琥珀色の戯言

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【読書感想】令和になっても気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

「気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている」シリーズもついに4巻目を刊行!
チェーン店とつきあい続けること20年!の著者が、新元号令和になっても気がつけば食べていた。が、しかしーー。
令和を迎えてまもなく新型コロナ感染症によるパンデミックとなり、国内で外食が制限された緊急事態。
国民は「いつでもどこでも変わらぬ味」を提供するチェーン店のありがたみを痛感した。
さらにインバウンド増加や「寿司テロ」などSNSでの迷惑動画、物価高騰、コンプライアンス・・・・・・。
新時代の悩みを超えて進化するチェーン店。その魅力を追い続けた、いつもの席から記す外食文化人類学。

シリーズ最新刊に収められているのは、以下の誰もがきっと食べたことのある定番のチェーン店からニュータイプの店まで!
ガスト、焼肉ライク、しゃぶ葉、ドムドムハンバーガー、鳥貴族、カレーは飲み物。、アンナミラーズ、8番らーめん、ブロンコビリー、魚松、スシロー、なか卯、ロッテリア、らあめん花月嵐、かるびのとりこ、新横浜ラーメン博物館、 山本のハンバーグ、おにぎり ぼんご、宇奈とと、エルトリート、 鰻の成瀬、 とんかつ丸七、 焼肉キャンプ、廻転鮨 銀座おのでら本店、しんぱち食堂、ファーストキッチン、PANDA EXPRESS、鶏味座、海底撈火鍋、宝島24、すしざんまい、ロイヤルホスト、藍屋、千成ラーメン、OUTBACK


このシリーズも、4冊目なんですね。
最初の『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』の単行本が上梓されたのが2014年の5月ですから、もう12年前になるのか……

fujipon.hatenadiary.com

もとになった連載は2007年からはじまったそうですから、この20年間の「外食チェーン店の歴史や栄枯盛衰」を記録しているシリーズ、ともいえるのです。

思い返すと、僕がまだ20代だった、2000年前後って、『ファミレス』ことファミリーレストランが本当にたくさんありました。
九州にはたくさんある『ジョイフル』という価格が安めのファミレスで「ジョイ勉」とか言って、みんなで勉強していた(つもりが、いつのまにかサボって雑談していた)ものでした。
「行くところに迷ったらファミレス」って感じだったものなあ。
メニューはたくさんあるし、ドリンクバーで長時間粘れるし。

時代の変化とともに、ファミレスの数は減り、営業時間も短くなっていきました。
けっこう値段も高くなったし、「ファミリー」といっても、少子化、核家族化が進み、回転ずしやサイゼリアが「ファミレス代わり」になっていったのです。

この『令和になっても』では、新型コロナ禍での外食チェーン店の状況も書かれていて、コロナは外食産業にも、大きな構造的な変化をもたらしたことが伝わってきます。
テイクアウトできる店が増えて、便利になった一方で、多くの店が大きなダメージを受けました。
補助金問題でバッシングを受けた業種でもあったのです。


「新型コロナ下の飲食チェーン店」の令和2年6月より。

 世界はまだウィルスから解き放たれてはいないが、日常が再び動きはじめた。久しぶりに駅前に行くと、知り合いの店が閉店していた。自粛期間中、誰もどこにも行かず家でメシを食べていたのだから当然だ。
 飲食店を経営している友人は軒並み苦境に立たされている。無責任に頑張って欲しいと言いながら、保健所に送られる犬を見過ごすように手助けもせず見て見ぬふりをするしかない罪悪感はどうしたものか。
 チェーン展開する店とてこの自粛期間に姿を消してしまった店は少なくない。大きなところではロイヤルホストや天丼てんやを運営するロイヤルホールディングスが翌年までに70店舗を閉店することが決まったという。
 これを皮切りにファミレスの大量閉店が起こる、なんてよからぬ噂が聞こえてきた途端に、西日本ファミレスの雄・ジョイフルが7月以降に全国200店閉店を決定した。
 さらにうどんすきの名店、東京美々卯も5月20日で日本橋、新宿など関東の6店舗を閉店した。行っても半年に1回程度。だが、実に惜しい。両親が上京してきた際に連れて行くと喜んだなぁとしみじみしつつ、最後に行ったのはいつだったっけと考えると、行っておけばよかったなぁと後悔ばかりがもたげてくる。本丸の大阪は残ったようだが、関西のうどん居酒屋フレンドリーの方が、約半分の店が閉店になるとか。
 改めて笑えない事態になっている。ポンコツのベテランが引退を宣言すると必要だと惜しみ、憎まれっ子も死ぬとわかると「いい人だったね」と嘆くように、閉店が決まると人は「ナゼ」と悲しみ行列を作る。いや、もうそりゃナゼってあんたが行かないから潰れるのだが、気付くのはいつも結果が出てから。


