琥珀色の戯言

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レヴェナント: 蘇えりし者 ☆☆☆☆


アメリカ西部の原野、ハンターのヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は狩猟の最中に熊の襲撃を受けて瀕死(ひんし)の重傷を負うが、同行していた仲間のジョン・フィッツジェラルドトム・ハーディ)に置き去りにされてしまう。かろうじて死のふちから生還したグラスは、自分を見捨てたフィッツジェラルドにリベンジを果たすべく、大自然の猛威に立ち向かいながらおよそ300キロに及ぶ過酷な道のりを突き進んでいく。

2016年7作目の映画館での観賞。
ゴールデンウィーク中のレイトショーで、観客は30人くらい。
レオナルド・ディカプリオが悲願のアカデミー主演男優賞を受賞した作品。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は2年連続のアカデミー監督賞。


イニャリトゥ監督の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は、僕にはちょっと難しい映画だったので不安でしたが、この『レヴェナント』は、本当に真っ直ぐなサバイバル+復讐劇、という作品でした。
中にイメージ映像みたいなのが挿入されていたり、登場人物の行動のなかで、理解困難なところが少しあったりはしたのです、『バードマン』の主人公の「何がやりたいのか、よくわからない感」に比べると、主人公・グラスは動機も行動も「わかる」のですよね。
まあ、『バードマン』は、その「わからない感」を見せるための映画ではあるのですけど。


この『レヴェナント』、とにかく大自然の迫力が圧倒的で、そのなかで生き抜いていくグラスの生命力もすごい。
個人的には「熊こわい!」というのがいちばん印象に残りました。
アカデミー助演男優(かどうかはわからないけど)は、熊!グリズリー!
いやふつう死ぬだろあれ。
でも「実話に基づく話」だそうで、あの時代に、あんな傷の処置で、よく感染症で死ななかったな、と感心してしまいました。
生命力が強い人っていうのは、どの時代にもいるよだよね。
それにしても、人も、動物も、とにかく死ぬ。あっさり死ぬ。
「いいやつ」ほど、早く死んでしまう。


グラスが復讐せずにはいられないのもわかるのですが、悪役のフィッツジェラルドがやったことも、ひとつを除けば、わからなくもないのです。
あの状況で自分やなるべく多くの仲間が生き残るための戦略としては、そんなに不合理ではない。
ただ、グラスの生命力が「想定外」だっただけで。
だからといって、グラスの復讐心もまた当然のものなのです。
結局のところ、復讐の連鎖、みたいなものは、当事者にとっては、断ちきるのは難しいと考えざるをえない。
「みんなが生き延びるためには、仕方がなかったんだ」と言われても、見捨てられた人にとっては、納得がいくわけもない(このグラスの場合は、自分のことだけだったら、それほど復讐にこだわらなかったような気もするのですけど)。
そもそも、白人はみな「侵略者」でもあるのです。
「野蛮人」というレッテルを貼ってしまえば、個々の人格なんて、考えることもなく、奪って、殺してきた。
結局、「強い者の勝ち」ではないのか。


この映画、レオナルド・ディカプリオの演技はもちろんすごかったのですが(眼の力が、とにかくすごかった。夢に出そうです)、「説得力のある悪役」という意味では、フィッツジェッルド役のトム・ハーディも良い仕事をしていました。
この人は、「悪人」というよりは、「自分が生き残ることを最優先にする、というポリシーに従って生きているだけ」でもあるんですよね。
でも、飢えて砦に逃げてきた人に対して「金がないと飯は食わせねえ」というのが当たり前の世界では、フィッツジェラルドというのは、そんなに「異常」ではない。
そういう意味では、この人を残していった隊長の采配にも問題はあったのです。


これ、本当に映像も演技も「凄い」作品なのですが、観ているだけでもグラスの痛みが伝わってくるので、けっこうキツいんですよね。
ゴールデンウイーク中に家族やカップルで楽しい映画を!という場合には、避けたほうが無難かも。
でも、この大自然の迫力を、ぜひ映画館で味わってほしい。


観終えたあと、ドッと疲れが出て、すぐに寝てしまいました。
これから、「熊出没注意」に対する恐怖感が10倍になりそうだ……

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