SNS変遷史 「いいね! 」でつながる社会のゆくえ (イースト新書)
- 作者: 天野彬
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2019/10/10
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
SNS変遷史 「いいね!」でつながる社会のゆくえ (イースト新書)
- 作者: 天野彬
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2019/10/24
- メディア: Kindle版
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内容紹介
2004年のmixiからInstagram、TikTokまで、たった15年!
評価も承認欲求も可視化するSNSが、人間関係を一変させた!
mixi、facebook、Twitter、Instagram、LINE、Snapchat、TikTok……。 誕生から、わずか15年あまり。SNSは人間関係を、社会のあり様を、大きく変えた。 情報との出会いは「ググる」から「#タグる(タグ+手繰る)」へ。 コミュニケーションは「テキスト」から「ビジュアル」へ。 ツールの入れ替わりの要因を探るとともに、その裏側にあるユーザーの「承認欲求」と「シェアの心理」の変遷を追う!◎「最近のSNSには、なんだかついていけない」と思わせる原因とは?
◎ブログや2ちゃんねるが生んだネットカルチャーは、今のSNSにも影響を及ぼしている?
◎「SNS投稿=承認欲求」という単純な図式では、もはやユーザーマインドは理解できない?
◎なぜ若者たちは、InstagramやTikTokにハマっていくのか?
◎仮想通貨、VR、AR……。進化し続けるSNSは、これからどこに向かうのか?気鋭の若手メディア研究者が、生活に密接したソーシャル・メディアの変遷と展望を読み解く!
SNSって、ついこの間はじまったような気がするのに、いつのまにか「歴史的変遷」を語れるくらいの時間が経ってしまったんだな……と感慨深いものがありました。
Twitterで、「tsudaる」とか、「〇〇なう」とかやっていたのは、もう遠い昔のような気がします。
一つ印象的なデータを添えよう。さまざまな生活者向けのデバイスやサービスの普及スピードを比較するために、ユーザー5000万人を獲得するまでにかかった時間をまとめたレポートがある(Steemit社作成)。それによれば、自動車は62年、電話は50年、クレジットカードは28年、テレビは22年、コンピュータは14年、携帯電話は12年、インターネットは7年、ユーチューブは4年、フェイスブックは3年、ツイッターは2年ということになる。
テクノロジーの普及の速度が、加速度的に上がっていることがわかる──これが世の中の変化が速いなあと感じる要因である──し、フェイスブックやツイッターといったSNSが、いかに圧倒的な速度で普及していったかが見て取れる。
登場から十数年あまりで、SNSは私たちにとっての、日々の情報行動のゲートウェイとして、不動の位置を占めるようになった。
SNSをめぐってはさまざまな解釈が存在するが、ここでは「利用者がアカウントを開設・運用し、テキストや写真、動画などをシェアすることができる、独自の圏域を持つウェブサービスやアプリケーション(アプリ)。特に、アカウントをフォローして継続的にその情報発信をチェックし、つながりを維持できるようなもの」と定義しておこう。ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどをイメージしてほしい。
著者は、パソコン通信や『2ちゃんねる』から、ネットを通じてのユーザー同士のコミュニケーションの歴史を追っています。
日本でmixi(ミクシィ)が生まれたのは2004年のことでした。
そういえば、mixiって最初は招待制で、誰かに招待してもらえないと使えなかったんですよね。
僕もしばらく、「誰か招待してくれないかなー」と、mixiの流行を眺めていた記憶があります。
mixiは、「友達相手の発言」という意識がTwitterよりずっと強かった気がするのですが、「もっと広い世界に向けて発言してみたい」というSNSだったはずのTwitterが、いつのまにか「フォロー外から失礼します」という断りが求められるようになりました。
Twitterは、どこから矢が飛んでくるかわからない怖さから敬遠されるようになり、多くの人が仲間内のコミュニケ―ションをLINEに移行したり、と「再囲い込み」が起こってきた印象もあるのです。
知らない人とつながる、ということにはメリットもあるのですが、いまの世の中では、リスクのほうが高いようにも思われます。
こういうのは、「世界とつながる経験」によって、個人がはじめて実感したことでもあるのでしょう。
筆者は、2000年代最高のイノベーションの一つは「いいね!」だと思っている。そう、フェイスブックの親指を突き立てたマーク(”thumbs up"のマーク)で、シェアされたものへのリアクションでありリワードである。
