琥珀色の戯言

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【読書感想】なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか? ☆☆☆☆


なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?

なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?


Kindle版もあります。
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内容(「BOOK」データベースより)
今のコンビニは、ここまで進んでいるのか!「便利」なだけじゃない。今では「社会のインフラ」そして「健康のサポート」まで。誕生から40年。ローソンは変化し続けている!

 僕はコンビニのヘビーユーザーなのですが、いちばん利用しているのは、セブンイレブンなんですよね。
 ローソンは、「からあげクン」が食べたくなって入ることもある程度でした。
 コーヒーも、店員さんの手渡し、というのは、セールスポイントではあるのだろうけど、レジが混んでいるときとかは、ちょっと頼みにくいし……
 

 この本を読んでいて、「でも、所詮コンビニ弁当でしょ?」みたいな僕の固定観念と、現在のコンビニの商品が乖離してきているということに、かなり驚かされました。
 身近な存在の「コンビニ」なのだけれど、その産業としてのスケールは、ものすごく大きなものになっているのです。
 そして、各社の競争も、非常に激しい。

 ローソンは2015年3月末現在で、全国に約1万2000店舗ある。そのほとんどが、独立した経営者や企業が経営をしているフランチャイズ(FC)加盟店だ。35坪から40坪で、欲しいときに欲しいものが欲しいところにあるという、時と場所とものを提供している。品物は約2800品目。数万品目あるスーパーマーケットと違い、商品はかなりセレクトされて置かれる。また、独自開発のお弁当やお惣菜、パンなどプライベートブランド商品が約4割。毎週火曜日に新商品が投入される。そのビジネスのスケールは、今や約2兆円。これがローソン全体の売上高である。
 本部の従業員数は約3700人。FC店舗のスタッフを合わせると、その総従業員数は全国で約20万人。そんな彼らが『私たちは”みんなと暮らすマチ”を幸せにします。』という企業理念のもとで日々、進化に挑んでいる。私が行かないずいぶん長い間に、コンビニはとんでもない変化を遂げていたのだ。

 さらにコンビニ弁当・どうにも今なお不健康なイメージを持つ人がいるようだが、実はすでに10年近くも前から保存料も合成着色料も使用されていない。おにぎりには、新潟コシヒカリが使われていたり、金目鯛、ぶり、鰹などなど、地方の高級食材が使われていたりする。お店のフライヤーで調理される揚げ物メニューに加え、揚げたてカツを使ったできたてのサンドイッチが売っていたりもする。冬場に人気のおでんだが、具材の大根は、なんと畑で引き抜かれてから早ければ三日で店頭に並んでいるのだという。


 「コンビニ弁当は、長期保存のためにいろんな保存料などが入っていて、栄養のバランスも悪く、不健康」というイメージもあったのですが、ローソンの現状は、ここまで「健康志向」になっているのです。
 セブンイレブンの「金の○○」シリーズなども、ものすごくクオリティが高いものなあ。
 「夜中や急いでいるときに、他の選択肢がないから、コンビニで」という時代は、とっくの昔に終わっていたのです。
 コンビニの商品は「高品質で、けっこう値段も張る」ものが目立ってきています。
 もともと「安さ」でいえば、ドラッグストアやスーパーマーケットにはかなわないし、コンビニの店舗は飽和状態。
 そこで、生き残っていくためには、「質で差別化する時代」なんだよなあ。


 コンビニの商品といえば、「大量生産・大量消費」みたいなイメージもあったのですが、大ヒット商品・プレミアムロールケーキについての、こんな話も紹介されています。

 実は「プレミアムロールケーキ」は、一個一個、手作りされているのだ。
「コンビニの商品って工業的だと思われている人が多いんですよね。デザートに関しては違うんです。ほとんど手作りです。機械を使っているのは、生地を焼くときくらいで、生地を巻いて、クリームを絞って、というのも、人の手で行われています」