自分で好きなものを好きなだけ取って食べる「ブッフェスタイル」の店が、コロナ禍で大きなダメージを受けたという話も出てきます。牛丼店や「味集中システム」で隣の席と「隔離」されているラーメンの『一蘭』などはダメージがまだ少なかったようだ、とも。

仕事終わりの一杯、みたいな「付き合い」が価値観の変化で減ったこともあり、居酒屋はコロナ禍以降、お客さんがかなり減っているようです。
一度「職場のつきあいの義務感」みたいなものがリセットされると、なくても別に構わない、むしろ無い方が気楽だ、という「本音」が表面化してきたのかもしれません。

僕自身は、新型コロナ下でも仕事が医療関係なのでコロナ禍でもいつも通りに出勤し、感染予防対策をしながら働いていたのですが、コロナ禍最盛期に牛丼の『松屋』にテイクアウトをネット注文して取りに行った際、店内がものすごい混雑で予約時間がまったく機能しておらず、大勢の人が店内で待って大混雑していたのを思い出します。
店員さんたちも客も殺気立っていました。

非常事態では、松屋もこんなに殺伐とした場所になってしまう。

こんなに人がいっぱいだと、感染予防も何も関係ない。有名な『ラーメン二郎』はコロナ禍でも行列していたそうですし。
実際のところ、いやなことをやらないため、他者を責めるために「感染予防」を建前にし、やりたいことには「生きるためには必要」と、感染予防を一時停止していたような気もするのです。

ある程度収束してみれば、「なんであのときは、あんな『県外ナンバーの車の排除』とかまでやっていたんだろう?」とか思いますよね。
人が集団になったときの行動というのは、いつの時代もそんなに変わらないのかもしれません。


この本のなかで、著者が先日亡くなられた「食」に関するエッセイのレジェンド、東海林さだおさんと『鳥貴族』で対談したときの話が紹介されています。
東海林さんはそれまで『鳥貴族』に行ったことがなく、ご本人が対談場所として希望されたのだとか。

 そんな『鳥貴族』にも食べ放題・飲み放題のコースがあることにも驚いた。2時間3900円(税込)。人気メニューが食べ放題飲み放題。ただし4名以上で予約が必要なこのプランの名前がすごい。「トリキ晩餐会」。どこまでも高貴。どこまでも貴族。どんな美食を尽くそうとも、最後の晩餐は3900円あればいい。そう思えるほど、この店は隅々から”いい仕事”の雰囲気が漂う。
 だが、それは若輩者である筆者の独り善がりかもしれない。グルメエッセイの達人であるショージ先生は何を想う。対談後、ドキドキしながら先生に尋ねてみた。
「先生、トリキはお気に召したでしょうか?」
 先生はおもむろに串からししとうを抜くと、居合いのような感想で斬りつける。
「……おしぼりだね。これだけ厚い生地を使う心意気。いい店だ」
 初手で勝負がついていた。若輩グルメエッセイストの説明など蛇足。こちらが晒されていたのだ。神の視点に。そして、それを満足させる貴族のプライドに。


東海林さだおさんが亡くなられたことは、大きく報じられましたし、僕もずっと、それこそ、いつから読んでいるのかわからないくらい『丸かじり』シリーズを読んできました。
単行本を見つけては買い、文庫化されているのを見つけては読み。
何か読みたいんだけど、重い「物語」や社会問題を扱った本を読むほどの心の余裕がないときに、東海林さだおさんの本は、いつも僕を「ひとやすみ」させてくれたのです。

この『鳥貴族』への東海林さんの言葉、「独自の視点、なのか、本当におしぼりが気になったのか、いや、ひょっとして、料理に関してはコメントしづらいと感じたから話をずらしたのだろうか……」などと僕は読みながら考えてしまいました。
あれだけ「食」のエッセイを書いてきたのに、「食えない人」だなあ、なんて思いつつ。


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