イノベーションという言葉は「技術革新」という訳語を持っているが、ここでは「社会や人々の生活に不可逆な変化をもたらす価値創造」のこととしたい。主語はテクノロジーや経済効果ではなくあくまでも私たちにあり、それは不可逆な、つまりそれがなかったような状況に戻るとは考えにくいポジティブな変化と価値を生み出すものである。その意味で、私たちは、もう「いいね!」なき世界には帰れないのだ。
「いいね!」をめぐっては、承認欲求の問題を指摘する人もいる。「いいね!」欲しさに行動するのは本末転倒ではないか。また非道徳的なことや過激なことをするよう注目を浴びたがる若い人をけしかけているのではないかと。
それらの指摘には一理あるし考慮すべき懸念が一切ないとはまったく思っていないが、これをきっかけに多くのユーザーのシェアが促されるようになったということ、人々の支持が可視化されるようになったこと、それまでであればなかったであろう好意的でポジティブなフィードバックがたくさん生まれたことなどは疑いえない。
わざわざありがとう、すごいねと言うほどでもないけど、何かリアクションしたい。そういったものが「いいね!」によって評価されている。これらはコミュニケーションの価値と言っていいはずだ。
なぜそこまで普及し、一般化していったのだろうか。最大の要因は、「いいね!」は画面をタップするだけでいい最も手軽な報酬/承認装置であり、価値を付加してくれるものであるということだ。まずはその人に届いた実感が生まれるし、もらうと嬉しいのは、それによって何か価値あることができた気がするためだ。
やりとりとしても手軽で楽しい。コメントで「その写真いいね!」とわざわざ伝えるような言葉の重みもない。SNSではタイムライン上でたくさんの投稿を見るので、コミュニケーションのための負荷を減らすことでたくさんの交流が生まれる。これぞ、ユーザーをよりSNSにハマらせるための最高の仕掛けだ。
「いいね!」という仕組みが、そんなに凄いものだという意識は僕にはなかったのだけれど、それは、SNSにおける、大きなイノベーションだったのです。
昔からブログをやってきた人間としては、コメント欄への書き込みには、書き込むほうも、書き込まれたほうも、「重い」感じがあったんですよ。「何か返事をするべきなんだろうけれど、『いつも見てます!』みたいな、お決まりのコメントに、『ありがとう』と定型文を返すことに、意味があるのだろうか」とか。
「いいね!」であれば、気軽にボタンを押せるし、つけられた側も、その数で自分の承認欲求が満たされ、リアクションの負担もありません。
ただし、最近は「政治家や芸能人がフェイスブックのこんな投稿に「いいね!」をつけていた!」と問題視されることもあるのです。SNSの普及にともない、「いいね!」も初期の軽やかさは失われてきた、と言えそうです。
SNSは多くの人に使われるようになってきましたが、それぞれが、より幅広いサービスを取り込もうとしていくなかで、、SNSの「同質化」が起こってきているのではないかと著者は指摘しています。
SNSの歴史をこれまで振り返ってきたうえで、いまの時点から見れば、サービスごとの大きな差はなくなってきていないだろうか。テキストやビジュアルというツールによる対立軸もほぼ意味をなさなくなってきた。どれでも同じようなことができるからだ。例えば、ツイッターも動画での発信はできるし、リツイートを写真や動画で返せるようにもなっている。
表現の幅が広がっているとも言えるし、場ごとの差があまりなくなってきているとも言える。うまくいったものは、サービス間ですぐに模倣されるためでもある。
これは、SNSの世界は飽和しつつある──ということを意味しているだろうか? 大方出揃ってしまったと。
ただ、フェイスブックは今後インスタグラムなどでパブリックに公開されている画像のハッシュタグを使い、画像認識の向上に取り組み、今年からそれを動画にも活用する方針を公表している。これまで6500万の動画のハッシュタグをつかい、1万ものアクションが認識できるようになったらしい。どうがもタグる時代になるなどの変化は訪れる。
また筆者が注目しているのは、ソーシャルとゲームのつながりだ。グーグルのSTADIAなど、ゲームの実況も簡単にユーチューブで配信できるようになる。先述したようなミラティブや、海外ではTwitchなどもユーザー数を増やしている。全世界で登録ユーザー数が2億人を突破したFortniteのような怪物級タイトルも含め、SNSとはまた異なった位相でのソーシャルなつながりが私たちの可処分時間を奪い合う構図となっている。
こうした動向は、コミュニケーションにとどまらず、SNSがコマースやコンテンツの領域と接合していくことを意味しているだろう。インスタグラムはショッピングとも連携しているし、今後はそういった「買い方」がより普及するはずだ。
SNSも維持していくためには、収益化しなければならず、結果的に「広告」や「ものを売る仕組み」が組み込まれていくことになっていくのでしょう。
めんどくさいな、と思うことも多いのですが、それでも、「いいね!」を貰えない世界で生きていくのは物足りなくなってしまっているのです。
- 作者: 藤井保文,尾原和啓
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