琥珀色の戯言

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【読書感想】いま君に伝えたいお金の話 ☆☆☆☆

いま君に伝えたいお金の話

いま君に伝えたいお金の話


Kindle版もあります。

内容紹介
お金は一人でポツンといるのが嫌いです。
一人が二人、二人が三人になると……
一気にドドッ、ドドドドドッと集まってきます。

お金を増やすプロ中のプロが初公開ーー
お金で苦労しない人生を送る方法。


誰よりもお金に詳しい著者が、15歳に向けて書いたお金の本。生きるために貯金はどのくらい必要? 投資は、いつから、何を始めればいい? 仮想通貨はこれからどうなっていく? お金を増やす秘訣はある? 先行きが不透明な人生100年時代に、どんなふうにお金と付き合えばいいかを易しく伝えます。

第一章 お金って何だろう? お金のことを知ってお金に強くなる
第二章 お金と世の中の関係 プライスタグから世界が見える
第三章 君がお金を手にする方法
第四章 働き方が大きく変わる
第五章 稼いだお金を貯めて増やす
第六章 お金と向き合うための覚悟 お金が凶器に変わるとき


 あの「村上ファンド」の村上世彰さんの著書。
 僕は村上さんのことを「拝金主義者」だとずっと思っていたのですが、村上さんの『生涯投資家』という著書を読んで、けっこう見かたが変わったんですよね。


fujipon.hatenadiary.com


 この『生涯投資家』のなかで、村上さんは「日本にはお金(貯蓄)があるのに、みんなが先行きに希望を持てずに、お金を循環させないのが問題なのだ」と繰り返し述べています。
 それが、社会の閉塞につながっている、と。
 お父さんも投資家で、お子さんたちも投資家という「投資家の血」の物語でもあり、「お金」をめぐる、信頼と裏切りのエピソードもたくさん紹介されています。
 お世話になってきた人に、納得できない案件を「自分の顔に免じて、これでおさめてくれ」と言われたとき、人間として、投資家として、どうするべきなのか?


 今回の『いま伝えたいお金の話』は、『生涯投資家』よりも、もっと若い人たちを対象に書かれたものです。
 いまの日本では「お金がすべて」という価値観と、「お金よりも大事なものがある」という価値観がせめぎあっていて、同じ人でも、時と場合によってこれらを使い分けていることが多いのです。


 村上さんは、子どもたちに読んでもらうことを想定して、この本を書いておられるのです。

 僕はお金が大好きです。お金は自由をくれるし、やりたいことをやらせてくれる。
 上手に使えば、お金は君の幸せをサポートしてくれる。そしてさらには、周りの人を助けたり、世の中をより良い場所に変えたりすることができるから。
 その大好きなお金を使って、僕は投資家という仕事をしています。何かをやりたいのにお金が足りない、というような人やお金を提供するというのが仕事です。世の中には僕以外にも多くの「投資家」がいて、誰かの夢をカタチにしたり、会社が事業を続けていくためのお手伝いをしたりしています。「投資」がいつも世の中を素敵にする結果に結びつくとは限らないけれど、投資家をしていていつも強く感じるのは、お金には周りを巻き込み、社会を豊かにする力があるということです。
 社会を豊かにするためには、お金が社会のなかをめぐることがとても大切です。この「お金の流れ」を止めてはいけない。詳しくは追って話をしますが、僕は君に、「稼いで貯めて、回して増やす」というお金との付き合い方を伝えたいのです。増えたお金はまた回す。「回す」というのは、自分の幸せのためにお金を使ったり、増やすために投資をしたりして、自分の手元から一旦放すこと。稼いだお金のすべてを手元に貯め込んでしまうと、「お金の流れ」がストップしてしまいます。
「お金が大好き!」と大きな声でいうことに眉をひそめる人もいるかもしれません。でも、君たちが、お年玉をもらったとき、おこづかいをもらったときに、「やったー!」と、嬉しい気持ちになりませんか? もらったお金で何を買おうか考えたり、どれくらい貯まったかを考えてワクワクしたりする気持ち。お金に対してそういう気持ちを持つことを、僕はとても大事なことだと考えています。
 誰だって、生きるうえでお金が必要だし、お金なくして生きることはできません。
 いうなればお金は、生きていくうえで欠かすことのできない「道具」です。道具は上手に使うことができれば、自分も含め、人を楽しませたり喜ばせたり幸せにしたりすることができる。


 だからこそ、「お金」について、早いうちからちゃんと学んで知っておくべきことが大事なのだ、と村上さんは書いておられます。
 「僕はお金によって、幸せを得た人もたくさん知ってすが、人生が狂ってしまった人、お金持ちだったのに使い方を間違えて自分も周りも傷つけてしまった人も、たくさん知っている」とも。


 これだけ多くの人が「お金」に右往左往しているにもかかわらず、お金について学ぶ機会というのは、そんなに多くはないのです。
 自分でその気になれば、参考になる本や話をしてくれる人はたくさんいるのだけれど、積極的に知ろうとしなければ、いつのまにか身についている、ということはありえません。
 金利というものの考え方や計算法を意識することもなく、住宅ローンを組んだり、「リボ払い」や「カードローン」に手を出してしまう人が、どんなに多いことか。


