琥珀色の戯言

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64-ロクヨン-後編 ☆☆☆



昭和時代の最後の1週間にあたる昭和64年に起きた未解決誘拐事件と、新たに発生した類似の事件の謎に迫る。県警の広報官を演じる佐藤のほか、綾野剛榮倉奈々永瀬正敏三浦友和ら豪華キャストが集結。事件の行く末はもちろん、警察と記者クラブとの摩擦や警察内の対立、主人公の娘の行方など怒とうの展開に目がくぎ付け。


参考リンク:映画『64-ロクヨン- 前編/後編』公式サイト


 2016年12作目の映画館での観賞。
 金曜日のレイトショー。
 観客は30人くらいでした。
 仕事を終えて、夕方から『64-ロクヨン-後編』を観に行ったのだが、「7番スクリーンです」と入口の人に言われて観はじめたら、なんだかやたらと前編のダイジェストが長い。おいおい、もう30分くらいダイジェストだぞ、そろそろ後編はじめてよ、何これ?


 ……実は同じ時間から上映されていた『前編』だったのでした。
 結局、もう一度前編を観て、続けて後編まで観ることに。もちろんお代も二本分。いや、ちゃんと確かめなかった僕が悪いのだけれども。
 しかし、二度目になると『64』の前編って、こんなにダイジェストっぽい感じになるのですね。
 もともと原作もけっこう長いし、テレビドラマではワンクールくらいやっていたものなあ。


 半ば開き直って観た後編なのですが、さすがに前半のおさらいは10分間もなくて、そりゃそうだよな、と納得しました。
 まあ、通してみたおかげで、ストーリーもよくわかったし、怪我の功名、ってことで。


 前編のラスト、『64』を模倣した、新たな誘拐事件が発生し……
 おお、原作は読んだけど忘れかけている僕でもけっこうアツいぞこれは、なんで『Yahoo映画』で、後編は評価が低いんだ?みんなわかってないなあ。


 ……今回もわかっていないのは、僕のほうでした。
 まだ1時間くらいあるのに、えらくあっさり事件が解決したなあ、と思いきや、そこからが長かった。
 というか、そこから三上がとった行動には、思わず椅子からずり落ちそうになってしまった。
 
 原作と結末を変えた、とのことだけれど、これはダメな改変だ……
 『相棒』だと思って観ていたら、突然『あぶない刑事』がはじまってしまったかのような衝撃!
 気持ちはわからなくもないけど、そこまでやったらドン引きだぞ三上!


 うーむ、主人公に映画的にわかりやすい「見せ場」が必要だという制作側の判断なのかもしれないけれど、この映画で、組織の中で耐えながら少しずつ変えていこうとしている三上を応援していた僕としては、「三上がそんなことしたら、この映画は台無しだろ……」としか言いようがない。
 これ、最後の1時間をカットして、残りの前後編3時間を30分くらい減らして1本で公開しても、よかったんじゃないかなあ。
 せっかく前編で積み上げた緊張感が、クライマックスの三上の暴走でぶち壊しで、これじゃコントだよ。
 ほんと、前編、いや、後編も前半1時間まで、原作どおりのところまでは素晴らしかったのに、どうしてこうなった……

 
 前後編の後編ということもあって、ストーリーには触れにくいのですが、せっかくの具かキャストも、ちょっと使いきれていないというか、細かいエピソードを描く時間がなくなってしまっていてもったいなんですよね。
 仲村トオルさんの二渡さんとか、三上とは「手伝おうか」「いや、お前の助けは借りん!」みたいなやりとりばかりで、どこかできっと活躍するはずだ、と思っていたのですが……


 前半は佐藤浩市さんの鬼気迫る演技で、素晴らしい作品だったのですが、どうも制作側のサービス精神というか、「映画らしくしよう」という感覚が、僕にとっては残念なほうに向かってしまったような気がしてなりません。
 

 でも、個々の役者さんは、本当に良い仕事してるんですよ。
 瑛太さんが、最後まで「感じ悪いヤツ」を貫き通していたり、三浦友和さんの「悪そうな人」がすっかりハマり役になっていたり。
 登場人物が、安易にわかり合ってしまわないところが、『64』の凄さだと思うのです。
 だからこそ、あの結末の改変さえなければ……と。
 テレビドラマ版と同じことやってもなあ、という気持ちもわかるんだけど、変えるなら変えるで、もっと違う方向性もあったのではと残念でなりません。


 というわけで、後編まで観た感想としては、本当に「名作になりそこねた映画」だなあ、と。
 前編までだったら、「傑作」だったのに……


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