琥珀色の戯言

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【映画感想】猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー) ☆☆☆

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あらすじ
猿と人類の全面戦争が始まってから2年が経ち、シーザー(アンディ・サーキス)が率いる猿の群れは、森の奥深くのとりでに姿を隠していた。ある日、奇襲によってシーザーの妻と息子の命が奪われる。シーザーは人類の軍隊のリーダーである大佐(ウディ・ハレルソン)に復讐するため、オランウータンのモーリス(カリン・コノヴァル)らと共に旅立つ。


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 2017年の映画館での27作目。レイトショーで、観客は僕も含めて10人くらいでした。
 

fujipon.hatenadiary.com
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 僕はこの『猿の惑星』の新シリーズ、けっこう好きなんですよね。
 猿の動きのリアルさだけではなく、人間以外の生き物からみた、人間という存在というか、原罪みたいなものが描かれているような気がして。
 なかでも、『猿の惑星:新世紀(ライジング) 』は、異文化が接するときの葛藤が丁寧に描かれていました。
 自分たちと異なる文化を持つ集団に対して、選択すべきは、「共存共栄」か、「戦い」か?


 これも、シンプルに二極化するわけではなく、「相手を信頼しなければ」と思う人もいれば、「交渉はするとしても、ちゃんと武器の用意をして、戦いにも備えておくべきだ」という人もいる。「そもそも、あんなケダモノと交渉なんて無理だ」と、拒絶する人もいる。
 
 
 この『聖戦記』にも、そういう「今の世界が直面している分岐点」が描かれているのではないか、と予想していたのですが、観てみると、意外とシンプルな映画になっていました。
 だいぶ勢力を広げていたと思っていた、シーザーたちのグループは、まだ森に隠れ住んでいるような状況で、基本的に、人間とは「棲み分け」を考えていたのです。
 でも、人間たちは、いままで、自分たちよりも下等だと思ってきた猿たちと対等になることができなかった。
 前作までは、人間側にも、争いを避けよう、シーザーたち、進化した猿と共存しよう、という人が少なからずいたんですよ。でも、お互いに良心を持ちながらも、争いは避けられなかった。
 ところが、今回シーザーたちと戦う人間側は、「冷静な判断力を失ってしまった、狂信者集団」が主なのです。
 「戦う」というよりは、一方的な虐殺といったほうが良いかもしれません。
 これまでは、なんとか人間と共存しようと暴発しそうな周囲を抑えてきたシーザーなのですが、ある事件で、シーザーの忍耐にも限界が訪れます。

 
 僕はこの『聖戦記』って、人間と猿軍団との関ヶ原の戦い、みたいな大スペクタクルが繰り広げられるのではないかと期待していたんですよ。
 ところが、そういう場面はなくて、「猿大脱走映画」とでも言うべき内容になっています。
 これはこれで、つまらなくはないんだけど、集大成のはずのこの作品で、かなりスケールダウンしているような……
 人間側も「わかりやすい悪」だし。
 猿たちを「敵」と「自分たちの味方の猿」に分断して支配しようとするところなど、人間のやることは、相手が人間でも猿でも一緒だな、とは思います(これはもちろん人間の歴史を踏まえたフィクションではあるのだけど)。


 相変わらず、猿の映像は素晴らしいです。 
 あまりに違和感がなさすぎて、その技術の凄さを意識するのを忘れてしまうくらい。
 そして、シーザーかっこいい! でも、今回は気持ちはわからなくもないけれど、ちょっと性格が変わってしまったような……
 

 けっして悪い映画ではないのですが、ここまでの2作で積み上げてきた「世界観の重み」みたいなものが失われてしまって、なんだかもったいないな、とは感じました。
 とりあえず、前2作を観た人は、ここまでは観ておかないと、おさまりがつかないとは思うけど。


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