 村上さんは、子どもの頃から、「ものの値段」に強い関心を抱いていたそうです。

 考えてみてください。この世の中のありとあらゆるモノには値段が付いている。それってすごくないですか? たとえば山や水にだって、目に見えるプライスタグは付いていないけど、値段は付いています。そして常に変化している。もしモノの値段が永遠に変わらなくて、鉛筆はどんな鉛筆も一本100円と決まっていたなら、値段を見て回ってもあまり意味がないかもしれません。
 でも、同じ鉛筆でも酒類によって値段は多様だし、買う場所によっても違う。さらに変わり続ける。だから面白いのです。値段は、他のモノの値段とも密接につながりがある。季節や気候の変化、工場の場所、使う素材、あるいは人々の関心、好きなモノの変化、人気のあるスターが持っていたからなど、ありとあらゆる理由が複雑にからみ合っています。長い間値段の変わらないものもあれば、毎日のようにどんどん値段が変わるものもある。そしてそういうことには、すべて理由があって、そうやって世の中は動いている。
 子どもの頃からいろいろなモノの値段に興味を持っていたおかげで、そういうことがだんだんわかるようになりました。
 モノの値段は、ただの無味乾燥な数字ではありません。
 それは、世界の秘密を解き明かすひとつの鍵でもある。値段について誰かに聞いたり調べたりしていくうちに、この社会のさまざまな仕組みがおぼろげながら見えるようになりました。それは僕にとって面白い「遊び」でありながら、お金と仲良くなる道筋になりました。


 すべての「値段」には、それぞれの「理由」があるのです。
 まあ、こういうのって、興味を持てる人もいれば、持てない人もいる、というのが正直なところだとは思うのですが、大人の側としては、子どもに意識的にきっかけを与えるというのは大事ですよね。
「ああ、うちはお金がない」と嘆きながら「世の中はお金じゃない」と、子どもを混乱させるだけでは、あまりにも無策です。
 お金に興味が持てれば、算数とか社会の勉強にも活かせそうですし。


 村上さんは、この本のなかで、『13歳のハローワーク』(村上龍著/幻冬舎)のこんな一節を紹介しています。

 わたしは、この世の中には2種類の人間・大人しかいないと思います。それは、「偉い人と普通の人」ではないし、「金持ちと貧乏人」でもなく、「悪い人と良い人」でもなくて、「利口な人とバカ人」でもありません。2種類の人間・大人とは、自分の好きな仕事、自分に向いている仕事で生活の糧を得ている人と、そうではない人のことです。


 村上(世彰)さんは、自分の好きなことを仕事にしていきたい、と思う人こそ、お金のことに無頓着であってはいけない、と仰っているのです。

 大きな夢があれば、生活が苦しくても頑張ることができるかもしれません。でも、そういう人ほど、お金のこともしっかり考えてほしい。好きなことができるなら、お金が稼げなくてもいいと簡単に口にしてしまう人がいます。その考え自体を否定するつもりはありません。お金なんかなくても、好きなことをしていられればそれだけで人生幸せ、という人もいるでしょう。お金を稼げないと覚悟しているのなら、それでいいと思います。
 大切なのは、本当に本当に覚悟ができているのか、です。漠然と、この仕事ではあまり稼げないから貧乏になるだろうけれど、好きなことをして一生を送れるならそれでいいや、というくらいの気持ちではダメです。なぜなら、そういう漠然とした気持ちだと、間違いなく、日々の生活さえままならずお金に追われ、お金に縛られて生きる=お金に支配されることもなってしまうからです。
 逆にいえば、夢を実現するためにも、お金に強くならなければいけない。収入が少ないなら少ないなりに、その範囲内で生計を立てることを考える。若い頃に苦労しながら大きな夢を叶えた人の多くは、金銭感覚の優れた人でもありました。
 稼ぎが少ない仕事を選ばないほうがいいといっているわけではないし、稼ぎがより多い仕事を選んだほうがいいといいたいわけでもない。稼ぎが少なくても自分のやりたい仕事をやるつもりなら、稼ぎがどの程度になるか、その稼ぎで自分の生活をまかなえるかまで考えをめぐらせる。自分が稼げる金額を想定して、その範囲で、どこに住み、どういう暮らしをすれば、人に迷惑をかけないか……そうした計算をして、現実を見たうえで、それでもその生き方を選ぶというのなら、つまり、本当に覚悟ができているなら、夢を追いかける人生を僕は心から応援します。


 厳しいようだけれど、「お金なんてなくてもいいから」と夢を追ったつもりの人が、「これでは生活できない」という理由で夢をあきらめていくことは、多々あるんですよね。
 「覚悟」というのは、そんなに簡単にできるものじゃないし、若いころはよくても、中年以降の貧乏というのは、骨身に染みるのです。家族がいれば、なおさら。


 村上さんは、ひとつの指標として、10の収入があれば、そのうち7で生活をして、1を日々の娯楽に、2を投資に、と仰っているのですが、実際は、10のうちの7で生活していくことが難しい時代ではあるのです。そこで支出の内訳を見直す、というのも大事なことなのでしょう。
 

 僕の子どもにも、読んでみてほしい本なんですよ、これ。
 世の中お金じゃない、って言えるのは、お金に困っていない人間の特権なのだから。


新 13歳のハローワーク

新 13歳のハローワーク

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