Kindle版もあります。
銀行や証券、生命保険、ゆうちょ。これらと無縁に生活している人は、今やほとんどいないだろう。だが、その仕組みや実態について疑問を抱いたことはないだろうか。銀行の本店はなぜ、あれほど仰々しいのか。メガバンクは他行を吸収合併し、近年では通信会社との業務提携も加速させている。だが、それらは果たして本当に成功しているのか。コンプライアンスに人一倍厳しいはずの金融業界で、なぜ不祥事が後を絶たないのか……。金融業界の“裏側”を深く知ることで、世の中を見る解像度が劇的に上がる一冊。
「銀行は、晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」
人気ドラマ『半沢直樹』で有名になった言葉です。
僕自身は、銀行からそんなに大きなお金を借りた経験はないのですが、銀行も営利企業であり、顧客にとってのメリットよりも、その銀行(や担当者)の利益を優先することが多い、というのを実感しています。
僕自身がほとんど投資とか金融への知識がなかった20年くらい前に、薦められて買った投資信託と満期まで持っていれば元本は保証される投資商品は、10年後、まったく増えていなかったことを思い出すのです。
働いている人たちがみんな金儲けのことしか考えていない極悪人、とまでは思わないけれど、その人に向いた金融商品よりも、手数料が高くて利ザヤが稼げるものを、知識がない相手には容赦なく売ろうとしてくるのが銀行とか証券会社だと僕は思っていますし、それは「商売」としてやっている以上、しかたがないことなのでしょう。
投資系のYouTuberとかインフルエンサーも、「自分が稼ぐことが最優先」なのだと思っています。
言いつくされたことではありますが、そんなに自信があるんだったら、人に薦めるんじゃなくて、自分で買えばいいのに。
長期投資なら、世界経済は右肩上がり、とはいうけれど、人間の寿命は「歴史」のなかでごく短いものでしかなく、お金というのは資産の評価額が減っているタイミングで急に必要になりがちです。
この本では、銀行や証券会社の「内側の話」が、かなりわかりやすく紹介されているのです。
YouTubeの「資産形成」を煽る動画に影響されて「投資」をはじめる前に、この本で書かれている「取引先となる銀行や証券業界の事情と現状」くらいは知っておいて損はないはず。
僕は1970年代はじめの生まれで、高校の同級生のなかで、優秀だった人が、かなりの数、大手銀行やマスメディア、広告代理店に就職しました。当時、1990年代の半ばの就職活動においては、これらの業界は花形だったのです。
あれから30年近く経って、見渡してみると、テレビ局は広告が減り、さまざまなコンプライアンスの問題が顕在化しています。新聞はどんどん読む人が減りつづけている。大手銀行は、ネット銀行やネット証券の手軽さ、便利さに圧され、支店は減り、人員削減がすすめられています。
すべてはインターネットの影響、とまでは言えないかもしれませんが、いま人気がある業界が、永遠に続くなんてことはないのは、僕の半世紀くらいの人生経験でも痛感せざるをえません。
先日、岡三証券という証券会社が、株のネット取引からほぼ撤退し、SBI証券にサービスを譲渡する、と報じられました。
店舗型証券会社に残されたお客さんは、インターネットで取引をしない人たちです。となると、その多くがおそらく高齢者でしょう。
かつて準大手証券会社と呼ばれたうちの一社で、証券業界の再編成時に相手にされなかったのかどうかはよくわかりませんが、単独で今も残っている岡三証券などは、お客さんの平均年齢が75歳を超えているといいます。
今の時点で75歳を超えているようなお客さんは、現役時代、ビジネスでインターネットに触っていた時間がとても短いので、ひょっとしたらインターネット証券会社には見向きもしないのかもしれません。
しかし、最近は結構な高齢の方でも、スマートフォンを器用に使いこなしています。インターネットもスマートフォンも使わない高齢者は、人口としてはかなり少なくなりつつあるでしょう。そうなると、店舗型証券会社が相手をしているお客さんの数は、相当少ないと考えられます。
大手証券会社以外で、店舗を構えて営業を行っている証券会社は、早晩、他の証券会社に買収されるか、それとも廃業するかのいずれかではないでしょうか。どう考えても、明るい未来はあまり浮かんできません。
お客さんの平均年齢が75歳以上!
