FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
Kindle版もあります。
FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/01/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
内容紹介
ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。
世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。世界で100万部の大ベストセラー! 40カ国で発行予定の話題作、待望の日本上陸
◆賢い人ほど、世界についてとんでもない勘違いをしている
本書では世界の基本的な事実にまつわる13問のクイズを紹介している。たとえば、こんな質問だ。
質問 世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%質問 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%答えは本書にある。どの質問も、大半の人は正解率が3分の1以下で、ランダムに答えるチンパンジーよりも正解できない。しかも、専門家、学歴が高い人、社会的な地位がある人ほど正解率が低い。
その理由は、10の本能が引き起こす思い込みにとらわれてしまっているからだ。
この本を読んで、いまの世界を「ある程度は知っているつもりで、全然知らなかった」ことに愕然とさせられました。
日本で半世紀近く生きてきて、ここ数十年は経済は停滞しているし、人口もピークを過ぎて減りつつある。
でも、世界にはその日の食べ物に困っている人が大勢いるし、格差はどんどん広がっていっている。
テロが蔓延し、危険が迫ってきていて、世界は怖いところになっている。
多くの「リベラル」な人たち、あるいは「先進国の良心的な人々」は、世界の現状や行き先に不安をかかえているのです。
それに対して、著者は、さまざまなデータを駆使して、彼らの不安が杞憂であることを証明しようとしています。
あなたは、次のような先入観を持っていないだろうか。
「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう」
少なくとも西洋諸国においてはそれがメディアでよく聞く話だし、人々に染みついた考え方なのではないか。わたしはこれを「ドラマチックすぎる世界の見方」と呼んでいる。精神衛生上よくないし、そもそも正しくない。
実際、世界の大部分の人は中間所得層に属している。わたしたちがイメージする「中流層」とは違うかもしれないが、極度の貧困状態とはかけ離れている。女の子も学校に行くし、子供はワクチンを接種するし、女性ひとりあたりの子供の数は2人だ。休みには海外へ行く。もちろん難民としてではなく、観光客として。
時を重ねるごとに少しずつ、世界は良くなっている。何もかもが毎年改善するわけではないし、課題は山積みだ。だが、人類が大いなる進歩を遂げたのは間違いない。これが、「事実に基づく世界の見方」だ。
「人々は確実に豊かになり、世界は安全になってきている。もちろん、まだ完璧とは言えないけれど」
これが、世界の現実なのです。
さまざまなトラブルや戦争、不幸な事故などはあるけれど、全体としては、世界を良くしようとする努力は、それなりに報われているのです。
にもかかわらず、現実よりもずっと、「世界には、もっと不幸な人たちがいるのだから」と思い込まれがちなんですね。
スウェーデンとアメリカの人たちに聞いてみた。
「世界の人口の何%が、低所得国に住んでいると思いますか?」
この質問で最も多かった答えは「50%以上」で、平均回答は59%だった。
正しい答えは「9%」だ。低所得国に住んでいるのは、世界の人口の9%しかいない。そしてついさっき、低所得国の暮らしは人々が想像するほど酷くないことを証明したばかりだ。彼らも色々な面で苦しい暮らしをしているかもしれない。しかし、地球上で最も過酷な国であるアフガニスタン、ソマリア、中央アフリカ共和国ほどひどくはない。
まとめると、ほとんどの人が想像するほど低所得国の暮らしは苦しくないし、人口も多くはない。世界が分断され、大半の人が惨めで困窮した生活を送っているというのは幻想でしかない。はっきり言って、完全な勘違いだ。
暮らしが良くなるにつれ、悪事や災いに対する監視の目も厳しくなった。昔に比べたら大きな進歩だ。しかし監視の目が厳しくなったことで、悪いニュースがより目につくようになり、皮肉なことに「世界は全然進歩していない」と思う人が増えてしまった。
活動家や利益団体による印象操作も問題だ。なんらかの指標が一時的に悪化しただけで、「もうおしまいだ!」と叫ぶ人たちが後を絶たない。長期的に見ると、その指標は改善しているのに、「最悪のシナリオが待っている」と煽り立ててしまう。
