琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】どうやらオレたち、いずれ死ぬっつーじゃないですか ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

人は必ず死ぬ。その事実から逆算すれば、悩みはもっと軽くなる。お金とは→義理と金は誰かのために使ってこそ。結婚とは→相手とちゃんと言葉で褒め合うこと。運とは→人との縁がもたらすもの。人生とは→大きな目的を持つのは危険。仕事とは→人生の本業ではなく暇つぶし。命とは→生に執着するほど死が怖くなる。下ネタやダジャレの中にきらめく真理、才人ふたりが考える「人生の作法」


 みうらじゅんさんとリリー・フランキーさんの対談本。
 お二人は長年の付き合いで、この対談のなかでも、「6年間毎月、同じ仕事で会っている」という話が出てきます。
 章末の注釈には、こう書かれているのです。

6年間も毎月、同じ仕事で会うの/「週刊SPA!」の人気連載「グラビアン魂」のことで、月に1回の対談は和食系の居酒屋で5~6時間(長いときは朝まで)行われている。2021年現在は17年目に突入。


 僕もときどき「週刊SPA!」を手に取るのですが、あの「グラビアン魂」って、17年もやっているのか……そして、本当に二人で毎月会って、ちゃんと話しているのか……と驚きました。
 お互いのコメントをメールで送って、編集者が対談っぽく構成しているのではないか、と思っていたので。
 この対談を読むと、つかみどころがないというか、けっこう適当に生きているようにみえる「サブカル界の大御所」のような二人は、自分の立場をかなり客観的にみていて、生き残っていくためにはどうすればいいのか、をきちんと考えていることがわかるのです。
 読みながら、「これ、けっこう凄いことが書いてあるな」と感心させられました。
 もちろん、人生訓、みたいな感じじゃなくて、エロとかしょうもない話も織り込まれていて、退屈しないんですけどね。


「自己表現とは?」という項より。

M(みうらじゅん):自己表現って最終的には癖みたいなものでしょ。鼻の上をちょっと掻くとか、あれを突き詰めることを自己表現って言うんじゃないの?


L(リリー・フランキー):韓国の10代で大社長になったヤツが、かあちゃんのパンツを嗅ぐのが癖だったらしいんですよ。それを性癖とも言うけど、それで10代のときに女の人のパンツはもう少しいい匂いがしたほうがいいと思いついて、繊維に香料を練り込んだ女性用の下着を開発すると、それがバカ売れするんです。それって小さいときに「その癖やめろ」と言っていたら、そこで終わってたわけじゃないですか。それを親も匂わせ続けたし、匂い続けたっていう。
 何かを作るとき、あるいは仕事をしているときでも、すべての人が発明しようとしてるけど、発明なんてできるわけがないじゃないですか。今ないものなんてできるわけがない。だけど、傍から見て気持ち悪いことでも、そのままやらせ続けたらどうにかなるっていう。つまり、発明じゃなくて、みうらさんみたいに継続することで何かできるわけですよ。


M:単純に、あまり人の意見を聞いてこなかっただけかもしれない(笑い)。漫画を出版社に持ち込んだりしたときも、「漫画が上手くないのになんで描くの?」って自分で思ったし、相手からも言われたけれど、「好きだから仕方ない」ってごまかしてきた。美大を目指したときもデッサンなんて全然できなかったけど、考え直したほうがいいって一回も思わなかった。それって自信じゃなくて、やっぱり「好きだから」だけなんだよね。それは現実的な考えじゃないかもしれないけれど、大人のアドバイスをちゃんと聞く耳があれば、逆にもっと不安になってたよ。


L:それって結局、他者と比較するからそうなってしまうわけですよね。実際、自分の好きなことをやり続けてる人って、結構みんな食えてるんですよ、実は。ただ、若いときのほうがバランス感覚がいいっていうか、大人に毒されてるから、いろんな人を見たり会ったりして勉強しようとかって言いますよね。でも、そんなことしてたら絶対にバカになりますよ。だって、ほとんどの大人はバカなんだし、若いヤツに一生懸命話している大人は説教したいだけか、ヤリたいだけのどっちかでしょう。
 人に会うということは、あくまでそこから「ヒント」だけ得られればいいわけで、その人から直接何かを教わる必要はないと思うんですよ。それなのに、今の若い子たちは「新しいことをするためにたくさんの人の話を聞きたい。人に会うことが財産」とかいって、必死こいてゼーゼー言ってるわけですよ。でもそれって、「お前は営業マンか」ってことじゃないですか。若いときにそんなことをしても埋没するだけなのに。


