- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2017/06/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindle版もあります。
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2017/07/14
- メディア: Kindle版
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内容紹介
好奇心とユーモア全開の、胸躍るルポエッセイ! 人類史の最先端から秘宝館まで、個性あふれる博物館を探検! 好奇心とユーモア全開の愉快なルポエッセイ。博物館が大好きな著者が、興味のおもむくまま、全国のおもしろそうな博物館を訪問。まじめに、ときに妄想を膨らませつつ、お宝や珍品に迫ります。「なぜ、こんなにたくさん集めなすった!?」という著者の素朴な疑問に答えてくれるのは、慎み深くも超キャラ立ちした学芸員さんたち。話はついつい脱線し――。人類史、鉱物、漫画、SM、服飾、地場産業、伝統工芸etc、さまざまな世界の魅力を、著者の視点を通じて愉快に楽しめます。カラー写真も多数収録。実業之日本社創業120周年記念作品。
【◎この本でぐるぐる旅した博物館】茅野市尖石縄文考古館(長野)、国立科学博物館(東京)、龍谷ミュージアム(京都)、奇石博物館(静岡)、大牟田市石炭産業科学館(福岡)、雲仙岳災害記念館(長崎)、石ノ森萬画館(宮城)、風俗資料館(東京)、めがねミュージアム(福井)、ボタンの博物館(大阪)、書き下ろし「ぐるぐる寄り道編」熱海秘宝館/日本製紙石巻工場/岩野市兵衛さん。
いろんな博物館って、ありますよね。
ガイドブックやネットで目に留まったり、ドライブ中に見つけたり。
でも、「国立科学博物館」みたいなメジャーどころはさておき、あまり賑わっていなさそうな博物館って、敷居が高いじゃないですか、なんとなく。他にお客さんがいない洋服店よりも、さらに入りにくい感じが僕はするのです。
物好きな人として目をつけられるんじゃないか(「誰に?」って話ですけど)、スタッフに延々と興味のない話を聞かされたり、閑散とした売店でものを売りつけられたりするのではないか、とか。
一昔前のガイド付きツアーって、「見学」とか「休憩」という名目で、土産物屋に寄るのが「定番」だったものなあ。
国立科学博物館だって、展示されているものをひとつひとつ眺めていると「なんかすごいところだなあ……」って、その「物好き」っぷりに圧倒されてしまうんですけどね。
この本、そんな「ちょっと気にはなるけど、自分で訪れるには敷居が高そうな博物館」を、三浦しをんさんと担当編集者が訪れて、レポートしてくれているものなのです。
こういう「他人はあまり興味がなさそうだけれど、自分は気になってしょうがないもの」を語るときの三浦さんの文章はまさに名人芸で、マイナーなものにハマってしまい、その魅力を伝えたい人たちの熱量を、適度に冷却しながら読者に伝えてくれています。
これを読んでいると、博物館の展示方法って、画一的なようで、いろんな個性があるのだな、ということがわかります。
長野県茅野市の「尖石(とがりいし)縄文考古館」の項より。
「下手な土器や土偶」コーナーもあるのがおもしろい。「これは子どもが作ったのか?」と思うほど、掛け値なしに下手だ。大昔から、美的センスに欠け、手先が不器用なひとはいたんだなと、親近感を覚える。もしかしたら、土器を作る大人のかたわらで、子どもたちも見よう見まねで土をこねて遊んでいたのかもしれない。縄文人は決して遠い存在ではないと、「下手な土器や土偶」を通して実感する。私たちと同じように、異なる特技や個性を持ったひとたちが集まって「社会」を形成し、ともに暮らしていたのだ。
不器用さには自信(?)がある僕も、この「下手な土器や土偶」コーナーを見てみたい!
そうだよね、どの時代でも、いろんな人が、いろんな器をつくっていたはずなのだから、「デキの悪い土器」があるのも当然のことなのです。
でも、そういうものが後世に伝えられることは、ほとんどない。
インターネットのおかげで、人類は、歴史上はじめて、多くの稚拙なものを後世に伝えることができるようになったのかもしれません。
それが良いことなのかどうかはさておき、「人間的」ではありますよね。
龍眼石を見つけた楠本氏は、自然の造形にいたく感動し、たまたま富士山麓に土地を持っていたので、1971年、富士宮に奇石博物館を建てたのだった。
初代館長だった楠本氏の情熱は、没後も引き継がれ、いまも石好きたちの心をつかみつづけている。全国から石や化石が寄贈されたり、博物館も熱心に収集をつづけたりして、収蔵品は現在、なんと1万7000点! 国立科学博物館にも、展示品を貸すことがあるほどなのだった。石に魅せられたひとの情熱、おそるべし……(二度目)。
世の中には、いろんなものに魅せられる人がいるのです。
「買い付け!? 石を取り引きする市場があるんですか?」
「世界的に一番大きなショーが、毎年1月から2月にかけて、アメリカのアリゾナ州で開かれます。ツーソンという町が会場で、会期は2、3週間ぐらい。私たちも行きますが、業者が宿泊している街道沿いのモーテルが、昼間はお店になるんですよ。『こんにちは』と部屋に入っていくと、ベッドのうえに化石や石の標本が並べてある」
「へえ、おもしろいですねえ」
「高級なホテルの一室で商いをするひともいるし、扱われる品はピンキリですね。博物館クラスの標本から、子どもたちが何セントかで買える標本まで、いろんなものが出品されます。日本でも、新宿で有名なショーが開催されていて、世界中からいろんな業者が来ますよ」
まったく知らなかったが、本当に奥深いんだな、石の世界……。
いくらなんでも、石が好きなことを仕事にはできないだろう、と思うのだけれど、こういう博物館で働く、という道もある。
もちろん、それで大金持ちになれるようなものではないでしょうけど、好きなもののそばにいられるだけで幸せ、という人も少なくないのです。
ただ、「石」くらいだったら、まだ「マイナーメジャー」な趣味で、もっとディープな嗜好もたくさんあるようです。
三浦さんは、宮城県石巻市にある「石ノ森萬画館」(石ノ森章太郎さんでの、こんな体験を興奮気味に書いておられます。
深く満足し、エレベーターでエントランスまで降りることにする。大森さんがエレベーター内の「一階」のボタンを押すと、男性の声でアナウンスが流れた。
「『きみはどこにおりたい?』」
「ちょちょちょちょっと! いまの声は!」
「はい、井上和彦さん吹きこんでいただきました」
「ぎゃー!!!(失神)」
井上和彦さんは、アニメ『サイボーグ009』(1979~80年放映)で、島村ジョーの声を担当していた声優さんだ。幼少のみぎり、キュンキュンしながら『サイボーグ009』を見ていた身としては、「かっこいい男性の声=井上和彦氏」という刷り込みが完了している。
いや、僕には正直よくわからないんだけれど(『サイボーグ009』直撃世代ではありますが)、三浦さんの歓喜は伝わってきます。
ちなみにこのエレベーター、上の階へ行くときには、井上さんの声で、「行くぞ! 加速装置!」というアナウンスが流れるそうです(こっちは僕にもわかります)。
この本を読むと、まだまだ日本中に「観ずに死ぬのはもったいない博物館」がたくさんありそうな気がしてくるのです。
マイナーな博物館の敷居を高くしているのは、たぶん、こちら側の先入観、なんだよね。
日本の聖なる石を訪ねて――知られざるパワー・ストーン300カ所(祥伝社新書252))
- 作者: 須田郡司
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2011/10/05
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