琥珀色の戯言

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【読書感想】中国人は見ている。 ☆☆☆☆

中国人は見ている。 (日経プレミアシリーズ)

中国人は見ている。 (日経プレミアシリーズ)


Kindle版もあります。

中国人は見ている。

中国人は見ている。

内容(「BOOK」データベースより)
日本人の「あたりまえ」が、中国人にはこれほど異様に映る!飲み会で豹変する上司にいら立ち、会議後の同僚の「ある行為」に感心。大阪に親しみを覚え、寿司店の「まかない」に衝撃を受ける―。日本を訪れた中国人は、この国の何に戸惑い、何に感動するのか。日中の異文化ギャップを多くのエピソードから探る。


 あらためて考えてみると、この新書のタイトル『中国人は見ている。』というのは、こちら側からすると「日本人は見られている。」なんですよね。
 中国が経済的に急成長を遂げ、世界の中で重きをなしてくるまでの日本人は「アメリカやヨーロッパから、どう見られているのか」をずっと気にしていたのです。
 日本の慣習について、「そんなのは世界標準ではない」と言われるときの「世界」は、常に西欧だった。
 ブラッドショップでの「爆買い」や「団体ツアー」などで、「西欧人から笑われている日本人」の話を、僕も子どもの頃、何度もメディアを通じて見たり聞いたりしていました。

 この本を読むと、日本と中国の文化のギャップとともに、「爆買い」「トイレをきれいに使えない」などというイメージは、もう過去のものになっていることを実感させられます。
 「先進国」から白眼視されるという経験は、多くの日本人が海外旅行をするようになった時期に経験したことでもあるのです。

 中国人は、日本であまり中華料理的に行きたがらないそうです。
 僕などは、海外に3日くらいいると、日本料理店を探してしまうのですが、日本には「中華料理」の店がたくさんあるのに、本場の人たちにはあまり評判がよろしくないみたいです。

 日本には数えきれないほどの中華料理店がある。そし中華料理が嫌いだという日本人はあまりいない。だからなのか、日本人が日本在住の中国人を食事に誘う際、「中華料理にしましょうか」と声をかけることは多い。中国人に「寿司などの生ものは大丈夫ですか?」と聞くことはあっても、「中華料理は大丈夫ですか?」と聞く日本人はまずいない。
 だが、多くの在日中国人に取材すると、「日本の中華料理はあまりおいしくない」と答えることが多くて驚かされる。
 前述の中国人女性は断言する
「正直いって”日本の中華”は中国人にとって、あまりおいしいと感じられません。東京都内に住む中国人女子の集まりでは、イタリアンなどを選択することが多いですね。日本のイタリアンはおいしいし、おしゃれ。シェアしやすいし、お値段も手ごろ。日本の中華は高級店を除いてゆっくりできないところが多いし、味のわりに値段が高いですから。シンプルな野菜炒めが1000円以上とか、信じられない。
 だから、日本人の皆さんにお願いです。私が中国人だからと気を使って、どうか中華料理に誘わないでください」。そう話して笑った。
 他の中国人からも”日本風中華”への不満の声が続々と噴出する。これまで「日本の中華は好きですか」と改めて質問しなかったから、日本人が知らなかっただけのようなのである。


 「日本の中華は片栗粉を使い過ぎです。ドロドロになったあんかけは、どうしても中国人の口には合いません。あの固まった片栗粉を見ただけで、もう……」
 なんていう声もあるのです。
 僕は、あの「片栗粉を使い過ぎ」なのが「中華料理」だと思い込んでいたので、意外でした。まあ、海外の「日本料理」でも「これはちょっと……」みたいなものもありますし。

 生卵が苦手で、ラーメンは豚骨好き、というような、中国人の食の好みについても紹介されています。

 中国人にとって日本人とのメールのやりとりは、まさに「推測+期待+テレパシー」の連続だ。日本語でメールを書くだけでも大変だが、難しいのは業務内容に関しての返信ではなく、その前後につけられている日本語特有の表現をどう解釈するかだ。
 北京の日系企業に勤務する30代の魏小燕氏は、東京本社から送られてくる日本人のメールにいつも困惑する。最も苦手なのは「お手すきの際にご返信」という一文だ。
 これまで何十回も受け取った。日本語の意味はもちろんわかるが、「お手すき」と書かれた場合、果たしてどのくらいで返信すべきなのか、メールを書いた日本人は皆同じ感覚なのか、よくわからないという。
「今週は忙しいから何日も返信しなくてもいいのか、または今日中に返信しなくてもいいという程度なのか、わかりにくい。日本語がわかる中国人の上司に聞くと、『明日返事するくらいでもいいのでは?』といわれましたが、そのくらいが”正解”ですか?」
 魏氏に聞かれたので「正確にはわからないが、すごく急いで
わけではないと思います」と答えた。私自分自身はせっかちなので、このフレーズは使わないが、深く考えず、つい習慣でこうした表現を使う日本人もいる。