新規公開株式(IPO)の抽選に参加していると、岡三証券は比較的よく名前を聞くし、主幹事として上場の差配をすることもときどきある準大手の証券会社です。
「岡三オンライン」というネット証券も持っています。
それにしても(おそらく対面中心・店舗型の『岡三証券』だけのデータで、『オンライン』は含まれていないと思いますが)、顧客の平均年齢75歳以上って、そこまで高齢化しているのか、と驚きました。
対面取引とネット取引の手数料の比較や、担当者とのやりとりのめんどくささなどを考えると、そりゃネット証券(SBI証券や楽天証券)にこれから株や投信をはじめる人は行くよね、とは思っていたけれど、これからネットの土俵に乗って、先行している各社に太刀打ちできるはずもなく。
一度、ネット銀行やネット証券の便利さを体験してしまうと、もう、銀行やATMにいちいち振り込みのために行くのはイヤになりますよね。営業時間も限られているし。
その一方で、ネット金融でのセキュリティの問題もあって、どんどん取引のための認証やパスワードが厳格化され、ネット取引も面倒になってきてはいるのです。
ネットでの取引は「スピードが魅力」だったはずなのに、パスワード忘れによる停滞を予防するために、パソコンにパスワードを書いた紙が貼ってある、なんて状況は、なんだかバカバカしくもあるのです。
ただ、店頭型でも、担当者がさまざまな不祥事を起こして顧客の財産をわが物にしようとしたり、不正に流用したりもしていますから、ネットと店頭、どちらもリスクはあるのです。
「お金」が絡めば、人の欲望が何らかの形で犯罪につながってしまいやすい。
とりあえず、時代の流れとしては、もともと店頭での「人脈」的な付き合いがある高齢の超富裕層以外は、みんなネット取引のほうを選ぶようになると思います。
ちなみに、この本のタイトルの「銀行の本店はなぜ豪華すぎるくらいの外観・内装なのか?」という問いについては、こんな答えが書かれています。
本店で働いている人のなかには、収益を生み出さない部門、いわゆる本部に属している人が大勢います。具体的に言えば、人事、総務、企画、コンプライアンス、内部監査、事務、IT、リスク管理、財務、リサーチといったところでしょうか。
もちろん、法人営業とか投資銀行業務、ディーリング・トレーディングのように収益を生み出す部門もあるにはあるのですが、人数で比較すれば、間接部門の業務に従事している人が圧倒的多数を占めています。
では、収益を生んでいない部署で働いている人が大勢いるにもかかわらず、なぜメガバンクの本店はこれほどまでに立派な造りなのでしょうか。
そこには、銀行ビジネスの構造に裏打ちされた明確な理由があります。
実は、本店に籍を置く一部の収益部門が、グループ全体の利益を支えるほどの莫大な収入を叩き出しているのです。
もちろん、地方支店においても大企業の関連会社や工場などを顧客とし、相応の資金需要に応えることで収益を得ています。
しかし、本店の法人営業部や投資銀行部門が「ワンショット」で稼いでくる金額は、文字通り桁が違います。
本店の収益部門が手がけるのは、大企業同士のM&A仲介や、海外での大規模プロジェクトへの資金支援、東京に拠点を持つ大企業への融資など、1回の取引で巨額の利益を生むビジネスが中心です。
こうした数千億円規模のディールを動かす打ち合わせをするのに、地味で質素な応接室は、商談の場としてふさわしくありません。
これから天文学的な数字の契約を交わそうとする局面で相手に「この銀行に任せて大丈夫か?」という一抹の不安を抱かせれば、それは信用の失墜につながりかねません。
つまり、あの圧倒されるほど豪華な本店の建物や応接室は、単なる贅沢ではありません。巨大な富を動かすプロフェッショナルたちが、互いの”信用”を確認し合うために不可欠な、いわば「ビジネスの舞台装置」なのです。
これを読みながら、「でも、実際にやること(契約)は、書類などで条件を確認して、サインするだけなんだから、普通の会議室でやっても『同じこと』なんだよなあ……」と思ったのです。
それこそ、ZOOM経由で画面越しにでも、いまの世の中では問題ないはず。
それでも、商習慣として、大事な契約は対面で、それなりの舞台装置を用意して、というのが現状なのです。
なんだか無駄な装飾で、コスパが悪いような気がするのだけれど、たしかに、何千億円ものプロジェクトの契約を、Tシャツにジーンズ姿の人たちが、スチール製の机の上に置かれた書類にサインするのは、ちょっと想像しにくいですよね。
そういう、伝統的な「見栄」にこだわり、「ハッタリ」が効き、「舞台設定」が気になるのもまた、人間ではあるのです。
銀行は、伝統的な「人脈」みたいなものと、ネット取引などの「合理性」「便利さ」の両方のバランスをとりながら、生き延びていかなければならない。
こういう話を聞くと「豪華な本社ビルの売却」なんていうのは「あたりまえだろ!」「無駄遣いするなよ」と思ってしまいがちなのだけれど、その会社にとっては「大事な舞台の喪失」でもあるんですね。
これから時代が変わっていけば、豪華な本社ビルどころか、店舗そのものがどんどん減っていきそうではありますが。
実際、いまでも銀行の支店は統廃合がどんどん進んでいます。
「いま、銀行は何で稼いでいるのか?」
「メガバンクと地銀(地方銀行)の稼ぎ方はどう違うのか?」
「銀行という業種は、これからの就職先としては有望なのか?」
いろんなことが、かなりわかりやすく書かれている新書です。
30年前にエリートとしてメガバンクに就職した同級生たちのことを思うと、未来なんていうのは、数十年先ですら予測するのは難しいものだなあ、と考えずにはいられません。
当時は、インターネットなんてものが、こんなに世の中を変えるなんて、想像もつかなかった。










