琥珀色の戯言

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【読書感想】いつでも名画に会える 日本10大美術館 ☆☆☆☆

いつでも名画に会える 日本10大美術館 (ビジュアルだいわ文庫 023J)

いつでも名画に会える 日本10大美術館 (ビジュアルだいわ文庫 023J)

内容紹介

日本の美術館に眠るお宝絵画が満載。
アートにどっぷり、133点のオールカラー。


誰もが知っているモネの《睡蓮》や、ルノワールが描く愛らしい少女、セザンヌの有名な静物画、ドガバレリーナ、さらには、ピカソゴッホなどの巨匠など、そうそうたる面々の絵画が、実は、日本の美術館で、しかも、常設展で鑑賞できるのをご存知ですか?


常設展とは、美術館が所蔵する作品を常時展示すること。美術館によっては、年に数回、所蔵作品を入れ替えてコレクション展と称して展示する場合があります。日本の美術館は大型の企画展ばかりがクローズアップされがちですが、常設展の充実した美術館は、それを観るためだけに足を運ぶ価値があるのです。
本書では、筆者が数ある日本の美術館から、絵画の充実した美術館10館を日本10大美術館として選び、そこに所蔵されている有名画家の作品を、独自の視点を織り交ぜながら、時に偏愛に満ちた情熱を持ってお伝えしていきます。


国立西洋美術館
大原美術館
東京国立近代美術館
ブリヂストン美術館
ポーラ美術館
ひろしま美術館
太田記念美術館
山梨県立美術館
DIC川村記念美術館
愛知県美術館


の日本10美術館に加え、個性と愛とこだわりとユーモアが溢れる全国のおすすめ美術館40館も!


総勢50館の美術館が芸術でおもてなしします!


 自分では「美術館好き」のつもりなのですが、美術館の「常設展」って、あんまり気に留めたことなかったなあ、と思いながらこの本を眺めていました。
 東京の「特別展」で、有名な画家の作品をみて、「ああ、これ良いなあ、どこの美術館から来たのかなあ」と作品紹介のプレートを確認すると、福岡や長崎の美術館蔵だった、ということが、けっこうあるんですよね。
 そこで観れば、こんな混雑のなか、「立ち止まらずにお進みください!」なんて言われなくてもすむのに!
 東京在住ならともかく、地方都市在住だと、東京まで行って大混雑する展覧会を観に行くより、海外の美術館に直接行ってしまったほうが、かかるお金と観やすさを考えると、コストパフォーマンスが良いのではないか、なんて思うこともあります。
 現実的には、休みがとれない、というのが大きいのだけれど。
 国内であれば、多少不便な場所にある美術館でも、1泊2日あれば、なんとかなるし。
 個人的に、行くのがいちばん大変だったのは、北海道の北見市にある『山の水族館』でした。美術館じゃなくて、水族館ですが。


 この本、「特別展」ばかりが注目されて、スルーされがちな、日本の美術館の「常設展」にも、こんなすごい画家の作品がある、ということがそれぞれの絵の写真と解説もまじえて紹介されています。
 国立西洋美術館大原美術館東京国立近代美術館などの有名どころは僕も知っていますし、観にいったこともあります。


 大原美術館の代表作とされている、エル・グレコの『受胎告知』のエピソード。

 1922年、児島虎次郎がパリの画廊で本作(『受胎告知』)を見つけた時、とてつもない値段にも関わらずどうしても手に入れたいと大原孫三郎に写真を送って相談。結果「グレコ買え」との電報が届き、60日後には入金されました。虎次郎の素晴らしい鑑識眼と孫三郎の勇気ある決断。グレコの受胎告知が日本に所蔵されているのは、奇跡とまでいわれています。


 大原美術館は、岡山県倉敷市にあるのですが、この美術館にはモネの『睡蓮』のひとつも所蔵されています。
 ここを訪れたときに驚いたのが、平日だというのにすごい数の人が、この美術館を目当てにやってきていて、周辺が賑わっており、「大原美術館の町」みたいになっていたんですよね。
 この大原孫三郎の「即断即決」も、現代の感覚では、写真を送ったり、電報でやりとりしたりと、のんびりした時代だったんだなあ、と感じます。


 太田記念美術館の浮世絵のコレクションは、僕もぜひ一度みたいのです。
 浮世絵は、西洋絵画に比べて保存が難しいこともあり、また、美術館の看板作品としては西洋の絵画が選ばれがちなこともあり、僕も実物をそんなに見たことがなくて。
 むしろ、ボストンなどの海外の美術館のほうが、浮世絵に関心が高いように思われます。
 ただし、僕が行ったときには、ボストンでも、モネやゴッホゴーギャンが展示してある部屋は賑わっていて、東洋の絵画コーナーは閑散としていたのです。
 誰も観ないんだったら、日本に返してくれればいいのに、とか思ってしまいました。
 日本の美術館で同じことを考えている外国からの観光客もいるんでしょうね。


 太田美術館所蔵の、葛飾北斎『冨嶽三十六景 神奈川沖波裏』について。

 この絵は、海外では”the Great Wave”という愛称で親しまれている世界で一番有名な浮世絵です。北斎の代表作<冨嶽三十六景>のうちの1枚で、世界の名だたる芸術家に影響を与えました。フランスの作曲家ドビュッシーは「交響曲・海」を作曲、彫刻家ロダンの恋人カミーユ・クローデルは《波または女たち》というブロンズ像を制作しました。


 写真をみれば、「そう、これこれ!」と、誰もが思う絵です。
 この絵、波のイメージばかりが頭に残っているのだけれど、絵のなかには、船と漁師も描かれているのです。
 あと、歌川広重の『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』の雨が黒い線の濃淡で描かれているのも印象的です。
 正直、これらの絵をみていちばんに思い出すのは「永谷園のお茶漬け」なんですけど。


 山梨県立美術館にミレーの作品がたくさん所蔵されていたり、千葉のDIC川村記念美術館にはモネやジャクソン・ポロックの作品があったり。
(僕は、ジャクソン・ポロックの絵って、よくわからないんですけど……)
 高額で落札されて話題になった、ピカソの『腕を組んで座るサルタンバンク』って、ブリヂストン美術館所蔵だったんですね(ちなみに、ブリヂストン美術館は現在休館していて、2019年秋にオープン予定だそうです)。


 日本には、こんなにたくさん美術館があって、それぞれ、個性的なコレクションがある。
 そして、その作品を常設展で、ふだんから見ることができる(ただし、所蔵作品といってもコンディションによって展示されていなかったり、入れ替えが行われたりするので、目当ての作品がある場合には、あらかじめ問い合わせ推奨だそうです)。
 こういう美術館についての知識があると、近くなら休日に出かけられるし、出張のときにちょっと寄ってみる、というのも楽しそうです。


 そういえば、ここで採りあげられている「10大美術館」には、北海道、東北、四国、九州の美術館は入っていないんだよなあ。
 インターネットや交通機関の発達で日本は狭くなったけれど、「文化の地域格差」みたいなものは、存在しているということなのかもしれませんね。


名画は嘘をつく (ビジュアルだいわ文庫)

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早わかり!  西洋絵画のすべて 世界の10大美術館 (ビジュアルだいわ文庫)

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