JR北海道の危機 日本からローカル線が消える日 (イースト新書)
- 作者: 佐藤信之
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2017/10/08
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
JR北海道の危機 日本からローカル線が消える日 (イースト新書)
- 作者: 佐藤信之
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2017/11/02
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内容(「BOOK」データベースより)
「地方創生」にとって、鉄道とは何か?発足時には北海道全土を網羅していたJR北海道の路線だが、二〇一六年末に大部分の路線が自力での維持が困難であることが発表され、札幌都市圏以外の全路線が消滅危機に瀕している。それ以前から、新型車両開発の中止と廃車分の運行本数の減便、メンテナンスの不満による脱線事故の多発など、利用者無視の経営方針が批判を集めている。そして、それは本州の過疎地帯や四国などでも起こりうる。JR四国も単独維持困難路線を発表した。JR北海道問題を起点に、日本の交通の未来、地方政策の問題について論じる。
JR北海道といえば、近年は、事故や不祥事ばかりが伝えられており、まさに「存続の危機」の瀕しているような印象があります。
2011(平成23)年、JR北海道の石勝線で特急列車の炎上事故が発生した。同社はそれ以前からさまざまな構造的な問題を抱えていた。
当時、ネット上の同社の労働組合のウェブを見ると、彼らが体制側とみなしていた組合への攻撃で埋めつくされていた。この会社の病巣が深刻であることは一目瞭然だった。
その後も事故が多発したことは周知のことであるが、居眠り運転、職員によるATS(自動列車停止装置)機器の破壊など、不祥事というにはあまりにも問題が深刻であった。
それから二年半後、函館本線の大沼駅で貨物列車が脱線した。それだけならば、北海道では貨物列車の脱線は自然災害を含めて頻発していたので、そう驚くことはなかったが、その後、線路の検査データが改竄されていたことが判明した。補修が必要な数字を小さく記録して、補修していなかったのである。
これが恒常的に行われていて、しかも全社規模で行われていたことがわかった。現場の、このような安全を無視した行為を、本社はまったく認識していなかった。
JR北海道は収支が悪化するなかでコスト削減を進めた。本来なら、列車の運行に関連する部分は安全性に十分配慮すべきであったが、結果的に現場の要員不足で補修に手が回らず、やむなくデータを改竄していたのである。
赤字でコスト削減が必要なため、新しい車両の導入も難しく、乗客へのサービス改善のために、客車の居心地の良さを追求したメンテナンスが最優先となってしまうため、安全面が後回しにされがち、というのがJR北海道の現状なのです。
もともと、国鉄がJRになるときに分社化された際、黒字になるであろうJR東日本、JR東海、JR西日本の本州3社に対して、JR九州、JR四国、JR北海道の3つの会社は、経営が厳しくなることが予想されていました。
補助金などで対応をする予定ではあったのですが、バブル経済の崩壊や飛行機や高速道路網の整備による「鉄道離れ」などで、JR北海道は、予想以上にきつい状況にあるようです。
1983(昭和58)年には4004.1㎞あった北海道の国鉄路線は、JR北海道の発足時には3176.6㎞、現在では2552.0㎞にまで減っている。JR北海道の発表では、585.9㎞しか単独での維持ができないとしている。国鉄時代の路線網と、単独維持可能路線のみの路線網を比較した図がインターネット上で拡散され、大きな話題を呼んだ。
北海道は札幌圏に人口が集中し、地方都市からはどんどん人が減りつづけていることもあり、国鉄時代よりかなり路線を減らしているものの、まだまだ赤字路線だらけです。というか、黒字路線がほとんど存在しないし、今後も期待はできそうもありません。
僕が住んでいる九州の「JR九州」が、さまざまな企業努力をして、ローカル線も観光資源として利用しようとしているのと比べると、JR北海道は、そういう「工夫」の余地がないほど追い詰められているような感じがします。
この新書、そんなJR北海道が抱えている問題について、わかりやすくまとめたもの、だと思っていたんですよ。
Kindle版で買ったので、中身は確認していなかったのだけれど。
実際に読んでみて、正直、「これは僕のような、ちょっと鉄道好きレベルでは、太刀打ちできないな」と痛感しました。
本の内容の半分くらいは、以下のような「北海道鉄道史(各論)」で占められています。
日高本線
日高本線は苫小牧-様似間146㎞の長大路線で、急行「えりも」が最短2時間47分で結んでいた。JR北海道はこの日高本線の運転経費の削減のため、新潟鐵工所の標準設計の軽快気動車(NDC)を導入した。車体長が短い軽量車両である。キハ130形五両をまず1988年(昭和63)3月改正用に投入し、続いて1990年(平成2)3月に6両を増備した。
1996年1月12日に踏切事故で修復不可能なまでに大破したために1両が廃車。翌年3月にキハ130形と同じく新潟鐵工所の標準車を基本に開発したキハ160形1両を新造した。
こんな感じの各路線の資料的な文章が、延々と続くのです。
鉄道マニアにはたまらないのだろうけど、北海道の土地勘もなく、鉄道がちょっと好き、というくらいの僕にとっては、高速で流し読み、というか、とりあえず目で追ってページをめくるだけ、の時間が続きました。
「資料」としては、ものすごく誠実なものだと思うのだけれど、いちげんさんには、厳しい世界だよなあ、これ。
というわけで、興味を持たれた方は、一度書店でページをめくってみることをおすすめします。
この「日高本線」の部分を面白く読める人なら、間違いなくこの新書全体を楽しめると思いますが……
著者は、札幌まで新幹線が伸びても、赤字体質の根本的な解決にはならないだろうと予測しています。
それこそ、ローカル線をみんな切り捨ててしまえれば、黒字にすることは可能なのでしょうけど、鉄道というのは、社会的インフラとしての役割もあります。みんなが車を運転できるわけではないし、バスに切り替えるとしても、一度開通してしまった路線を廃線にするというのは、地元の人たちにとっては、受け入れがたいところではあるのです。
データをみると、「ここまで乗客が少ないのなら、さすがに営業していくのは無理だろう」と外部の人間としては思うのですが、地元の人にとっては、たまにしか乗らなくても「あったほうがいい」のも事実でしょう。
北海道の場合は、北方領土に近いところには鉄道を残しておきたい、という政治的な思惑などもあるようです。
鉄道が大好きで、「JR北海道という会社というより、北海道の鉄道史に興味がある人は、手にとってみてください。
2018年JR北海道鉄道カレンダー 雪煙をあげ颯爽と走る北斗星 (日高本線・函館本線・富良野線・宗谷本線)
- 作者: 株式会社プリプレス・センター,上田哲郎
- 出版社/メーカー: 株式会社プリプレス・センター
- 発売日: 2017/11/01
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JR北海道スペシャル (みんなの鉄道DVDBOOKシリーズ メディアックスMOOK)
- 出版社/メーカー: メディアックス
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