 そうだったのか。
 そこまでこだわっている、ということに驚いたのですが、1日に60万個売れたこともあったという、この大ヒットスイーツを、一個一個「手作り」するというのは、作っている人にとっては、ものすごく大変なのではなかろうか……
 
 
 ローソンのコーヒーについての、こんなエピソードも紹介されています。

 必要なのは、おいしいコーヒーと、また来たくなる仕組み。コンセプトに求められるものが、次第に見えてきた。そして、その後も全国のお店を巡っているとき、象徴的な光景に出くわした。
「岡山のお店で、オーナーさんと奥さんとしばらく話していたのですが、店の裏の駐車場に車が止まり、奥さんがそれに気づいた瞬間に、コーヒーマシンのボタンを押していたんです」
 何をしているのかと思った。コーヒーがちょうど入った頃に、車に乗っていた顧客がお店に入ってきた。
「すると、淹れておきましたよ、とコーヒーが手渡されるわけです。お客さまは、にっこりされてレジでお金を払われて、奥さんの接客がホスピタリティに溢れていたのも素晴らしかったのですが、待ち時間ゼロ、でお客さまはコーヒーを手にできるわけです」
 いわゆる常連さんである。精算時には、ポイントが貯まる「Pontaカード」が提示された。


 こうやってお客さんをとりこにして、「囲い込む」のだなあ、と。
 これは、セブンカフェのようなセルフ式だと、できないサービスですよね。
 でも、僕は正直、コンビニでここまで自分という「個人」を認知されたくないな、とも思うのです。
 コンビニって、「あまり身構えなくても入れて、どこでも同じようなものが買える」のが僕にとっては「長所」で、「Pontaカードもってますか?」と聞かれるのも煩わしく感じてしまうのだよなあ。
 ただ、これだけコンビニ間の競争が激しくなると、たしかに、こういうサービスで「俺のコンビニ」と思ってくれるお客さんを増やすのは、大事なことなんでしょうね。
 「この近くに、コンビニはここだけ」なんて場所は、ほとんど無くなってしまっているのだから。


 ところで、最近ローソンに行くと、他のコンビニに比べて、外国人の店員さんが多いな、って思いませんか?
 東京とかに行けば、どのコンビニチェーンでもそうだよ、って言われそうだけど、僕が住んでいる地方都市では、外国人をあまり見かけないし、近くに留学生が集まる大学があるわけでもないのに。
 その秘密についても、この本のなかで触れられています。

 人材の採用についても加盟店を支援する。MO(マネジメントオーナー)との共同出資で、人材の紹介会社「ローソンスタッフ株式会社」も設立した。ここでは、日本人のみならず、留学生の採用も支援する。
「最近は、外国人のスタッフをお店で見かけることも多いと思います。これには理由がありまして、留学生に、コンビニのアルバイトは大変な人気になっているんです。日本語の勉強になるからです」
 留学生たちの大きな目標のひとつは語学の習得。もしかすると、もっと時給のいいアルバイトもあるのかもしれないが、日本語を学んだり、日本の文化を学ぶという点で、コンビニ以上の勉強ができる場所ないかもしれない。しかも、アルバイトとしてお金を稼ぎながら、である。
「本国を出るときに、ある程度、日本語は勉強してきたかもしれませんが、すぐに店頭に出るのは勇気がいります。そこで、新会社のローソンスタッフでは、日本の文化やマナーの講習、レジ接客、揚げ物の実習などを用意しています。中国、タイ、フィリピン、ベトナムなど、すでに150名以上にご登録いただいています」
 留学生が苦手なものが、意外にもカタカナだという。そしてもうひとつが、日本ならではの文化、例えば、おでん、レシートを両手で渡す習慣……。


 現場では「きれいごと」ばかりではないとは思うのですが、この本のなかで紹介されているローソンは、顧客目線で、社会的な使命も果たそうとしている企業という印象を強く受けます。
 あえて、「セブンイレブンとは別の道を行く」ローソン。
 看板は同じでも、この40年間で、「コンビニ」は、大きく変わってきているのです。

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