琥珀色の戯言

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【読書感想】今夜はコの字で ☆☆☆


今夜はコの字で

今夜はコの字で


Kindle版もあります。

今夜はコの字で(集英社インターナショナル)

今夜はコの字で(集英社インターナショナル)

実在の「コの字酒場」の名店がマンガに! 土山しげる最新作は“ふれあいグルメ”。コの字酒場とはコの字カウンターがある大衆酒場のこと。そのカウンターには上座も下座もない。誰がどこに座ってもフラットな関係だ。そんなコの字ならではの空間が醸す「人のふれあい」と、その店でしか味わえない「極上の酒と肴」を、読む者の胃袋を刺激してやまない食マンガの大家・土山しげるが描く! 仕事のミスで落ち込む“コの字ビギナー”の主人公・吉岡が、大学の先輩・恵子のススメでコの字の扉をおそるおそる開く。最初は戸惑いつつも、酒がすすみ、肴に感動し、店主や客と少しずつ打ち解けるなかで、コの字の魅力にハマっていく……原作は、「コの字酒場」の命名者である加藤ジャンプ氏が執筆。マンガの舞台は、これまで訪れた400軒以上のコの字から都内近郊の9店を厳選! 各話に付くコの字のコラムも執筆!


 「コの字酒場」って、ご存知ですか?
 僕はこの本ではじめて知ったのですが、原作者の加藤ジャンプさんの命名なのだそうです。
 「コの字のカウンターがある大衆酒場」か……僕はいままでの人生で、1回か2回、行ったことがあるくらいだなあ。最近は、外に飲みに行く機会も少なくなりましたし。
 

 このマンガでは、僕と同じような「コの字」初心者の主人公・吉岡が、先輩女性の手ほどきを受けて、「コの字」にハマっていく様子が描かれています。
 正直なところ、「安くて周囲の人も気さくに話しかけてくれる、酒場のカウンター」って、僕にとっては、かえって敷居が高いんですよね。話しかけられても緊張するし、常連さんばかりで、「異物」として認識されそうだし。
 それなら、チェーン店で「それなりの料理、それなりの値段、それなりの接客」のほうが気楽だと、思ってしまうのです。
 
 主人公も、最初はそういうイメージを抱いていたようですが、安くて美味しくて、アットホームな雰囲気(というのは、人によってはめんどくさい、というのはあるのだけれど)の「コの字」には、気取った店にはない魅力があるみたいです。
 僕も、このマンガみたいに、誘ってくれる先輩がいれば、行きたくなるかもしれないけれど。
 結局、「何を飲み食いするか」よりも、「誰と飲み食いするか」のほうが大事なのです、僕の場合は。


 でも、こういうマンガを読んでみると、僕もそろそろ「コの字」が似合う年齢になってきたのではないか、などと考えてみたりもするんですよね。


 錦糸町の名店『三四郎』の回より。

 墨痕鮮やかな看板の下、二代目の弟さんが担当する焼き台の脇の引き戸をくぐると、いきなり大きなコの字カウンターが姿を現す。少し変形のコの字は、舟の軸先に似ている。開店と同時に客が来て、日の長い季節なら、明るいうちに店は満席になる。二代目の奥様である女将さんが、粋に着物をきこなし、すいすい接客する。こちらはすいすい呑む。カウンターの形さながら、船遊びのように愉快な酒になる。


 この本で紹介されている名店は、みんな料理が美味しそうで、価格も良心的です。
 そして、店をやっている人も、お客さんも、店に対する愛情を持っているのが伝わってきます。
 
 
 ちなみに、この『三四郎』って、土曜日の営業時間が12時30分から16時30分で、営業終了が「競馬中継終了と同時」というのが、なんだかすごく「らしい」な、と。
 個人的には、競馬中継が終わったあとにこそ、飲みたい気分になりそうですが。


 東京とその近郊の店が紹介されているので、そちらにお住まいの方には、良いガイドブックにもなると思います。
 ガイドブックを見て来るようなお客さんは、あまり望まれてはいないかもしれないけれど。

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