例をあげよう。1990年以降、アメリカの犯罪発生率は減り続けている。1990年には1450万件の犯罪が起きたが、2016年には950万件に減った。しかし、どれだけ犯罪件数が減ろうと、ショッキングな事件は毎年のように起こり、メディアはそれを大々的に報道する。
その結果どうなったか。1990年以降のほとんどの年において、「犯罪は増えていると思うか、減っていると思うか?」という質問に対し、「増えている」と答える人が大半を占めた。多くの人が「世界はどんどん悪くなっている」と錯覚するのも無理はない。
いま起きている悪い出来事に人々の目を絶え間なく惹きつけるのがニュースというものだが、悪い出来事ばかり目にしていれば、誰でも悲観的になる。加えて、思い出や歴史は美化されやすい。だからみんな、1年前にも、5年前にも、50年前にも、いま以上に悪い出来事が起きたことを忘れてしまう。
「世界はどんどん悪くなっている」と考えれば不安になり、希望も失いがちになる。でも、それは思い込みにすぎない。
この本を読むと、自分の視野の狭さを考えずにはいられなくなるのです。
その一方で、こうして、世界がどんどん豊かになっていくなかで、経済的な停滞期が続き、高度成長期のような「右肩上がりの時代」が遠い昔になってしまった日本で生活していると、どうしても、「相対的に自分たちが貧しくなってしまった感じ」が拭えない。
いまの日本の制度がそんなにすぐれているのか、と問われたら、国内での格差は広がっているし、問題点はたくさんありそうなのですが。
そういえば、僕が子供の頃は、大人たちに「お前は日本に生まれて恵まれているよ」と何度も言われた記憶があります。
いまの大人たちは、子供にそんなふうに言うことが、あるのだろうか。
仮に言ったとしても、「逃げ切れる世代は良いだろうけどね……」と反発されるだけかもしれません。
著者は、政治システムと経済について、こう述べています。
炎上覚悟で言わせてもらおう。わたしはもちろん、国家を運営する手法として自由な民主主義がいちばん優れていると心から信じている。でもそう信じるあまり、民主主義が、平和や社会の進歩や健康の改善や経済成長といった、いろいろないいことをもたらすと思い込んでしまう人は多い。民主主義でなければ、そういった恩恵を受けられないと勘違いしてしまう人もいる。でも、聞きたくないかもしれないが、ひとこと言わせてほしい。証拠を見れば、このような考え方は間違っている。
急激な経済発展と社会的進歩を遂げた国のほとんどは、民主主義ではない。韓国は(産油国以外で)世界のどの国よりも急速にレベル1からレベル3に進歩したが、ずっと軍の独裁政治が続いていた。2012年から2016年のあいだに経済が急拡大した10ヵ国のうち、9ヵ国は民主主義のレベルがかなり低い国だ。
民主主義でなければ経済は成長しないし国民の健康も向上しないという説は、現実とはかけ離れている。民主主義を目指すのは構わない。だが、ほかのさまざまな目標を達成するのに、民主主義が最もよい手段だとは言えない。
ただひとつの指標がよければ、ほかのさまざまな面もよくなるというわけではない。ひとりあたりGDPも、子供の死亡率も(キューバのように)、個人の自由も(アメリカのように)、それだけを見てすべてがわかるわけではない。国家の進歩をひとつの切り口だけで測ることはできない。現実ははるかに複雑なのだ。
もちろん、経済成長だけが、人々を幸せにするとは限りません。ですが、「生活が物質的に豊かになる」というのは、多くの人間にとって、わかりやすい幸福の指標であることは確かでしょう。
物質的に満たされるためには、民主主義は必ずしも最適解ではない可能性が高いのです。
もちろん、独裁政治にはたくさんの弊害もあるのですが、迅速な決定や一貫した政策を続けやすい、というメリットもあるのです。
「世界をありのままに見ること」の面白さと難しさを思い知らされる、そんな本です。
それにしても、世界はこんなに良くなっているのに、なぜ自分はその恩恵を受けていないのか!
……たぶん、みんなそう思っているのではなかろうか。
実際はいろんな「良いこと」を享受しているはず、なんですが。
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2018/09/06
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム
- 出版社/メーカー: 文響社
- 発売日: 2018/04/27
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
おとなの教養 2 私たちはいま、どこにいるのか? (NHK出版新書)
- 作者: 池上彰
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2019/04/10
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る