- 作者: 亀井卓也
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/06/15
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 亀井卓也
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/06/21
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内容(「BOOK」データベースより)
本書は、話題の5G(第5世代移動通信システム)について、そのしくみから生活やビジネスにあたえるインパクトまでをわかりやすく解説しました。先端テクノロジーに強い野村総合研究所のコンサルタントが執筆。国内外の最新情報を盛り込んでいます。4Gから5Gへの変化は、「スマホが便利になる」だけにとどまりません。本書では、コンテンツ業界をはじめ、モビリティ、キャッシュレス決済、製造現場、医療、エネルギー産業など、5Gが広げるビジネスの可能性についてくわしく見ていきます。通信やテクノロジーの専門用語は極力かみくだいて説明しています。ICTやシステム担当者はもちろん、経営層や一般のビジネスパーソンも押さえておきたい1冊です。
「5G(第5世代移動通信システム)」という言葉を耳にする機会が、だいぶ増えてきました。
僕自身は、正直なところ、「通信速度が速くなって、大量の通信ができるようになるってことだけど、そんなに大騒ぎするようなことなのだろうか?」と疑問でもあったのです。
そもそも、「5G」とは何なのか?
移動通信システムは、キラーサービスとともに進化してきました。「1G」は音声通話、「2G」はメールやウェブ、「3G」はプラットフォームとサービス、「4G」は大容量コンテンツ、といったように。
ドコモのiモードやEZwebといった携帯電話のプラットフォームサービスが開始されたのは2Gの時代で、3Gが開始されたのが2001年。その年にドコモの「FOMA」が開始され、iモードやEZwebなどの携帯電話上でのコンテンツサービスが普及していきました。
2008年にソフトバンクから出たiPhone 3Gは、日本で発売された初めてのiPhoneで、これによって、日本でもスマートフォンが一気に広まっていったのです。
スマートフォンで多量のデータを扱うには、3Gの通信速度・容量が必要であり、動画を快適に見ることができるようになるために、4G(現在の一般的な通信方式)に置き換えられていったのです。
ここで僕はちょっと立ち止まってしまいます。そりゃ、スマートフォンで動画がもっとスムースに再生できたり、快適にゲームができたりすれば嬉しいけれど、それは4Gのマイナーチェンジくらいで事足りるのではないか、と。
今でも、電波が入りにくい場所や地域というのはあるけれど、「5G」は、それを改善するためのものではないみたいだし。
そもそも、「5G」で、何がそんなに変わるのだろう?
この本は、単なる「5G礼賛」ではなくて、そういう疑問に対しても言及されているのです。
1Gの携帯電話は外出先でも電話ができるという便益をもたらしましたが、消費者は次第により高い通話品質を求めるようになり、デジタル方式の2Gがそれを解決しました。
2Gはデータ通信サービスが進化し、iモードやEZwebといったプラットフォームが生まれました。消費者はプラットフォーム上のサービス利用の快適性を求め、3Gがそれを解決しました。
3Gでは消費者はスマートフォン上でのリッチコンテンツ利用を求め、4Gがそれを解決しました。つまり、モバイルサービスの革新が消費者の通信需要を高め、通信インフラが革新されてさらにそれに応えてきたというのが、移動通信システムの歴史なのです。
それを踏まえて現在のわれわれの生活を振り返ると、通信がサービス利用時の制約になるようなシチュエーションはあまり思いつかないのではないでしょうか。もちろん、特定の場所や特定の時間帯に通信が遅くなるという状況は誰しも経験があるでしょうが、本質的には、消費者の通信需要を通信インフラの提供力が超えてしまっているという状況にあるのだと考えられます。
携帯電話をスマートフォンに変更するケースや、スマートフォンに加えてタブレットなどマルチデバイス利用をするケースが増えているので、最初に述べた通り通信量の総量は年々増加し、5Gへの革新が求められるわけです。しかし、個々の消費者が既存のサービスを利用する際の通信需要という観点では、4Gで困ることはそれほどなく、消費者が5Gを求める理由は薄くなります。消費者の通信需要に応えるべく革新された4Gまでと、5Gはこの点が異なります。
話を戻すと、消費者の通信需要に応えるという発想では、5Gは普及しない可能性があるということです。つまり、5Gの活用可能性を追求する必要があるのです。
5Gで扱える通信量が増え、通信速度が上がること、双方向の通信速度もアップすることから、自動運転車や遠隔手術などはかなり機能向上が見込めるそうなのですが、その一方で、利用者の個人情報はどんどん吸い上げられていくことになります。
さらに、モビリティと結びついたパーソナライズ・ダイナミックDOOH(Digital out of Home:デジタル屋外広告)は、5Gの技術要件を存分に活かしたプロモーションといえるでしょう。
JR東日本の「トレインチャンネル」のように、電車・地下鉄・バスに設置された広告は、周辺環境も、その視聴者も短期間で次々と変化していきます。5Gの活用により、画面周辺にいる視聴者の情報や、その車両が次に停まる駅の周辺店舗情報および空席情報を活用することで、最適な広告を配信することが可能となるでしょう。
たとえば夜の18時ごろ、仕事帰りの男性が多く乗車する車両に、次の停車駅のすぐそばに新しくできた居酒屋のリアルタイムな空き席数を広告をして配信すれば、通常の静的な広告よりも高い広告効果が得られるでしょう。
これからの通信事業者は、通信料金で稼ぐだけではなくて、企業向けに顧客のデータを提供することによって利益を得ていくと考えられています。
日常生活の利便性を増す、というメリットはあるのだけれど、この本でその具体例をみていくと、自分が何かをしようとするとき、すべてスマートフォンに先回りされて、あれをやれ、これをやれ、と縛られてしまう気がしてくるのです。
もちろん、個人情報保護については配慮されるだろうとは思うのですが、それでも、こんなふうに「自分に向けられた宣伝・広告の洪水」を浴びせられるのが「5G社会」であるのならば、僕はうんざりしてしまいそうです。
僕よりもっと若い人は、中国の人たちが自分の「信用スコア」を上げることに夢中になっているように、そういう世界にあっさり馴染んでしまうのかもしれないけれど。
5Gは、日常生活を便利に、快適にしていく。
おそらく、より安全な社会にもなっていくはずです。
でも、人々がそれを幸福だと感じるかどうかは、まだわからない。
仕事帰りに寄る居酒屋くらい、自分で選んでも良いじゃないですか。……たしかに「店選び」って、めんどうではあるのだけどさ。
- 作者: 藤井保文,尾原和啓
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/03/23
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- 作者: 近藤大介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/07/19
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- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/04/17
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