M:どんなジャンルでも新しいことって、もう出尽くしているんだよ。だけど、若いころはそればっかり探すでしょ。本当は、そこで何年やり続けられるかに意味があるのにね。


L:音楽に新しいジャンルはもうないだろうっていわれているなかで、ヒップホップが30年くらい前に出てきた。何かと何かをミクスチャーするっていうか、サンプリングする。グラフィティとかダンスとか含めてのジャンルで。もちろん見方を変えれば「まだそんな新しいことが残ってたんだ」となるし、それはそれで考え方だからいいんだけど、それでも「発明する必要はない」っていうことが重要なんですよ、絶対に。若い人は発明しようとするんですよ。


 みうらさんは、別の項で、こう仰っています。

M:オレ、自分にひとつだけ才能があるとすれば、飽きてることを飽きてないと言い切れる自信だけなんですよね。そりゃあ、当然飽きますよ。でも、そこにしか活路がないんですよね。オリジナルなんてない。新しいことを見つけられるなんて思ったこともありません。だから、ひとつのことを飽きずにやるっていう。そこにしかオレの道はないって思ってるんですよね。


 結局、飽きずに(あるいは、飽きていることを表に出さずに)続けられるヤツが強い、というのは、僕も50年近く生きてきて、わかるような気がするのです。
 同じことをずっと続けていると、そのジャンルの「大家」とみなされるようになることも多いんですよね。
 自分が上手くなるというより、自分より上の人が少しずつ減っていって、いつのまにか自分がけっこう上のほうにいる、そんな感じ。

 ものすごく才能がありそうでも、すぐに飽きてしまったり、あれもこれもと中途半端になってしまったりする人は多いのです(僕もそうです)。
 みうらじゅんさんが、栄枯盛衰の激しいサブカル界(って言うのかどうかわからないのですが)で、生き残っているのは「続けることそのものが価値になる」という「悟り」に至ったからなのかもしれません。
 志村けんさんも、「定番のギャグはやっている芸人のほうが飽きてくるけど、お客さんを喜ばせるためには、やめずに続けたほうがいい」と仰っていました。


 39歳男性の「部下が全然ダメでストレスがたまって困ります」という質問に対して、みうらさんはこう答えているのです。

M:でも、部下も上司も自分の鏡みたいなもんだから、それが今の自分のレベルなんだよね、哀しいかな。やっぱり、部下がダメだっていうのは、自分のレベルがそうだから、そんな人しかついてこないだけで、それを言っちゃおしまいだけど、結局そうだよね。景気がいいときは三流まで金は来るけど、景気が悪くなったら金が来なくなった、っていうだけなんだよね。オレも一時、ぶつぶつそんな話をしてたら、先輩が「お前がその程度だからじゃないの」って。それを言われちゃあ、もう二の句が継げなかったね。


L:「だってしょうがないじゃない」(笑)が出てしまいますね。


M:そこがいいんじゃないの、逆バージョンでね(笑)。今ここにいるのが、オレの状態で、それ以上でも以下でもないってね。将来はわからないけど、ずっとこの感じなんですよ、きっと。それ以上望むのもなんだし、それ以下になろうとする必要もない。まあ、そうはいってもイラッとすることはいっぱいありますよ。


 僕もスタッフの仕事ぶりに、イラッとすることはあるのです。でも、そのたびに、「僕もこの程度だしな」と自分に言い聞かせています(それはそれで落ち込むことも多いのですが)。それこそ、日本で最高峰の名門病院で自分はやっていけるのか?って話ですよね。会社員だったら、自分がGoogleAppleに採用されていれば、周りもすごい人ばかりのはず。

 グラビアアイドルについての対談連載を17年間も続けられるというは、あらためて考えてみると、すごいことですよね。

 
 軽い気持ちで読みはじめたのですが、何十ヵ所も付箋を貼ってしまう本でした。
 「意識の高い」自己啓発本とかばかり読んでいる若い人に、ぜひ、読んでみていただきたい。


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