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Kindle版もあります。
セブン-イレブン 金の法則 ヒット商品は「ど真ん中」をねらえ (朝日新書)
- 作者: 吉岡 秀子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2018/01/12
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内容紹介
モノが売れないといわれる時代に、最高益を更新し続けるセブン-イレブン。商品・サービスの開発の舞台裏を、担当者・関係者の証言を追いながら描くドキュメント。年間約10億杯を売る100円コーヒーから、PB「セブンプレミアム」、そして物流革命まで徹底取材。
著者の吉岡秀子さんは、コンビニ業界の取材を続けている方で、10年前には、こんな本も上梓されています。
コンビニ業界に詳しくて、セブンイレブンとのコネクションも深い人なのだと思われますが、それだけに、宣伝っぽい感じもするんですよね。
たしかに、セブンイレブンのPB(プライベートブランド)商品は他社(ローソンやファミリーマート)と比べると、よくできているものが多いとは僕も思いますし、良く利用しています。
コンビニというのが身近になった20年前くらいは、「もうスーパーマーケットも開いていないから、コンビニで食べられるものを」という感じだったのですが、いまは「今日はちょっと贅沢をして、コンビニで『ちょっといいお弁当』にしようかな」なんて考えることもあります。
コンビニのPB商品って、本当に質が高くなりましたよね。
ただ、商品開発部の頑張りで売れる商品が続々と出てきている一方で、コンビニ経営者たちの労働時間の長さや本部の「縛り」の厳しさが改善されているわけではありません。
それを考えると、「セブンイレブン礼賛」にも、引っかかるところはあるのです。
基本的に、セブンイレブンの本部と顧客にとっては、良いことばかりなのかもしれないけれど……
コンビニエンスストア業界を取り巻く環境は、楽観できる状況じゃない。全国約5万5千店にまで増え、9割の店舗数をセブン、サークルKサンクスと統合したファミリーマート、ローソンで占めている。競争が激化するのは当然だ。店舗数が増えれば人手不足も看過できない。3社3様、独自の施策を打ち出して、人材や顧客の囲い込みに力を入れている。
そんな中、2016年度にセブンはコンビニ市場の売上高シェア40%を初めて超え、さらなる独走態勢に入った。チェーン全店売上約4兆3000億円。平均日販でいうと、約66万円(16年度)。ローソン、ファミリーマートより10万円以上も多い。「コンビニって、どこも一緒」という人もいるが、多くのビジネスパーソンは、なぜセブンだけが強いのかと不思議に思っているだろう。創業からトップを走り続けることは、そう容易なことではない。
現在のところ、セブンイレブンはコンビニ業界で「ひとり勝ち」の状態なんですよね。
僕も、選べる状況であれば、セブンイレブンに入ることが多いのです。
この本のなかでは、著者が直接取材した、セブンイレブンの大ヒット商品の開発秘話がたくさん収められています。
加盟店舗の苦闘を知ると、本部を手放しで賞賛するのはためらってしまう僕なのですが、セブンイレブンの商品開発力には圧倒されます。
ひとつの商品を完成させるのに、こんなに試行錯誤しているのか……
コンビニコーヒーに革命を起こした「セブンカフェ」も、抽出するための機械から開発しているのです。
最初は、自動販売機のように、レジで会計をしなくても買える方式と、現在のレジでカップをもらって、それにコーヒーを自分で入れる方式のどちらにするか、議論があったそうです。
僕などは、「店員さんに声をかけなくても、買えたらいいのになあ」って、いつも思うのですが、現在の方式にしたことで、お客と店員のコミュニケーションが生まれたり、パンやサンドイッチなどを一緒に買う人が増えたり、という相乗効果もあったのです。
セブンイレブンのカフェラテが発売されたのは2015年6月で、セブンカフェがはじまってから、2年経ってからのことでした。アイスのカフェラテは、中に白い小さな玉がたくさん入っていたんですよね。
