琥珀色の戯言

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【読書感想】コロナ倒産の真相 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

【内容紹介】
アパレルの名門「レナウン」から小田原かまぼこ御三家「丸う田代」、リゾートホテルまで
コロナ倒産、そのとき企業に何があったのか。「経営危機」の本質に迫る!

◆架空取引、不正請求、中国親会社とのいざこざ、金融機関との騙し合いなど、コロナが起きる前に何があったのか、どうやって経営が行き詰まっていったのか、コロナ禍での倒産の経緯を帝国データバンク情報部が迫る。

◆多方面に人脈を有し、多くの倒産に関する情報が集まる帝国データバンクのベテラン信用調査マンが、コロナ倒産の裏側を解説する。


 新型コロナウイルスの流行がはじまって、すでに1年以上が経ちました。
 収束してきた、と思ったら新しい波がきて、の繰り返して、感染者数は1年前の5月より増えてきています。
 その一方で、昨年のゴールデンウィーク時に比べると、実際に感染するリスクは跳ねあがっているにもかかわらず、新型コロナウイルスへの「恐怖感」は薄れてきているようにもみえるのです。

 新型コロナウイルスは、人々の健康だけではなくて、大規模商業施設が休みになったり、飲食店が地種偉業になったり、観光客が激減したりと、経済的にも大きな影響を与え続けています。

 その一方で、日経平均株価は一時的に暴落したあと、上昇をつづけていたのです(最近は落ち着いていますが)。
 
 この本では、企業の信用調査の老舗である帝国データバンクが、「新型コロナの企業への影響」についてまとめたものです。
 
 僕は「新型コロナの影響で、企業は倒産しまくっているのだろうな」と思っていたんですよ。
 ところが、「2020年は過去にも例があまり見られないくらいに倒産が大幅に減少した」のです。

 新型コロナの感染が国内で広がり始めた2020年4月。初めて発出された緊急事態宣言当時は、人の移動がなくなり、商業施設などでは時間短縮での営業あるいは臨時休業による対応がとられました。ガラガラに空いた公共交通機関や、臨時休業で閉鎖されたデパートやテーマパーク。新型コロナ以前までは海外からの旅行客などで賑わっていた観光地も閑散とするなど、これまで見たこともない情景が全国各地で見受けられました。
 この最初の緊急事態宣言当時、国内景気は過去最大と言えるほど冷え込みます。帝国データバンクが行う景気動向調査では、その状況が顕著に表れました。この調査結果はDIとして数値化され、50より上であれば景気が「良い」、下であれば「悪い」状況を示します。2002年5月の調査開始以来、いくつかのシーンでこの景気DIが大きく悪化する場面がありました。例えば、リーマン・ショック東日本大震災、消費税率の引き上げなどがそれに当たります。
 初めての緊急事態宣言が出された4月、この景気DIが過去最大の落ち込みとなりました。5月もこの影響が続いて4月を上回る落ち込みとなり、2ヵ月連続して過去最大幅のDIの悪化になりました。そして、5月にはDIが25.2まで落ち込み、リーマン・ショックに次ぐような低い水準になりました。こうした情勢を受けて倒産が急増することが懸念されたのです。しかし、こうした新型コロナによる経済への影響が懸念され、企業や個人に対して様々な支援策が講じられるようになります。特に企業に対しては、例えばゼロ・ゼロ融資と呼ばれる実質無利子・無担保の融資があります。そのほか国税社会保険料などの納税猶予、持続加給付金や家賃支援給付金などです。これらが新型コロナによって業績が落ち込んでいる企業への支えとなり、倒産が抑えられる状況が続きました。その結果、2020年の倒産件数は7809件となり、前年から6.5%減少。倒産件数が8000件を下回るのは20年ぶりになります。


 もちろん、業種による差はあるのですが、現状では、公的な融資や助成金で、新型コロナウイルスの影響による倒産は、かなり抑えられているのです。
 それにしても、20年ぶりの倒産件数の少なさ、というのには驚きました。
 なんのかんの言っても、「企業」に対しては、国の援助はけっこう効果がみられているようです。
 ただし、飲食店に関しては、小規模事業者を中心に、過去最多の倒産件数となっています。

