- 作者: 斎藤美奈子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/02/09
- メディア: 単行本
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内容紹介
「……ったく、……この、未熟者めが! 」さて、この文章は何という作品のラストでしょう?古今東西の名作137冊をラストの一文から読み解く、丸わかり文学案内。名作は〝お尻〟を知っても面白い!
斎藤美奈子さんが「名作」の「締めの一文」とともに、その作品に関するさまざまな薀蓄を語る「名作うしろ読み」シリーズの続刊にして完結編。
前作は文庫で読んだのですが、たいへん密度が濃い本で、見た目の印象以上にさまざまな楽しみかたができるんですよね。
名作のラストの一文を読んでみよう、という趣旨は前著と同じ。ちがっているのは、「名作」の範囲を広げ、海外文学を増やしたこと、ややマニアックな本も加えたこと。童話も時代小説も歴史小説もミステリーもSF的な作品も……と四方八方に食指を伸ばした結果、自分でいうのどうかと思うが、よくいえば豪華絢爛、悪くいえば欲張りすぎな本になった。日本の近代文学を中心に、海外文学を少し加えて構成された『名作うしろ読み』が「あっさり醤油味」なら、この本はこってり豚骨味・トッピング全部のせ」風かもしれない。
前作は、いわゆる「文豪」の名作中心だったのですが、今回はエンターテインメント系の作品も、少なからず入っています。
読んでいると、いままで僕が「エンターテインメント」だと思っていた作品に、けっこう「批評性」みたいなものが込められていることがわかったものもありました。
『フランケンシュタイン』は多様な読みかたができる小説で、作者のメアリ・シェリーは20歳のときにこれを書いた、というのに驚いたり、
というのを知ったり。
僕はずっと、芭蕉の代表作、だと思いこんでいたのです。
ほんと、知っているつもりで知識をアップデートしないでいると、どんどん時代遅れになっていくなあ。
古往今来すべて一色、この輪廻と春秋の外ではあり得ない。
ああ、吉川英治の『三国志』懐かしいな……
吉川英治は、『三国志』を「曹操と孔明という二大英雄の物語」だと定義して、諸葛亮孔明の五丈原での死で物語を閉じたんですよね(いちおう、その後の魏呉蜀についても、付記として語られてはいるのですが)。
当時、僕は夢中になって何度もこの『三国志』を読んだので、この「締めの一文」を読んだだけで、いろんなことが頭に浮かんできます。
そしてもちろん、ぼくはピートの肩を持つ。
これも、「わかった!」と叫んだ人が多いのではないでしょうか。
このシリーズを読んでいると、純文学とか私小説って「最初の一文」が印象的で、エンターテインメントは「締めの一文」のほうが記憶に残っているのではないか、という気がするのです。
僕だけ、なのだろうか。
ボッコちゃんは「おやすみなさい」とつぶやいて、つぎはだれが話しかけてくるかしらと、つんとした顔で待っていた。
本当は怖い、星新一。
前作『名作うしろ読み』が気に入った人なら、きっと、この「プレミアム」も本棚に並べておきたくなるはずです。
ちなみに、最後の一冊は……たぶん、20世紀にいちばん多くの人の運命を変えた本、ですよねこれ。
- 作者: 星新一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1971/05/25
- メディア: 文庫
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