コーヒーとミルクをマシーンから抽出して作る一般的なラテではなく、ミルクが直径2ミリほどの小さなビーズになって、あらかじめカップの中に氷と一緒に入っている。カップの色が黒だったので、そうとは知らずに楽しんでいた人も多いだろう。発売の会見で新アイスカフェラテを初めて見た時、えっ、なんでわざわざこんなことするの? と思ったものだ。
(中略)
初代アイスカフェラテの開発には、守るべきものがあった。セブンカフェのブレンドコーヒーの味だ。氷に注いでアイスコーヒーを作るだけなら、氷が溶けることを計算してドリップするコーヒーをやや濃いめに抽出すればよい。だがミルクまで入れるとなると、氷はどう溶けるのか、どのくらいの氷の量にすれば、水っぽくないラテが作れるのか。調整はより複雑になり、難しくなる。
ならば、氷を極力溶かさないようコーヒーもミルクも冷やしてミックスさせればどうかと考えてみる。だめだ。冷やすとコーヒーの香りが飛んでしまう——コーヒーとミルクの扱いに悩んでいたそんなとき、江崎グリコから提案があったという。「ミルクを瞬間凍結してはどうか」と。これならミルクのフレッシュさをキープできるし、何より固形なので氷と一緒にあらかじめカップに入れることができ、店も客も扱いやすい。やってみよう。
おいしいミルクを固形にする——江崎グリコの独自技術の出番だった。グリコ、愛すミルクビーズと聞いて、ピンとこないだろうか。筆者は実際のアイスミルクビーズを見た時、「グリコの『アイスの実』の、ちっちゃいやつみたい」と思った。ビンゴだった。セブンカフェの味に合う濃厚な甘さのミルクを凍らせてビーズ状に加工する。特殊技術を持つグリコの協力なくしては、初代のアイスカフェラテはできていなかったかもしれない。
そうか、あれは『アイスの実』の技術で、江崎グリコが開発に協力していたのか……
セブンイレブンの商品開発には、さまざまなメーカーの知恵や技術が利用されているのです。
大ヒット商品「金のおにぎり」の米や具材の調達や包装の工夫、調理のシステムなど、開発に協力した人々に、著者はこんな質問をしています。
最後に、ずっと聞いてみたかったことをメンバーに投げかけてみた。
なぜ、セブンと組むのか? なぜ毎年毎年、おにぎりをリニューアルする必要があるのか?
名前を明記しない方がいいのかな、と配慮してアトランダムに発言を記しておきたい。一番多かったのは、「日本一のコンビニチェーンのおにぎりを、長年一緒に作ってきたという自負がある」「コンビニおにぎりのパイオニアとしてのプライドだ」という精神論だ。「セブンのおにぎりが毎年進化しないなんて、ありえない」という意気込みもすごかった。
もちろん「店が必ず売ってくれて、儲かるから」という正直な声があった。いや、もっともだ。誰だって、苦労が報われないようならチャレンジしようとは思わない。また、「毎回お題のハードルが高くて大変だが、誰もやったことのないことをやり遂げる喜びがある」という意見もあった。「やったことのないことをやり遂げる喜び」——これはおにぎり部会だけでなく、他の部会でも聞いた言葉だ。
「日本一のコンビニチェーンの商品を手がけるプライド」というのは、たしかにあるのだと思います。
ただ、妥協せずになるべく良いものを追究できるのは、なんといっても「セブンイレブンに推してもらえれば、確実に売れる」という保証(に近いもの)があるから、というのが大きいのではないでしょうか。
他の商品の項でも、セブンイレブンのかなり無茶な要求にも協力するのは、セブンイレブンの販売力によって、十分な見返りが期待できるから、という生産者の声が紹介されていました。
「いいものを作れば、絶対に売ってくれる」
そういうサイクルの積み重ねが、セブンイレブンの強さにつながっているのです。
「コンビニ」という言葉には、手軽で簡便なもの、というイメージがついているのですが、なんでも届けてくれるネット通販も一般化してきており、コンビニの顧客は、直接買いものをしたい近所の高齢者の割合が増えてきています。
そして、コンビニに来店してもらうための「理由」をつくる、というのが、今後の課題になってきているのです。
セブンイレブンの宣伝みたいな本ではあるのだけれど、読むといろいろ食べたくなってくるんだよなあ。
やっぱり、セブンイレブンの商品開発力は凄い。
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