 2020年の1237件の業種別の倒産件数については、こんなデータが紹介されています。

 まず、1237件を大分類(その他を含む8業種)で見ると、「小売業」(365件)、「サービス業」(338件)、「卸売業」(181件)、「製造業」(161件)、「建築業」(110件)、「運輸、通信業」(42件)、「不動産業」(25件)となり、「小売業」と「サービス業」で全体の56.8%を占めています。
 最も多い「小売業」には百貨店、スーパー、ホームセンター、飲食店など、次に多い「サービス業」にはホテル・旅館、システム・ソフト開発、医療機関のほか、理美容室、映画館、学校、さらにカラオケボックス、ボウリングなどの娯楽関連業種が含まれ、ほとんどが個人消費者をメインターゲットとしていることがわかります。その分、新型コロナで人の動きが止まった影響を大きく受け、倒産も多発しているのです。
 
 さらに事業内容を細かく具体的に見ていきましょう。
 突出しているのは「飲食店」で件数は実に260件。あらゆる業種のなかで全体の16.6%を占めています。コロナ関連倒産が6件発生するごとに「飲食店」が1件発生している計算になります。以下、「建設・工事業」(110件)、「ホテル・旅館」(86件)、「アパレル小売店」(67件)、「食品卸」(62件)までが上位5業種となり、「食品小売」(41件)、「アパレル卸」(37件)、「食品製造」(32件)、「アパレル製造」(27件)が続いています。


 飲食店やホテル・旅館だけではなく、出かける機会が激減したことにより、アパレル関係にも大きな影響が出ています。
 学校が一斉休校になったことによって、給食向けの食材の卸売業者が倒産した例もあったそうです。
 こうして新型コロナ禍の時代を生きてみると、感染症の流行というのは、人類にとっては百年に一度くらいは起こる必然であることを実感せざるをえないのですが、正直、自分で経験するまでは、マスクをして生活するのが当たり前の社会になるなんて、SF小説の中だけのものだったのです。
 学校給食の食材を取り扱う会社であれば、「うちは安定した顧客がいるから、多少のことでは動じないだろう」と考えていたのではないでしょうか。

 その一方で、新型コロナ禍というのは、「いずれは収束していく」とみなされていて、経済という面では、すでに「アフターコロナ」をみて動いている人や企業も多いのです。
 
 これまでは、落ち着いたと思ったら感染者数がまた増える、の繰り返しでしたが、ワクチン接種が多くの人に行き渡れば、これまでの感染対策よりも劇的な効果が得られるはずです。

 そして、この新型コロナ禍のなかで、新しい仕事をつくりだしている企業や人もたくさんいるのです。

 この本のなかでは、2020年に倒産してしまった企業が実名で、その原因・経緯とともに紹介されているのです。

 ここまでコロナ関連倒産の説明をしてきたなかで見えた大きな特徴は、東京都や飲食店中小・零細企業の倒産が目立っていることだと思います。しかし、コロナ関連倒産には調査に携わった当事者にしか見えてこない最大の共通点があります。
 それは、新型コロナが「引き金」(一要因)となった倒産がほぼすべてを占めていることです。新型コロナが発生する前から、売り上げ減少、取引先への支払遅延、銀行への返済遅延や返済猶予要請、また、債務超過状態にあるなど厳しい経営環境にあったところに新型コロナが直撃して再起不能となったわけです。「いずれは倒産した事業者ばかりでコロナの影響を受けたとは言えないのではないか」といった意見もあるかもしれませんが、新型コロナが事業継続断念そして倒産への決定打となり、その時期を早めたことは紛れもない事実なのです。

 「コロナ前は健全経営で優良企業だったのに、コロナの影響で倒産にで追い込まれた」という例はほとんどないそうです。
 この本を読むと、企業、とくに中小企業や中小店となると、その日の売上げがなければ仕入れができないような、自転車操業のところがけっこう多いということを実感させられました。

 この本の記述ではないのですが、飲食店のなかには、時短営業に「協力」したおかげで、かえってふだんより儲かっているところもある、なんて話も耳にしました。
 
 公的な援助のおかげで、イメージほど企業は潰れてはいない、というのが現状ではあるのですが、今は「未曾有の危機」だからこそ公的資金が注入されているわけで、新型コロナが収束していけば、「今を生き延びるために借りたお金」を返していくことになるのです。
 アフター・コロナは、企業にとっては、これまでと同じやりかたでは厳しい時代になりそうです。
 一度、この「コロナ対応生活」を経験した人のなかには、今後もリモートワークを希望したり、接待や宴会に消極的になったりする人も少なからずいるでしょうし。


 

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