琥珀色の戯言

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HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス ☆☆☆☆



あらすじ
色丞狂介(鈴木亮平)は姫野愛子(清水富美加)のパンティーをかぶり、変態仮面として悪を倒していた。複雑な感情を抱く愛子はパンティーを返してもらったが、狂介と愛子の心にすれ違いが生まれてしまう。愛子に対してひそかに好意を寄せる同級生の真琴正(柳楽優弥)は、愛子を傷つける狂介を憎いと感じていた。そんな中、変態仮面の前に新たな敵が出現し……。


参考リンク:映画『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』公式サイト


 2016年11作目の映画館での観賞。
 平日の18時からの回。
 観客は5人で、僕以外は若いカップルが2組!
 なぜ『変態仮面』をわざわざデートで観るのだ……と思いつつも、考えてみれば『ゴーン・ガール』とかのほうが、よっぽど気まずくなりそうですよね。
 ちなみに、今回行ったのは機械発券の映画館で、入場口で係の人にチケットを渡すと、「はい、○○(作品名)は、×番シアターですね」と言ってくれるのですが、この作品に関しては、「はい、7番シアターです」と、作品名がカットされていました。この係員さんの自己判断なのか、そういう通知がきているのか、個人的には、なかなかありがたい配慮ではありました。
 でも、「変態」という言葉が「笑っても良い言葉」として世間的に認知されたのは、この『変態仮面』のおかげかもしれませんね。これが『週刊少年ジャンプ』に連載されていたんだから、『ジャンプ』って、アグレッシプだよなあ。
 『BASTARD!!』の「しょうねんしなんだぞ〜」とかいうのもあったよなあ。
 

 2013年に第一作の『HK/変態仮面』が公開されたときには、「あの『変態仮面』がまさかの実写映画化」というだけで驚き、鈴木亮平さんの「本気の肉体」と「エクスタシーーッ!」「それは私のおいなりさんだ」「成敗!」などの原作の名セリフを聞いただけで、すごく満足した記憶があります。
 バカなことだからこそ、真剣にやらないと、面白くないんだよね。
 

 そういう意味では、今回の第二作には、「ただ変態仮面が出てくるだけでは、もう観客が驚かなくなってしまった」という難しさがあるんですよね。
 ハリウッド映画みたいに、とにかくスケールを大きくして圧倒するというわけにもいかないだろうし。


 正直、前作ほどのインパクトはありません。
 前作ではちょっとクドいというか、何のためにこんなシーンがあるんだ?と疑問にすらなった「変態とは何か?」を問いかけるところは、今回はほとんどなく、けっこうシンプルなアクション映画という感じです。
 それも、過去のアメコミヒーローとかハリウッドの主人公成長型アクション、カンフー映画などのエッセンスがふんだんに盛り込まれていて、「ヒーローアクション映画好き」は、小ネタでけっこう楽しめると思います。
 柳楽優弥さんも、まさかこんな役で……仕事選べよ!あるいは、やるならもっとノリノリでやればいいのに、とか思っていたのですが、この映画、たぶん、何人かは『変態仮面』の世界に染まりきらない役者さんが必要なんですよね。
 じゃないと、かえって「変態さ」が際立たない。
 そういう意味では、ヒロイン・愛子ちゃんは今回も良い仕事をしていたのではないかと。


 そして、アメコミだけじゃなくて、福田修一監督には、1970年代後半から80年代前半の特撮ヒーローへの愛情を感じます。
 変態仮面を倒すために、わざわざ、世界中のパンティーを集める悪者たち。
 正直なところ、スーパーマンみたいに圧倒的な戦力を相手にするのなら、弱点のクリプトナイトを使うしかしょうがなさそうですが、変態仮面には、そこまでの突き抜けた強さを感じません。
 変態仮面を倒したいのであれば、そのパンティーを集めるための手間と技術力で、もっと強い兵器をつくったほうが手っ取り早いのではないか、とツッコミを入れたくなります。


宇宙刑事シャリバン』の「マイコン指名手配」という回があるのですが、そこでの悪の組織の作戦は、

各家庭にマイコン(パソコン)を配達する。
子供達は一括してネット送信される画面に表示されている宿題の回答をただ丸写しするだけになり、考える力を失っていく作戦

 子ども心に、「それってただの『親切』なのでは……」と思ったものです。
 なんて非効率的な作戦なんだ……
 あの頃の悪の秘密結社って、こんなアホみたいな作戦ばっかりやっていたんだよなあ。


 ヒーローものや特撮への愛がある人、「それはわたしのおいなりさんだ」というセリフに思わずニヤニヤしてしまう人、鈴木亮平さんのストイックな役者魂と肉体美に魅せられてしまった人には、ぜひ観てほしい。
 これだけ、バカバカしさを極めようとしている映画、めったにないですよ。
 こういう映画って、「でも、僕たちは余裕綽々でつくってますからね、まあ、ゆるゆると眺めてくださいよ」っていう「打算」みたいなものが透けてみえることが多い。
 でも、『変態仮面』は「本気」です。


 そんなに変態攻撃のパターンが多いわけでもないので、毎年だとちょっとつらいかもしれませんが、3年に1回くらい、『変態仮面』を観て、「あのウェディングケーキ、何でいきなり出てくるんだ?って思ったんだよ!」とか、観終えてニヤニヤしたい。


 ところで、僕のなかに『変態仮面』はセクハラ映画なのか?という疑問がわきあがってきて、ちょっと困っています。
 「まったく、男って、パンティにそんなに執着して、バカだよねえ」と笑い飛ばしてしまうのが僕には「正しい観かた」のような気がするのだけれど、「不快」だと感じる人もいるのかなあ……


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