- 作者: 小川糸
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2016/04/21
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
ラブレター、絶縁状、天国からの手紙…。鎌倉で代書屋を営む鳩子の元には、今日も風変わりな依頼が舞い込む。伝えられなかった大切な人への想い。あなたに代わって、お届けします。
作品の善し悪しはさておき、扱われているテーマとかストーリー展開に「好み」ってありますよねやっぱり。
僕は小川糸さんの作品って、『食堂かたつむり』しか読んだことがないのですが、ベストセラーになったこの作品を読みながら、「ああ、さっさと読み終わりたいな」と思っていました。
「スローライフ」とか「ミニマリスト」とかに憧れる人にとっては、あるいは「日々の生活を丁寧におくっていくこと至上主義者」にとっては、素晴らしい内容なのかもしれませんが、僕には「退屈な物語を食べ物とかのディテールの魅力で、強引に読ませようとしている小説」だとしか思えなくて。
鎌倉、代書屋、親子の断絶、偶然の出逢い!
なんなんだろう、この「感動ファクトリー」みたいな内容は。
「絵のない『深夜食堂』」とでも言えばいいのか……
こういうのは「好み」なんだとしか言いようがないのですが、僕はこの本のオビに「本屋大賞ノミネート」とか「各紙誌で絶賛! 8万部突破。」なんて書かれているのをみて、「小川糸さん苦手だけど、この作品は、少しは僕にも読みこなせるのではないか」と期待していたのです。
いや、読めるよ、読めるんだけど、あまりにも薄っぺらくて、興味が持てなくて、どんどん読むスピードがアップしていきました。早く読み終えて、他のことがしたくて。
そもそもこれ、主人公は20代後半の女性だそうなのですが、そう書かれるまで、40代半ばくらいの中年女性だとしか思えませんでした。
しかも、「元ヤンキー」とか、わざとらしい属性を持っていて、気に入らない若者は「もっと自分で努力しろ!」と罵倒するわりには、「離婚をみんなに報告する手紙」とか、「縁切り状」とか、もらったほうがリアクションに困るような手紙を得意気に書いている。
これ絶対、70代くらいのベテラン女性作家が若作りして書いているんだろうな、と思いきや、小川糸さんって、1973年生まれなんですね。
なんなんだこの説教くささは。
これを読んでいると、「シンプルに暮らす!」とか言いながら、ブログには「(自分が稼ぐために)あなたに買わせたいもの」満載の「ビジネスミニマリスト」を思い出します。
文房具に関するディテールとか、手紙に関する礼儀とかが紹介されていて、文具マニアには魅力があるのだろうし、「手紙文化」が廃れている現在の若者にとっては新鮮なのかもしれないけれど、「手紙の書き方」をGoogleで検索すれば無料ですよ!
「あら、パンティー」
私よりも先に、バーバラ婦人が声をかけた。
パンティー? 大きな疑問符が浮かんだけれど、パンティーと呼ばれた帆子さんは、どこ吹く風でけろりとしている。どうやら、バーバラ婦人と帆子さんはかねてより顔見知りだったらしい。
「私、そこの小学校で、先生をしているんです。名前がハンコでティーチャーだから、最初はハンティーって呼ばれてたんだけど、気づいたらパンティーになってて。恥ずかしいですよね。でも、私パン焼くのも好きだし、まっ、いいかー、って受け入れちゃって。だけどやっぱり、理由を知らない人が聞いたらびっくりしちゃいますよね」
正直、よくわからない。
これって、読者が「パンティーだって!面白いなあ、個性的だなあ!」と受けとってくれるだろうと想定しているのだろうか?
僕の率直な感想は「何この読んでいるほうが恥ずかしくなるような言葉選びのセンス……」というものでした。
ちょっと古い言葉ですが、「ダサいよ……」と思わず呟いてしまったのです。
おかげで、「僕が苦手な作家」の共通点として、「登場人物につけられる渾名にセンスがない」というのがはっきりわかったので、感謝すべきかもしれません。西加奈子さんとかにもあてはまります。
(いちおう書いておきますが、作品としては、小川糸さんより西加奈子さんのほうが僕はずっと好きです。同じように登場人物の名前が気持ち悪くてご都合主義だけれど)
ああ、またこんな感想を書いてしまった……
「本屋大賞」にノミネートさえされていなければ、小川糸さんの小説と「不幸なマリアージュ」をしなくても済んだのに。
『コーヒーが冷めないうちに』よりは、ずっとマシですよ。
でも、これが「今年の10冊」に入ってしまうって、失礼ですが、投票した書店員さん、あなたたちの目は、節穴ですか?