琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】漫画家接待ごはん ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

漫画家と編集者が集うお店という名の戦場、そこで漫画家・濱ケンジは今日も打ち合わせと言う名の“デュエル”に向かう。和食・洋食・中華…あらゆるごはんの誘惑に打ち勝ち、濱は自分の主張を編集者に伝えきれるのか!? 漫画家vs編集者による打ち合わせ系グルメコミック!


 「接待」か……
 新型コロナウイルスによる、「三密」回避や外食自粛の世の中にいると、なんだかこの言葉は、ものすごく懐かしい感じがするのです。
 僕が仕事をはじめた頃、今から25年前くらいは、まだ「メーカーさんからの接待」という慣習が残っていて、まだ若手だった僕も、上司のお供をして寿司だ鉄板焼きだと連れていってもらった記憶があります。
 当時の本音は、「仕事が終わってまで気を使いたくないなあ、ひとりで牛丼食べて帰って、家でテレビゲームでもやっていたいなあ、そりゃ、このご飯はおいしいけどさ……」だったんですよね。
 新型コロナのずっと前、今から20年前くらいから、医療関係の接待文化というのは廃れていって、もう10年くらいは、そういう接待ごはんの機会はありません。
 この作品で紹介されている、「漫画家の接待ごはん」に関しては、「接待」的な要素と、「漫画家と編集者の打ち合わせというか、駆け引き」が含まれているのです。
 
 この漫画に関しては、「漫画家や編集者というのは、こういう生き物なのか……」と思うのと同時に、「接待する側」は、こういうことを考えて店を選んでいるのか、と、感心もしたのです。
 

 焼肉屋に行く場面はだいたい次の3パターン
 ひとつは新人作家の栄養補給
 ふたつめに大きな企画が始まるときの顔合わせ または打ち上げ
 そしてみっつめ 悪い話を切り出すときや 使いづらい作家と揉めた時なども 
 肉さえ焼けば気まずくなった空間をごまかすことが出来るので重宝しがち!


 主人公の漫画家は、担当編集に焼肉屋に連れていかれたとき、こんなことを考えているわけです。
 僕だったら、「おお、肉!うれしい!」って感じなんですが、漫画家は、接待する側は「話しづらいことを話す場所」として選ばれたのではないか、と身構えてしまうんですね。
 接待する側は「旨い、不味い」だけではなくて、誰を呼んで、どんな雰囲気の店で、何を食べるか、なんてことを意識しています。いくら美味しくても、ラーメン屋で「接待」はちょっと難しいですよね。

 「業界では、漫画が上手い人は料理も上手いとよく言われる。完成形から工程を逆算する思考が共通するのだとか」

 という話も出てきます。言われてみれば、なるほど、という感じですよね。
 ということは、僕は漫画家には向いていないのだな。

 ちなみに、この作品の舞台は東京と博多の店なのですが、こういうグルメ系の作品って、「東京の店」ばかりが紹介されていることが多いので、僕にとってはホームグラウンドが出てきて嬉しくもありました。たぶん「あの店」だな、と思い当たるところも何か所か出てきますし。
 料理もそうなのですが、建物や風景がすごくリアルに描かれてもいるんですよね。
 ちょっと『孤独のグルメ』っぽい。
 「接待ごはん」だから、必ず誰かと一緒に食べるご飯で、「孤独」とは無縁なんですけどね。

 「接待」というか、「おもてなしの極意と駆け引き」がさりげなく描かれていて、美味しそう、と思うのと同時に、「人と人との付き合いっていうのは、面白くもあり、めんどくさいものでもあるよなあ」とあらためて感じました。
 最近、そういう「駆け引き」のある食事の場に縁がないので、ちょっと懐かしくもあり。

 グルメ漫画、というより、漫画家とか編集者というのはどんな人間で、日頃、どんな付き合い方をしているのか、に興味がある人向けの作品だと思います。
 ただ、こういう「接待」とか「打ち合わせ」みたいな文化も、この新型コロナを契機に、大きく変わっていくのでしょうね。打ち合わせなら、オンラインでやればいい、って。
 新型コロナがある程度収束したら、接待や会食、飲み会は、どこまで「復活」するのだろうか?
 正直なところ、「いまのコロナ禍くらいの人と人との距離感が、僕にはちょうどいい」のですが。


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