 僕は日本人なのですが、この「お手すきのときに」には、同じように悩まされます。結局のところ、「メールの内容を読んで、緊急度はこちらで判断してくれ(でも、返信は必ず欲しい)」ということなのでしょうけど、すぐさま返信するのもなんだか前のめりになりすぎているような気もするし、1週間は待たせすぎな気がするし……たしかに「翌日に返信」くらいが、波風が立たないのではないかと思われます。
 正直言うと、「具体的な締切を指定してもらえたほうが対応しやすい」のですが、向こうは向こうで気を使ってくれているのもわかりますし……
 これって、文化の違い、というより、今まで、日本人もずっと思っていたけれど、言えなかっただけのことなのかもしれませんね。


 この本を読んでいると、中国の劇的な変化と、それがまだ多くの日本人には認知されていないことを思い知らされます。

 私はこれまで中国のトイレ事情について何度も取材してきたが、中国人の家庭のトイレはとてもきれいだ。一方、公共のトイレは不潔、古い、水が流れない、臭いが染みついているなどの理由から敬遠され、長年改善されずにいた。
 ところが、北京オリンピック(2008年)を契機に、トイレは少しずつ改善されていった。上海で最初に「変化の兆し」に気づいたのは2014~2015年ころ。街中にある公衆トイレが改装されていたので覗いてみたところ、各個室もきれいになっていた。
 以降、怒涛のスピードできれいになっていくのだが、中国のトイレが本格的に変わったきっかけは、2013年に習近平国家主席が就任したことによる。
 就任直後から「トイレ」について言及し、2015年には「2017年までに全国の5万7000ヵ所に公衆トイレを新設、改装する」と宣言。2017年末には計画を上回るスピードで新設、改装が行われ、これは「トイレ革命」といわれた。
 習主席がトイレにこだわるのは、国家全体で生活の質を上げるためだ。中国は文化面でも先進国の仲間入りを果たそうとしており、社会インフラの整備にも取り組んでいる。
 こうした改革により、2017年ころから、少なくとも大都市の空港のトイレは「日本以上にきれいだ」と実感するようになった。公共の場所やショッピングセンターなどでもトイレットペーパーが設置され、水がきちんと流れるようになった。
 内陸部の農村に行けばまだ旧態依然としたところはあるが、10年前とは全然違う。日本人が過去のイメージのまま中国のトイレに入ると、感動するかもしれない。
 だが、上海に住む友人の娘は、中国生まれ、中国育ちの中国人でありながら、「中国のトイレ」が怖いという。友人の娘は11歳。インターナショナルスクールの小学部に通っている。学校のトイレはきれいだが、外出するときは絶対トイレに行かないという。
「娘さんが幼いころにはすでに中国のトイレはきれいだったんじゃない?」と尋ねたが、幼いころに訪れた観光地の寺のトイレがあまりにも汚くて、お気に入りのスカートのすそを汚してしまった。それがトラウマになってしまったのだそうだ。
 どうしてもトイレに行きたいときには、出先からいちばん近い高級ホテルまで急ぐという。
 まるで中国に慣れない外国人女性のような行動だが、中国で生まれ育った人でも、汚いトイレのイメージが抜けきらないとは意外だった。


 「汚いトイレ」がトラウマになるというのは、わかるなあ……うちの長男も、山登りをしたときの途中のトイレの惨状が、いまだに忘れられないと言っています。
 それがトラウマになるというのは、ふだんは綺麗なトイレを使っている、ということでもあるんですよね。
 中国のトイレといえば、仕切りもなくて、用を足しているときに隣の人の顔がみえる「ニーハオトイレ」などと言われていましたが、それはもう、過去の話になってきているのです。
 中国は、急速に「清潔に」なっています。
 もちろん、都会と田舎のギャップは、まだまだ大きいのですが。

 少し前の中国を「知っている」つもりの人にこそ、読んでみてほしいと思います。経済的な発展にともなう中国の変化は、この半世紀に、日本が歩んできた道なので。


日本の「中国人」社会

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なぜ中国人は財布を持たないのか

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