
問題解決ラボ――「あったらいいな」をかたちにする「ひらめき」の技術
- 作者: 佐藤オオキ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/02/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindle版もあります。

- 作者: 佐藤オオキ
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2015/03/02
- メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
ロッテ、エステーなどの日本企業からコカ・コーラ、ルイ・ヴィトンなどの欧州名門ブランド、さらには「箸」や「桶」の伝統工芸職人まで―世界中がうなった「問題発見プロフェッショナル」の頭の中を大公開!300超の案件を同時進行で解決しつづけるデザイナーが明かす「すでにそこにある答え」に気づくための「正しい問い」の見つけ方。
世の中には、こんなにすごい人がいるのか……
読んでいて、著者の発想力や問題処理能力に圧倒されてしまいました。
「何かの参考になれば」と思って読み始めたのですが、「これは僕なんかが真似できるようなものじゃない、エンジンが違いすぎる……」というのが率直な感想です。
19世紀後半あたりのトイレを見ると、すでに今のものとほぼ一緒です。「トイレはこういうもの」という既成概念を取り除けば、新たなトイレのカタチの可能性が出てくるんじゃないか。
そういったあらゆる出来事の「理由」だけでなく、「前後左右」をも予測し、それらすべてをインスピレーションの素にするのが自分の日常業務ともいえます。
今現在、世界中の約70社と300以上のプロジェクトを進めています。業務範囲はインテリアから、家具、家電製品、生活雑貨、パッケージや企業ロゴをはじめとしたグラフィックデザイン、さらには企業のプランディングや駅前開発の総合デザインまで、多岐にわたります。
重要なのはデザインのジャンルではなく、新しい視点を提供することでいかにして目の前の問題を解決できるか、です。「あめ玉」でも「高層建築」でも、デザインするなかで考えていることは、どちらもたいして変わらないのです。
そうか、「どちらもたいして変わらない」のか……
この本を読んでいて感じるのは、著者が「デザイン」をあくまでも「問題を解決するための手段」だと認識しているということなんですよね。
デザインというと、まず、「人がやらない奇抜なこと」を狙ってしまう人がいるけれど、「人と違うこと」が目的となってしまっては意味がないのだ、と。
この本のなかで紹介されている著者のデザインには、たしかに「個性」と「機能美」があるんですよね。
この本のなかで興味深かったのは、「アイデアを出しやすい環境」についてのこんな文章でした。
今までと違う環境のほうがアイデアが出る、という話をよく聞きますが、自分の場合はまったく逆です。同じことを繰り返すのがすごく心地よくて、同じところで昼ごはんを食べて、同じところに犬の散歩へ行って、同じ喫茶店に行って、同じものを飲む。ルーティン・ワークのリズムを守り、できるだけ変化を減らす努力をしています。
なぜなら、変化というのはストレスを生み出すものでもあるからです。だから、海外に行っても日本で使っているものをできるだけそのまま持っていきます。
権力、同じリズム、同じペース、同じことを反復していくことによって、「ここぞ」というときに、ばーんと爆発力が出るのかなという気がするんです。緊張と弛緩の幅が大きいほど筋肉量が出る、筋肉と同じです。脳もたぶんそうじゃないかという気がしていて、普段はできるだけリラックスさせる、負荷をかけないことが大事だと思います。
「環境を変えることによって、アイデアを出しやすくする」というのものだと思っていた僕には、意外な話だったのです。
「アイデアを出すことのほうが日常になっている人」であれば、たしかに、それ以外のところではルーティン・ワークを守っていったほうが良いのかもしれません。
イチロー選手がヒットを打ち続けるために、毎日同じような生活を続けているのと同じように。
しかし、これほど「コンスタントにアイデアが出せる人」の頭の中というのは、いったいどうなっているんだろう?と思わずにはいられません。
「人によっては、環境を変えないほうがアイデアを出しやすい場合もある」ということなのでしょうね。
あと、著者の仕事のなかで驚いたのは、この話。
最近、メディアで「3次元(3D)プリンタ」が紹介されているのを見かけます。樹脂を吐出する、レーザーでアクリルや木材を切り出す、など形式は多々ありますが、要はデジタルデータをさまざまな素材に「印刷」することで、立体の造形物として「プリントアウト」するというもの。モノづくりの現場ではすっかり馴染みの存在ですが、まだまだ一般的には目新しいようです。
ネンド社内でも3台が常時フル稼働、海外出張中はプリントアウトされた模型がホテルに送られてきます。
確認後は守秘義務があるのでその場で破壊し、その翌日にまた次のホテルで新たな模型を受け取る、の繰り返し。まるで出来の悪いスパイ映画です。が、この3Dプリンタによって短時間で精度の高いモノづくりが可能となりました。
3Dプリンタって、すでにこんなふうに使用されているんですね。
「モノづくりの現場では、すっかり馴染みの存在」なのか。
たしかに、試作品をひとつ作っては直し、という時代よりは、モノづくりにかかる時間も作業効率も、格段にアップしそうです。
その一方で、コストがかからなくなれば、競争が激しくなるということでもあるわけで。
こんな人がいるのかと、とにかく圧倒される本でした。
真似するのは、ちょっと難しいかもしれないけれど。