琥珀色の戯言

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【映画感想】カメラを止めるな! ☆☆☆☆

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あらすじ
人里離れた山の中で、自主映画の撮影クルーがゾンビ映画の撮影を行っている。リアリティーを求める監督の要求はエスカレートし、なかなかOKの声はかからず、テイク数は42を数えていた。その時……

kametome.net


2018年、映画館での25作目。
巷ではかなり話題になっていたのですが、九州北部では、ずっとキャナルシティ博多にしか上映館がなく、そこも満席が続いていたんですよね。
ようやく8月24日から拡大公開になり、地元の映画館でも観られるようになりました。
監督や出演者がテレビにけっこう出ていたし、公開初日は満席になるのかな……と思いきや、そんなこともなく、夕方の回で、観客は20人くらいでした。
これからさらに勢いを増していくのか、それとも、「新しいもの好きではない、多数派の観客」には、浸透するのが難しいのか……


この映画、ネタバレすると、全く面白くない映画なので、ストーリーについて語るのはやめておきます。
正直、この映画、僕にとっての最初のほうの印象は「最悪」に近いものだったんですよね。
何が問題だったかというと、「映像酔い」がひどくて。
もともと僕は乗り物酔いとかしやすい性質であり、映画の「手ブレ酔い」には悩まされてきました。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』や『ユナイテッド93』など、手持ちカメラ撮影の映画は苦手なんですよ本当に。
この『カメラを止めるな!』もその手持ちカメラでの長回しのシーンがあって(それも、本当に長い!)、スクリーンから視線を外し、吐き気に耐えていました。
映像酔い、乗り物酔いしやすい人は、酔い止めをあらかじめ飲んでおく、などの対策をおすすめします。いや、そこまでして観る必要があるのか、という疑問はあるかもしれませんが、かなり映像酔いしてきつかった僕も、最後まで観てよかったとは思っています。
(というか、途中退席していたら、この映画の印象は最悪だった)


正直、前評判の高さであまりにも期待されてしまうと、「なんだこんなものか」と思われてしまう可能性もありそうなんですよ。
いままで、ハリウッド映画やテレビドラマのスペシャル版のような邦画を中心に観てきた人にとってはかえって新鮮で、ミニシアターで上映される低予算映画や小劇団の舞台を見慣れていれば、「ああ、いかにも!」って感じではなかろうか。


これが「ゾンビ映画」であるのも「様式美」みたいなもので、ホラーやポルノというジャンルは、若い映画監督が、低予算だけれど自由に自分の作品をつくれるという「新人監督の登竜門」であったことを踏まえているんですよね。
ゾンビ映画というのは、ゾンビを出さなければならないけれど、逆に、ゾンビが出てくれば、あとは何をやってもいい。


この映画を観ると「よくがんばったなあ!」という感情がわいてくるのです。
それはもう、いろんな意味で。


いかにもチープなつくりであり、わざとらしい場面も多くて、やっぱり低予算映画だよな、でも、なんでこんな映画をみんな絶賛しているんだ?
低予算で話題になる映画をつくろうと思えば、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のような「素人がハプニングに巻き込まれていくもの」になってしまうのかな……


……そう思った時点で、僕は術中にハマっていたのです。
映画で画面にうつっているものには、それなりの意味や理由や事情がある。
あらためて、それを思い知らされます。


シックス・センス』みたいな「見事などんでん返し」というよりは、とにかく、出演者や製作者を応援したくなってくるのです。
「やられた!」というよりは、「なんとか最後までがんばれ!」と、一緒に伴走しているような気分になります。


低予算映画って、「安っぽい」とか「力を入れずにつくっている」という先入観があったのですが、作る側にとっては、映画を1本撮るというのはすごいことで、「低予算でも撮りたい」という人たちこそ、情熱にあふれていたり、斬新なアイデアで勝負しようとしていたりするのです。
もちろん、「ハズレ」も多いんですけどね。
カメラを止めるな!』のような成功をおさめられる確率は、お祭りのクジでニンテンドーSWITCHを当てるのと同じくらいの低さかもしれません。
映画の場合は、びっくりするほどお金をかけたハリウッド映画も、DVDに「劇場公開作品」とクレジットするために単館上映される作品もあって、どちらも観賞料金は同じ、という平等なのか不平等なのかよくわからない仕組みになっています。


でも、そんな仕組みだからこそ、300万円という低予算でつくられた、この『カメラを止めるな!』に1800円払うことに、ちょっとロマンを感じる面もあるんですよね。
ゾンビ映画って、人がメイクすることでそれらしく見えるから、お金も比較的かからないし。
でも、ヒロイン役の秋山ゆずきさん(この人、なんかやたらと魅力的だったんですよ、僕基準では。カメラマンも、良い意味でエロチックに撮っているし)、あんなに走って、ギャラはいくらだったんだろう……とか、ちょっと思いました。
「仕事に応じた賃金を!」というのは、いまの世の中では圧倒的に正しい。
その一方で、芸能とかアートの世界では、まずは自分を知ってもらったり、存在をアピールすることが優先される面もある。
カメラを止めるな!』をみて、「この役者さんを今度起用してみよう」と思う関係者も少なからずいると思います。


個人的には、この映画って、「自分は新しいものを見る目がある」と思いたい人や「他人が頑張っているところを見るのが好きな人」は、ハマりやすいと思うのです。
本当は、「ふらっと入った映画館で、なんとなく気になって観てみたら面白かった!」みたいな出会い方が最良の作品であり、ここまで前評判が高まり、盗作疑惑が報道されたことで「ネタバレ比較」とかが拡散されている状況というのは、すでに「旬は過ぎてしまっている」とも言えるのでしょう。


面白い!とか、すごいどんでん返し!って言わないとお客さんを呼べないのだけれど、そうやってアピールすることによって期待値が上がりすぎてしまったり、ネタバレしてしまう、というのはコンテンツの宣伝の難しさではあるよなあ。


とりとめのない、映画の感想とも言い難い内容なのですが、個人的には「興味を持った人は、映画館で早めに観ることをおすすめしたい映画」でした。
仮に「観て損した」と思ったとしても、この映画なら、それを会話のネタにすれば元が取れるはず。
くれぐれも、映像酔いしやすい人は、準備をしていくことをおすすめします。


このエントリも参考になりますよ(ただし、軽くネタバレしていますので要注意)
www.itmedia.co.jp


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