Kindle版もあります。
卒業式直前に始まったデスゲーム(特別授業)
あなたに本当の友達はいる?誰かと手を繋がないと死ぬ――。
女子高のクラス内カーストが崩壊し、
裏切り、嫉妬、憧れ、真実が手を取り合う。『みんな蛍を殺したかった』の著者が
青春と友情の極致を描く最高傑作!
【ルール】
・二人一組になってください。・誰とも組むことができなかった者は、失格になります。その回の失格者が確定したら、次の回へと続きます。
・一度組んだ相手と、再び組むことはできません。
・残り人数が偶数になった場合、一人が待機となります。
・特定の生徒が余った場合は、特定の生徒以外全員が失格になります。
・最後まで残った二人、及び一人の者が、卒業式に出席できます。
・授業時間は60分です。
「二人一組になってください」に、僕は嫌な思い出しかありません。
運動音痴だったので、体育の時間には組む相手を探すのも大変だったし、組んだ相手に僕ができないことで迷惑をかけるのもひたすらつらかった。
何人かでグループを作ってください、っていうのも嫌だったなあ。
クラスのなかで、いちばん小さなグループ、ゲームとかアニメ好きが集まるグループに入ってはいたのだけれど、そのなかで、僕は内心「僕はここまでオタクじゃないけどね……」と惨めな優越感に浸っていたのを思い出して自己嫌悪に陥ってしまいました。
「本当の”友達”はいますか?」という問いに、確信を持って、みんな頷けるのだろうか?
打算がまったくない人間関係なんて、ありうるのだろうか?
まあ、そんなことを考えてしまう人間だから、なかなか友達ができないのかもしれませんね。
「親友は何人いますか?」と聞かれたら、「親友って、どういう関係?いつも一緒にいたら、親友なの?」とか、考え込んでしまいます。
会わなくても大丈夫なのが、親友なのだ、とか、「一生のお願い」をすれば、なんでもやってくれそうだけれど、そのカードを一生使わないのが親友なのだ、とか、いろんな意見もありますよね。
この『二人一組になってください』という作品、まず、このタイトルに惹きつけられて読みました。
卒業式の日に突然始まるデスゲーム。
「二人一組になる」のは最初はそんなに難しくないけれど、同じ相手とは二度と手をつなげない、という条件が、どんどん選択肢を狭めていくのです。
そして、クラスには、厳然とした「スゥールカースト」があって、「一軍女子」は、「三軍女子と組むくらいなら死んだほうがマシ」と思っている。
正直なところ、命がかかっていたら、そんなこと言っていられないだろう、とは思いますが、あまりにも状況が突飛というか非現実的すぎて、参加している(させられている)女子高生たちも現実感がなかったのかもしれません。
というか、読みながら、「どういう仕組みで、こんなことができるんだよ!」と、デスゲームそのものにツッコミを入れたくなるのですけど、これはもう、『リゼロ』に「死に戻りとかできるわけねえだろ!」とか言うのと同じで、ある種の思考実験として読むしかないと思います。
そこで引っ掛かりすぎてしまう人には、この作品は不向きです。
『カイジ』とか『地雷グリコ』みたいに、賢い三軍女子が、知恵と立ち回りでデスゲームを生き延びていく話なのかな、と思いながら読んでいたのですが、実際は、このデスゲーム、本当に「容赦ない」のです。
それって、結局ちょっと死ぬ順番が遅くなっただけじゃないか……と何度思ったことか。
登場人物も「そのとき」になってその人物像が語られることが多いので、あらかじめ誰かに肩入れするのも難しい。
この女子高生たち、一部を除けば「正規分布内」で、「こんなデスゲームに参加させられるのはちょっとかわいそうじゃない?」という感じではあるのです。
でも、順番も、この普通っぽいクラスが選ばれたことも、結末も、すべて「容赦ない」し、「フォローも救いもない」ことこそが、この作品の難点であるのと同時に、印象に残るところ、でもあるんですよね。
僕は「次は誰がやられるんだろう?」「このかなりぶっ飛んだ設定の物語は、どこに着地するんだろう?」と、けっこう続きが気になりながら読み終えました。
現実が「容赦ない」「救いがない」にもかかわらず、「教訓的な物語」にしてしまうことを、作者は、許せなかった。
物語としては「救いがない」けれど、だからこそ、これを読んだ人の、現実の行動を少しでも変える力になるかもしれない。
……そんな簡単なものじゃないか……
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