琥珀色の戯言

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【読書感想】日々我人間 ☆☆☆☆☆

日々我人間

日々我人間


Kindle版もあります。

日々我人間 (文春e-book)

日々我人間 (文春e-book)

ひょんなことから数年を過ごした東京の漫画喫茶に別れを告げ、伊豆の山中に居を構えた玉さんを襲う、ネコ・シカ・ムカデ!


週刊文春好評連載、桜玉吉『日々我人間』がついに一冊に!
「いったいなぜ?」と反響を呼んだ週刊文春連載開始からはや3年、待望の単行本化!!「すぐに休載するんでは?」などの憶測もなんのその、ほぼ隔週連載から毎号掲載になっても見事皆勤賞。その3年分150回をどーんとお届け。
激動の3年間の前半は東京・漫喫編、後半は伊豆編。
隣人の音に悩まされる満喫の狭い個室から、野生生物の襲来に悩まされる山荘へと生活はガラリと変わっても(変わってない?)、玉吉節は健在!


週刊文春お正月スペシャル号 丸ごと1冊タンマ君!」に寄稿した「タンマさん」もそっと収録。


 桜玉吉さんが『週刊文春』に連載されている「日常エッセイマンガ」がついに単行本になりました。
 いやほんと、あの玉吉さんが週刊誌に連載、しかも『週刊文春』って……すぐに原稿落として終了、なのでは……よく企画通ったなあ、と思うのと同時に、いまの『文春』の編集長が50歳くらいで、僕より少しだけ年上だそうなので、『ファミ通』時代からの「玉吉ファン」が出版業界で発言力を持つようになってきたんだな、なんて考えてもいたのです。


 少なくともこの連載がはじまった3年前の『週刊文春』は、現在ほどの「常在戦場」ではなかったんですけどね。
 今の『週刊文春』で連載している人たちの顔ぶれをみてみると、「僕が好きそうな、ちょっとサブカルメジャーな人」が並んでいることにあらためて感慨深いものがあります。


 あとがきより。

 この本は自分がマンガ喫茶に巣食っていた一年半余りと、その後移り住んだ伊豆のボロ家(昔買った)での一年半の記録漫画であります。(週刊文春連載中です)。


 主な登場人物(?)、桜玉吉、ムカデ。
 長年の玉吉ファンにとっては懐かしい「伊豆の山荘」が、まだ健在だったとは!
 そして、もう50歳を過ぎた玉吉さんが、そこに独りで住むことになろうとは!
 まさか、3年間も「総合週刊誌」での連載を、(人気的にも定期的に描くという点でも)「完走」してしまうとは!


 正直、「玉吉ワールド」がこうしてそれなりに受け入れられているということに、僕はけっこう嬉しさと安堵を感じています。
 それと同時に「いま『週刊文春』を読んでいる僕と同世代の40代〜50代の男性って、世間で「正解」とされている「充実した中年として生きていくこと」のプレッシャーにくたびれはてているんじゃないか、とも思うんですよ。


 玉吉さんは、若くして『ファミ通』で連載を持ち、人気作家・イラストレーターになって、結婚し、かわいい娘さんも生まれた。
 学生時代の同級生たちは「とにかくバランスがとれた『いいヤツ』で、けっこうモテていた」と『桜玉吉のかたち』という本で語っていました。


 でもさ、そんな玉吉さんが、離婚して(娘さんはもう成人されたそうです)、鬱で仕事ができなくなり、エッセイマンガで私生活を赤裸々に語り、ひたすら迷走しながらも、いまも生き続けているのは、僕にとっては、本当に「ありがたいこと」なのです。
 まあ、玉吉さんもなんとか生きてるし、僕ももう少し生きていても良いのかな、とか、勝手に思っています。
 この連載がこれだけ続いているのも、たぶん、あのファミコン時代に子供で、「なんか違う」と感じながらもいまの日常を生きている大人たちが、桜玉吉を支え、そして、支えられているから。


 ……なんて、ちょっと重苦しい話になってしまいましたが、ある意味、こんなに少ない登場人物と虫だけで成り立っている作品は、この『日々我人間』と、カフカの『変身』くらいしかないわけで、ものすごく実験的なマンガでもあります。
 ちょっと変わったつくりの本で、書店で探すのに手間取ってしまいましたが(平積みにしてあるところも多いだろうけど)、とりあえず、玉吉さんの新作がまた読めるまで生きていてよかった。
 しかしこの文章、「感想」というより、「桜玉吉と僕」になってますね。
 まあいいや、どうせ、「読む人、買う人は、こんな文章は読まずに買っている本」だろうから。


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