないのは、理解できている……はずなのですが。
それでも、ギャンブル漬けになっていると、「もしこの馬券を買わないで、当たっていたらものすごく後悔するんじゃないか?」とか、思うようになってしまうんですよ、ほんと、ギャンブルって怖い。

- 作者: 井川意高
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