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内容紹介
たった一人になった。でも、ひとりきりじゃなかった。
両親を亡くし、大学をやめた二十歳の秋。
見えなくなった未来に光が射したのは、
コロッケを一個、譲った時だった――。
激しく胸を打つ、青さ弾ける傑作青春小説!
母の故郷の鳥取で店を開くも失敗、交通事故死した調理師の父。女手ひとつ、学食で働きながら一人っ子の
僕を東京の大学に進ませてくれた母。――その母が急死した。柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。
全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、大学は中退。仕事を探さなければと思いつつ、動き出せ
ない日々が続いた。そんなある日の午後、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の総菜屋で、買おうとしていた
最後に残った五十円コロッケを見知らぬお婆さんに譲った。それが運命を変えるとも知らずに……。
そんな君を見ている人が、きっといる――。
「2019年ひとり本屋大賞」2作目。
『本の雑誌』の年間ベスト10で上位に入っていたこともあり、気になってはいたのですが、僕は基本的に「青春小説」とか「美談」とかには近寄らないようにしているのです。
今回、『本屋大賞』にノミネートされているということで読んだのですが、本当に久しぶりに「教養小説(ビルドゥングスロマン)」というやつを読んだような気がします。
教科書で読んだ、志賀直哉の『小僧の神様』を思い出してしまいました。
主人公の柏木聖輔は、まだ20歳くらいで、両親が相次いで亡くなり、大学も中退して、大学時代の同級生とも縁遠くなり……というなかで、ものすごく達観しているというか、作中ではほとんど取り乱すこともなく、淡々と生きているんですよね。
周りも、基本的には善良な人々で、ごく一部にステレオタイプの小悪党がいるくらいです。
この小悪党は大変ムカつくのですが、その一方で、柏木くんを決定的に傷つけるほどの存在ではありません。
むしろ、主人公の「いいひと」っぷりを際立たせるための書き割りみたいな感じさえするのです。
ああ、この小説を読んでいる善男善女は、きっとこいつらにひどくムカつき、主人公を応援するのだろうな、と思いつつ、僕もやっぱり主人公の肩入れしてはいたのですが。
たぶん、僕が20歳のときにこれを読んでいたら、「何このベタベタな人情小説……そもそも、なんのかんのいって、こいつは人に好かれる才能があるし、楽器も弾けるし、手先だって器用だし、女の子のほうから寄ってくるようなヤツじゃねえか」と毒づいていたと思うんですよ。
でも、半世紀近く生きてきた僕は、けっこう素直に、この「いいひとが、みんなに支えられて、たぶん幸せになれるであろう小説」を読むことができました。
けなげじゃねえか、ちくしょう!とか、けっこう素直に思いつつ。
読む側としては、「これは、とんでもないことにはならない物語だ」という安心感もあるし、この年齢になると、「まあ、フィクションの世界のなかだけでも、いいひとが幸せになるのは、悪いことではあるまい」という気もしてくるのです。
本当に、たいしたことは起こらないし、なんか、親とか祖父母がみた「理想の子ども、孫」の話を、読者が不快になるようなトゲを丁寧に抜いて書いたような小説なんだよなあ。
読んでいると、これは壮大な前置きで、とんでもないことが起こるのではないか(叙述トリック症候群、と僕は勝手に名付けています)、とか、もうすぐ2020年になろうというこの日本で、よくこんなベタな教養小説を書く勇気があったなあ、とか、あれこれ勘繰ってしまうくらいです。
だからこそ、「ベタな王道の根強い吸引力」を再確認させられるところもあるのです。
僕は最近のブログについて、「みんながストライクゾーンギリギリを狙っているおかげで、ど真ん中がぽっかり空いている」と感じているのですが、これはまさに、「ど真ん中」なんですよ。たぶん、日ごろ本を読まないような中高年、綾小路きみまろさんのステージに魅了される人々は、「ハマる」はず。
なんのかんの言っても、AIだ働き方改革だ定時帰宅だっていうのは、僕の目(あるいは、一部の人たちの目)から見える世界の変化でしかないのだ、ということもあらためて考えさせられます。
なんだか全然褒めていない感想になってしまったのですが、今の時代には「一周回って、新しい小説」なのかな、とも思います。
本人はあまり積極的に何かをやろうとしていないのに、周りが盛り立ててくれたり、流れに乗っていたりするうちに、結果的に、いろんなことがうまくいってしまうというのは、「なろう小説」的でもありますし。
僕も、これに素直に感動できるようなオッサンになれたら、よかったんだけどねえ……
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