琥珀色の戯言

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【映画感想】ヴェノム ☆☆☆

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ジャーナリストのエディ・ブロック(トム・ハーディ)は、ライフ財団が人体実験を行っており、死者が出ているといううわさを聞きつける。正義感にかられ、真相を突き止めようと調査を始めた彼は被験者と接触したために、地球外生命体のシンビオートに寄生される。

www.venom-movie.jp


2018年、映画館での31作目。
平日の朝の回で、観客は30人くらいでした。
朝いちばんの上映って、けっこう高齢の方が多いんですよね。


マーベル作品の映画というのは、けっこう上映時間長めのものが多いのですが、この作品は112分と比較的コンパクトにまとまっています(エンドロールやおまけ映像も含めての112分なので)。
なんでも、マーベル作品の映画としては、これまでで最も短いのだとか。

この『ヴィラン』、ものすごく斬新とか、ものすごく面白い、というわけではないのですが、安定・安心のマーベル映画という感じです。
これまでの作品、『アベンジャーズ』とか『スパイダーマン』『アイアンマン』が面白かった、という観客は楽しめるでしょうし、そうでない人にとっては、やっぱりこれもダメ、ではなかろうか。
スケール感では、ちょっと劣る感じはしますし。
それだけに、気楽に観ることができる作品でもあるのですけど。


この映画を観ながら、僕はずっと、「これ、『寄生獣』だよなあ」と思っていました。
で、帰ってから、どちらが先だったのか確認してみたのです。
シンビオートは、1984年から1985年の『シークレット・ウォーズ』で、スパイダーマンのブラック・コスチュームとして登場し、その後、人間との共生体ヴェノムとして初登場したのは、1988年5月に刊行された『アメイジングスパイダーマン #300』だそうです。

この映画のなかでは、権力に対して媚びない、反骨のジャーナリスト(のわりには、実際に干されてみるとけっこうやさぐれてしまうのですが)として描かれているエディ・ブロックさんなのですが、原作のコミックではスパイダーマンとの因縁があって、悪に堕ちていくキャラクターみたいです。


寄生獣』の元になった中編は、『モーニングオープン増刊』(講談社)でF号(1988年)からH号(1989年)まで全3話掲載されており、時系列で考えると、マーベルの「人と共生するシンビコート」のほうが先なんですね。
僕がちょっと調べた範囲では、『寄生獣』の作者が直接『ヴェノム』に言及したことはなさそうですが、『ヴェノム』は1982年に公開されたアメリカの映画『遊星からの物体X』の影響を指摘されており、あの時代の空気が生み出した作品群、と考えるべきなのかもしれません。

寄生獣』では、「犠牲になる人間の死」が、ひとつずつスタイリッシュ(?)に描かれていたのに比べて、『ヴェノム』ては、あまりひとつの死にこだわらず、シンビオートの力によってあっさり人々が大量虐殺されていきます。
どんどん哲学的なテーマに向かっていった『寄生獣』に比べて、『ヴェノム』は、突然「こちら側」についてくれて、おとなしくなってしまうのには、なんだか拍子抜けしました。
ヴェノムの側も、「共生した人間の影響を受ける」という設定があったにせよ、潔いというか、かなりアバウトだな、というか。
それをいちいち描くとテンポが悪くなるという判断なのか、そもそも、そういう辻褄にあまりこだわらないのがアメリカ流なのか。
この映画については、エディと敵対する勢力の「動機」もよくわからないし。
もともと「そういう人」だった、ということで良いのだろうか。


深く考えてしまうと「なんでそうなるの?」というツッコミどころ満載の作品ではあるのですが、そういう部分も含めて面白がるのが、マーベル作品に対する作法なのでしょうね。
映画館で観ると、「まあ、こんなものだな」で、テレビ放映やレンタルで家で観ると「けっこう楽しかったな」という、平均的な「大作じゃないマーベル作品」クオリティ。
それで良いんだよね、きっと。


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