- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/04/07
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2018/04/07
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内容(「BOOK」データベースより)
いま、国際社会は危機的な状況にある。構造転換に入った世界の中で、多くの人は何が事実に基づき、何が印象操作に過ぎないのか判断がつかず、混乱している。“情報”の洪水に溺れずに生きるためには、インテリジェンスが必要であり、それを支える知性を備えなければならない。一生ものの知性を身に付ける勉強法!!
※本書は『危機を覆す情報分析』(角川書店、2016年)を新書版として改題し、加筆修正したものなので、ご注意ください。こういう「既刊の新書化」って、本を開いて内容を確認しないとわからないことが多いので、不親切だよなあ、と思います。
本書では、インテリジェンスの理論、国際情勢に関する具体的分析、読書術、日本の大学生やビジネスパーソンに起きがちな知的欠損、受験勉強の仕方など、多岐にわたるテーマを扱っている。これらのテーマに通底しているのは、インテリジェンスの技法や情報分析の根本にある勉強法だ。そのため、新書版ではタイトルもそのように改めた方がいいと考えた。
ということなのですが、現実的に、佐藤さんと同じ量の勉強をすることは、なかなかというか、かなり難しいのではないかとは思うんですよ。
ただ、高校生レベルからの数学の重要性とか、宗教的背景を知らなければ、世界情勢を分析することはできないとか、なるほどなあ、と思う話もたくさんあります。
こういう本を読むことによって、佐藤さんの知の一部に触れることができる、自分もちょっと勉強した気分になれる、というのも大きいんですよね。
「本当は、あなたが自分自身で勉強しなきゃダメだよ」って書いてあるのですけど。
最近よく耳にするようになった「インテリジェンス」という言葉について、佐藤さんは、こう説明しています(少し前までは、「インテリジェンス」=「知性」だと僕は認識していました。知性とは何か、というのは、それはそれで難しそうではあります)。
さて、インテリジェンスという概念は、比較的最近になって出てきたものです。インフォメーションとインテリジェンスとはどう違うのか。インフォメーションというのは、周り中にある情報すべてのことを言います。新聞はインフォメーションです。それに対して、秘密情報を取ってきたら、それはインテリジェンスです。新聞の情報に評価を加えることをインテリジェンスとする言い方もありますが、それはちょっとズレた見方です。
そもそも情報という言葉は明治以降になってできた言葉です。情報とは、inteligenceの訳語。軍事用語で、敵情報告という意味。敵の様子を見て報告するというのが本来の訳ですが、今は敵情報告というより、インフォメーションの意味で使われるのが一般的です。インフォメーションにも指向性が含まれています。新聞も世の中に起きたことをランダムに拾うだけでは、新聞にはなりません。編集権によって取捨選択をしています。
インテリジェンスとインフォメーションの違とは情報の濃度、密度にあると言っていいと思います。それから幅、指向性です。この違いに特徴があることに留意しましょう。つまりインフォメーションにも必ずインテリジェンスの要素があり、インテリジェンスはインフォメーションをベースにしなければ成立しないという相関関係が基本になるのです。になるのです。
マスメディアは中立の立場で報道しなければならない、という意見を持っている人は多いのですが、どのニュースを載せ、大きくとりあげるか、という編集が行われている時点で、そこには伝える側の「意思」や「意図」があるわけです。僕たちの日常会話で、知っていることを全部話すわけではなく、「この人は、この話に興味を持つだろう」とか、「この話はしないほうがいいな」と考えながら口を動かしているように。
もちろん、あまり深読みをしすぎると、それはそれで誤解を生むこともあるのですけど。
情報や物事の背景というのは、知れば知るほど、何が正しいのかわからなくなってくるような気もするのです。
ウーサマ・ビン・ラーディンの映像が何回かビデオで流れました。撮った場所はだいたいアフガニスタンのどこかですが、いつも後ろに洞窟がありました。なぜか? ムハンマドがアッラーの啓示を受けたのは洞窟の中だったからです。彼らはムハンマドが啓示を受けたとき、世の中は最も正しかったが、時間が経つにつれて人々堕落し、悪くなっていったという下降史観をとっています。それを表しているのです。ウーサマ・ビン・ラーディンは、今のサウジの王国はとんでもないと訴えます。
たとえばワッハーブ派、ハンバリー派ではアルコールは厳禁です。ところがサウジの王族はウィスキーを山ほど飲んでいる。王族は、コーランで禁止しているのはブドウで造った酒だから、ブドウが原料でないウィスキーは飲んでも構わないと言い訳する。
あるいはハンバリー派では、売春・買春は石打ちの刑です。石打ちは厳しい。大きな石なら一発で死んでしまいます。たいていこぶし大ぐらいの石を特別に選んできて、「どうぞ、ご自由にお打ちください」と山積みにして置いてある。最初に投げるのは、告発した人です。石が当たると本当に目が飛び出して鼻が折れて、歯が欠けてボロボロになって苦しみながら死んでしまう。売春や買春をした人間はこんな目に遭うという見せしめで、今も公開処刑で殺されてす。
