琥珀色の戯言

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【読書感想】超クソゲーVR ☆☆☆☆

超クソゲーVR

超クソゲーVR

内容(「BOOK」データベースより)
オールカラーで大復活。『超クソゲー』シリーズ厳選のVR(=Very Rare)ゲームをオールカラーで収録、さらに80ページを超える激レア新企画を加えた待望のシリーズ最新刊、ここに登場!!書き下ろし80ページ!!


 これまでの『趙クソゲー』シリーズのベスト版(まあ、クソゲーの「ベスト」っていうのも変な話なんですが、レビューのベスト版、ということで)と80ページあまりの追加収録分を一冊の本にしたものです。
 ちなみに、この「VR」は、最近流行りのvirtual realityではなく、very rareということで、かなり珍しいゲームも多く収録されています。
「2016年にPCエンジンゲームのレビューが大量に読めるのは本書だけ!」
 確かにそうだなあ。


 冒頭のインタビュー記事「『マイケルジャクソンズ ムーンウォーカー』を創った男」では、実際にマイケル・ジャクソンと打ち合わせとしたという鶴見六百さんが、こんな話をされています。

——実際にマイケルとお会いになったことはあるんですか?


鶴見六百:二人っきりで会ったのが二回ありますね。一回は『スター・ウォーズ』のゲームを開発中のときで、真っ暗闇の密閉型筐体の中でマイケルと二人きりになって説明させていただきました。マイケルは素晴らしい人で「(か細い声で)僕の言うことが的外れかもしれないけれども、こうすると面白いと思うんだ」みたいな喋り方で、すごい低姿勢だったんですよ。当時のマイケルは奇行が騒がれてましたれど「そんなこと絶対ない」って言っても、生でマイケルを見たことがある人以外は全然信じてくれなかったですね。

 もちろん、会った人の数だけ「真実」はあるのでしょうけど、少なくとも、マイケル・ジャクソンは「奇行だらけの変な人」ではなかったのです。
 変わった面だけが大きく採りあげられ、騒がれてしまっていたところがあって、それがマイケル自身も苦しめていたのかもしれません。


 鶴見さんは、マーク・サーニーという天才ゲームデザイナー&プログラマーと『クラッシュ・バンディクー』を日本向けにローカライズされたそうです。

——鶴見さんが実際のテストプレイでデータを取って送ると、マークはしっかり対応してくれたそうですね。


鶴見:マークはデータの重要性が非常にわかってるんです。私が「こうしたほうがいいんじゃないか」と』意見だけ言ったら、疑われるわけです。それで夜中にデータとマップに(プレイヤーがよく死ぬ箇所の)印をつけたファックスを送って、電話でずっと話して。すると、すぐに問題解決の方法を出してくるんです。ゲーム作りって素晴らしいアイディアとか曖昧なもんじゃなく、問題解決能力なんだと思いますよえ。


——宮本茂さんも「アイディアというのは複数の問題を一気に解決するものである」とよく言われますよね。


鶴見:本当に。ゲームは本当は「完成しないもの」なんです。それを無理やり、どうやって完成させるかがゲーム作りなんですよね、私が入って以来、ゲーム業界は乱世みたいな感じだったんですけど、ヒット作を生み出している方々は問題解決の腕力がありますね。本当に、いろいろ学ばせていただきました。


この「ゲームは本当は『完成しないもの』」という言葉が、とても印象に残ったんですよね。
 突き詰めていけば、いくらでも改善の余地はあるわけで、それを、どこまでで「完成」とするかが腕の見せどころなのでしょう。
 こういうのって、ゲーム作りに限らないですよね。


 『バトルエース』というゲームのレビューのなかに、PCエンジン後期の迷走っぷりが書かれていて、すごく懐かしかったんですよね。

・据置機なのにコア構想の中核の中の中核であるはずの拡張バスがないから、ほとんど何も繋がらない「PCエンジンシャトル


・折りたたみ式液晶画面を採用、本体にパッドを内蔵しながらもバッテリーが搭載されていないので携帯機じゃない「PCエンジンLT」


・単純にPCエンジンのグラフィックチップを二個搭載、性能が二倍になる代償としてデカさが三倍になった「PCエンジンSG


 これらのさまざまなPCエンジン亜種とも言うべきハードが、1989年から91年にかけて次々と発売されていったのです。
 今から考えると、どうしてこんなことを……という感じなんですけど(というか、リアルタイムでも「なんじゃこれは?」と思っていたのですが)


 セガサターンの『センチメンタルグラフティ』とか、タイトルだけで、すでに薄ら笑いを浮かべてしまうしなあ……
 あの「現象」は、何だったんだ……
 そういえば、あの「セガ御用雑誌」と呼ばれた『BEEP!』が、セガ・マーク3版の『アフターバーナー』を発売時に絶賛していたにもかかわらず(それで僕も買いました)、メガドライブ版が出た途端に、「あのマーク3版『アウアーアーアー』に失望した皆さん!お待たせしました!」と手のひらを返しまくっていたのには心底ムカつきました。
 その『アウアーアーアー』を「ハードの限界を超えた!」って褒めちぎっていたのは、どこの雑誌だよ!って。


 プレイステーションの恋愛アドベンチャーゲーム『プラズマティカリゼーション』の紹介記事の一部です。

 ジャンケンで負けて、相手の荷物まで持つハメになる、お約束の展開なんですが、その内心に渦巻く葛藤の嵐がすさまじい。
「グーで負けるというのは、保守的なために敗北したような、苦い後味が残るものだ。しかし勝利したとしてもだ、いい年をした高校生の男が、連れの女子に、自分の荷物を持たせてご満悦……などということが、あり得るだろうか? いや、あるまい。そのときは、いやヤッパ俺が持つよ、などと言いつつ、カノジョの分まで担ぐのが男というものだろう。一応、いまどきの女子高生である柊が、その程度の打算を働かさないとは考えられない……これは、仕組まれた巧妙なワナだったのだ」
「独り言ブツブツ……って、やっぱり総司はアブナイ人だったか」
 あっ内心じゃなくて口に出してる!
 そもそもグーがなんで保守的なんでしょうか?


 哲学的というか、めんどくさいというか……
 でも、ちょっとこのゲーム、見てみたい気もしますね。


 あの『たけしの挑戦状』の開発者インタビューなども収録されていて、ちょっとマニアックなゲームが大好きな人にはたまらない一冊だと思います。
 『セガガガ』とか、よくこんなゲームをセガ自身が出したよなあ……


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