琥珀色の戯言

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【読書感想】屍人荘の殺人 ☆☆☆☆

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人


Kindle版もあります。

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

内容紹介
デビュー作にして前代未聞の3冠!


神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。
合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!!
究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!
奇想と本格ミステリが見事に融合する第27回鮎川哲也賞受賞作!

このミステリーがすごい!2018年版』第1位
週刊文春』ミステリーベスト第1位
『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位


 デビュー作で、鮎川哲也賞を受賞し、メジャーどころのミステリベストを「三冠制覇」してしまった今作。
 『このミス』での紹介やAmazonのレビューを読んでみると、密室ものみたいなのだけれど、なんだかみんな歯切れが悪いというか、ちょっと内容を紹介しにくい感じなんですよね。
 自分で読んでみて納得したのですが、たしかにこれ、何を書いてもネタバレになってしまいそうだし、先入観抜きで読んで、「なんだこれ!」と思っていただきたい作品ではありますね。
 タイトルで、けっこうネタバレしている感もあり、鮎川賞の選評のなかで、「内容がけっこうぶっ飛んでいるのに、タイトルが普通すぎない?」という評者のコメントもあるのですが、この「タイトルで王道ミステリと見せかける」というのも、作戦のひとつだったのかな、と。
 でもこれ、面白い、と思う人と、バカバカしいと呆れる人と二極化しそうなんだよなあ。
 僕は合理性とかリアリティはさておき、あまりにも唐突な展開なので、次に何が起こるのかワクワクできたのですが。
 読んでいて、『かまいたちの夜』のメインストーリー以外の「脱線シナリオ」を徹底的に書くと、こんな感じになるのかな、と思っていたんですよ。
 しかしこれ、このクローズドサークルの状況を映像として想像すると、すごいことになっているよねえ。それこそ、殺人どころじゃないのでは……
 

 この「舞台」をつくりあげるための、壮大な前フリがあって、これはどこで本編とつながってくるのだろう、とも思っていました。
 そして、「あの人」は、どこでまた姿を現すのか。


 デビュー作ということで、「粗さ」はあるし、ベテラン作家のように「伏線をきっちり回収している」という美しさには欠けます。ホワイニダット(動機)も、弱いというか、そこまでのことをやるだろうか、とも思う。
 ただ、この「デビュー作ならではの粗さというか、予定調和にうまく着地せず、投げっぱなしになってしまっているところ」が、読んでいて新鮮でもあったんですよ。
 ミステリ慣れしていると、とくに最近の作品では、「どうせもう一幕あるんだろ」とか、「はい、叙述叙述」みたいな裏読みばかりしてしまうのですが、この作品は、計算してそういう「ミステリ読みの先入観」に肩すかしを食らわせてきたのか、それとも、デビュー作であるがゆえの未完成さがもたらした僥倖だったのか。
 読んでいて、『かまいたちの夜』シリーズや『ダンガンロンパ』の影響もそこはかとなく感じました。
 

 もうこんなことにでもしないと、「みんなが納得する密室」をつくれない時代なのだよなあ、いまの時代にミステリを書くのは大変だ。
 舞台設定的には「異端」「バカミス」ともいえる作品(内部で行われているものは、まさに「新本格」なのだけれど)が「本格もの」を発掘する賞である鮎川賞を満場一致で受賞したことに関して、審査員の加納朋子さん、北村薫さん、辻真先さんの「柔軟な姿勢」も意外だったのです。
 こういう作品を面白いと思えるような、年の重ねかたをしている大人は魅力的だ。
 

 個人的には、これが「三冠」というのは、「やりすぎ」な感じもします。
 「こういう作品は、層の厚い時代なら、『このミス』の3位か4位になって、面白がって絶賛する人と批判する人が半々、くらいだったのではないか」とも思うんですよ。
 

かまいたちの夜 輪廻彩声 - PSVita

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