琥珀色の戯言

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【映画感想】怒り ☆☆☆

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あらすじ
八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。

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※音が出ます!


2016年17作目の映画館での観賞。
夕方の回で、通常料金。観客は僕も含めて5人でした。


ずっと観ようと思いつつも、なんとなく先送りにしていた作品だったのですが、そろそろ上映終了しそうな感じになってきたので、ようやく観賞。
うーん、なんというか、ひたすら「嫌な感じになる爆弾」をスクリーンの向こうから投げつけられ続ける2時間20分、そんな映画でした。
ちょうど半分くらいのあの場面以来、いたたまれなくて、観ちゃいられん!という感じになってしまって。


もちろん、すべての映画がハッピーエンドである必要はないのですが、「世の中には、こんなにいろんな疑心暗鬼や理不尽な悪意が存在するんだよ諸君」と言われ、何の光明も見出せないまま(って、作っている側は、それらしきものを提示しているつもりなのかもしれないけど)終わってしまうし、謎解きの要素もないし。
観る人がみたら、誰が犯人なのか、わかるのだろうか……


渡辺謙さんや宮﨑あおいさんや妻夫木聡さん、松山ケンイチさんなどの名優たちが勢揃いし、熱演を繰り広げて観客を不安かつ不快にさせてくれるという、なんというか救われないこと極まりない作品です。
ほんと、「じゃあ、どうしろって言うんだよ!」って、僕も言いたくなるよこれ。


ただ、「理不尽にみえる悪意」を世の中に撒き散らしているようにみえる人間が、実際にこの作品のなかでやっていることと、僕がちょっと苛立って、ネットに書きこんでしまう「呪いの言葉」に、どのくらいの距離があるのか、と問われたら、僕も「無罪」ではないと思うのです。
というか、「見下されたくない」とか「幸せな他人を疎ましく思う気持ち」なんていうのは、僕にもある、少なからずある。
それを表出するかどうかが大事、ではあるでしょう。
けれど、そういうものをせき止めておくための堤防が、ずっと決壊しないという保証は、どこにもない。
「それは、犯人が悪いのであって、あなたの責任ではない」と、僕は言う。
でも、この映画を観ながら、「お前ら、なんであんな状況にしてしまったんだ、お前の責任じゃないのか!反省しても手遅れなんだよ!」って、僕はある登場人物に心の中で毒づいていました。
彼は「加害者」ではなく、むしろ「被害者に近い人物」であり、あのくらいの油断や未熟さは、人生のなかで、誰にでもありうることなのに。
車の運転は、ぶつけてしまって、あらためて車幅の感覚を学ぶものだ、って言うじゃないですか。
しかしながら、その「最初の事故」で人を殺めてしまったら、「勉強になった」では済まない。
結局は「運」なのかな、なんてことを考えてもみるのです。
「善意」がある種の人たちには、かえって反感を抱かれることもある。
いや、そもそも「上からの施し」は、「善意」なのか?
ほんと、嫌な映画だよねこれ。
観ていると、人が怖くなり、人間が嫌いになる。


原作の小説では、それぞれの登場人物の背景が丁寧に描かれているのだけれど、この映画版だと、なんだか、ほとんど関係のない短編映画を3本、切り刻んで見せられているような感じです。
まあでも、「犯人はだれ?」という疑問には、いちおうちゃんと答えが用意してあります。
ただ、なんというか、「問い」がわからないまま「答え」が投げ出されている、という気もするのです。


個人的には「なんでお金を払って、こんな不安で不快にならなければいけないのか」って言いたくなる映画ではありました。
しかし、ここに描かれているのは、たしかに「この世界に存在している現実」でもあるわけで(むしろ犯罪以外のところが)。
これだけいろいろ書きたくなるというのは、それはそれで「面白い」映画だということなのかもしれませんね。
他人にオススメするのは、ちょっとためらってしまうのだけれども。


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怒り(上) (中公文庫)

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