ところがロンドンのエスコートクラブなどに行くと、サウジの連中がたくさん来て楽しんでいます。彼らが行くのは、イスラムのウラマー(導師)が経営しているクラブです。名目は結婚斡旋所です。イスラムの結婚は、結婚するときに離婚の条件を決めておきます。絶対離婚しないようにするために、離婚のときは黄金1トンとラクダ100頭という法外なものを慰謝料として支払うことにします。離婚できなくするための条件を立てるわけです。
イスラム教では男は、四人まで妻を持つことができます。金持ちは第三夫人までは持ち、四番目は空けておきます。そしてロンドンに行ったときに四番目の妻を探していると、件の結婚斡旋所に相談に行くのです。たくさん写真を見せられて気に入った子がいると、離婚の条件を提示します。結婚時間二時間、慰謝料五万円。これで契約成立すると、時間結婚も成り立つ。ウーサマ・ビン・ラーディンはそういうのは腐り切っている、おかしいじゃないかと厳しく糾弾しました。
これを読むと、ビン・ラーディンの主張のほうが、真っ当なのではないか、と僕は思わずにはいられません。
彼自身も贅沢ができる立場だったにもかかわらず、金と権力を使って快楽にふけっている王族や富豪たちに反旗を翻したのだから。
ビン・ラーディンは、同時多発テロの首謀者であり、その抵抗の方法は受け入れられないし、日本の立場として、ビン・ラーディン支持を打ち出すことなどできないのもわかるのだけれど。
「正しさ」の物差しが違う世界どうしが、正しさを比べて争うことに意味があるのだろうか?
高校までの基礎知識をつけようと思ったときに、何が大変か。高校生ができるから大変なはずはない。問題は、我々が持っているプライドです。高校レベルのここに欠損箇所がある、中学レベルのここに欠損箇所がある。それを認めたくないというプライドが、一番の障害になります。教養をつけるためにプライドを捨てろとは申し上げません。プライドがないと教養はつきませんから。プライドを一回括弧の中に入れましょう。
自分だけの秘密のノートをつくっておくといいでしょう。どの勉強のどれができていない、数学のここができていないという自分の欠損。それを書いていく。欠損を提示することができれば、半ば解決しています。あとは何時間机に向かって本を読むことができるか。あるいは喫茶店や仕事の合間に本を読む時間があるか。その時間の中でどういう順番でどの本を読んでいくかということをアレンジしていけばいい。ぜひこの作業を進めていただきたい。
最終的に皆さんの中で引っかかるのは何でしょうか。予言しておきます。数学だけになります。この講座に来ていただく方は、歴史、政治経済、倫社など、社会科系の科目に対する関心は強いでしょう。社会科がきちんとできる人は国語もできます。国語ができるのは論理能力があるということです。ただし、それを数式など、論理の約束事に即して書く訓練だけは欠損しています。
プライドがあるから、年を重ねても「勉強しよう」と思うし、高校生くらいの問題がわからないのを認めたくない、とプライドが邪魔をすることもある。
諸刃の剣というか、自分のプライドをうまく制御していくことが、大人になってからの勉強には必要なのかもしれませんね。
「プライドを一回括弧の中に入れる」というのは、言い得て妙だな、と。
そして、「数学に引っかかる」というのは、僕も実感しています。昔からちょっと苦手だったのですよね。
今ならわかりそうな気がして、教科書をめくってみたのですが、どこから自分がわかっていないのかを把握する時点で、けっこうハードルが高い。
他の教科に比べて(物理とかは数学に近いのですが)、少しずつステップアップしていく教科なのだよなあ。前の段階がわかっていないと、次に進めない。そして、試行錯誤する持久力みたいなものが、年齢とともに確実に落ちている。
年をとってみると、数学の重要性みたいなものをあらためて感じるのです。
子どもの勉強でも、結局、差がつくのは算数(数学)って、よく言われますし。
佐藤優さんと同じように勉強はできないとは思いますが(本当に、佐藤さんは「勉強のエキスパート」というか、「勉強中毒」じゃないのかな)、大人になってから何をどんなふうに学べばいいのかを知りたい人にとっては、役に立つことがたくさん書かれている新書です。
僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意
- 作者: 池上彰,佐藤優
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2016/12/16
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- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/05/02
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- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/10/20
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