琥珀色の戯言

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【読書感想】伝え方は「順番」がすべて~分単位のコミュニケーションが心を動かす~ ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
圧倒的人気を誇るスマホ向けRPGFate/Grand Order」(通称FGO)をはじめ「ペルソナ」「真・女神転生」シリーズなど数々の人気ゲームのプロモーションに携わる“ゲームの宣伝屋”が初めて明かす「伝え方」の極意。“「ターゲット」という概念はもう古い。”“具体的な施策から考えるとプロモーションは失敗する。”“トレンド、バズワードに手を出すのは自殺行為。”“大切なのはコミュニケーションの「順番」だ。”性別・世代・トレンド・経済状況に左右されずヒットを生み出す「伝え方」のノウハウを本書で初公開!


 17年間、〝ゲームの宣伝屋〟として「ペルソナ」「真・女神転生」シリーズや、「Fate/Grand Order」など、数多くのゲームタイトルのプロモーションに携わり、成功をおさめてきた著者による、「今の時代のゲームの売り方」。

 僕も生まれてからこれまで、たくさんのテレビゲームで遊んできたのですが、任天堂の『ゲームウォッチ』を知ったのはテレビCMで、『ファミコン』で本物そっくりの『ドンキーコング』を遊べることに驚いたのはデパートの玩具売り場で実機を見たときでした。
 ファミコンが出てしばらくは、新作ゲームは「テレビのCMか玩具売り場で知るもの」だったんですよね。
 その後、「新しいゲームの発売を知る」のは、ゲーム雑誌からが多くなりました。あるいは、友達からの口コミ。
 いまは、新作ゲームの情報は、ほとんどインターネットから得ています。ネットに情報を伝えているのは、メーカーや既存のゲームメディアではあるとしても。
 最近では、スイッチやプレイステーションの新作は、ネットを通じて発表されることが多いようです。

 著者が「面白いゲームを、どうやってユーザーにアピールし、買ってもらうか」という仕事をはじめた17年前には、まだゲーム雑誌やテレビCMが、宣伝の中心だったそうですから、「インターネット以降」の時代の変化の早さには感慨深いものがありますね。

 重要なのは「どの順番で施策を行うか」ということ、対話の順番が大事だ。
 これはゲーム業界に限った話ではなく、情報が氾濫するこの時代に商品(モノ・サービス)を売ろうとする多くの人たちにもあてはまるだろう。
 膨大な情報の中から自分の商品に気づいてもらい、対話を重ね心理的な距離を近づけ、愛着を持ってもらい購入してもらう。購入後は口コミで周囲に情報を拡散してもらう。
 そういった一連の流れを生み出すには、消費者に対して「何を行うか」ではなく「どの順番で行うか」が大事だ。
 
 たとえば恋人と何度もデートを重ね、最終的にプロポーズすると仮定してイメージしてもらえばよい。
 2人が距離を縮めていくにあたり、利用する映画館や水族館、レストランやその後に行くバーの「組み合わせ」が最重要ではないだろう(もちろん、どこへ行くか、は重要ではあるが、決定打ではないということ)。
 大切なのは、ゴール(プロポーズ)に至るまでの提案の「順番」だ。相手との距離を常に測りながら、あらゆる文脈を読み、その都度最良と思われる具体的な施策を、順を追って提案していく。順番を間違えると人の心は離れる。順番を徹底的に考える。
 たとえばそれが一日のデートのプランニングだったとしても、順番は大事だ。レストランに行く前にバーには行かないし、バーに行った後、映画館には普通は行かない。そういうことだ。


 商品やサービスに興味を持ってもらうための方法というのはいくつもあるのですが、「どの方法がいいか」というのは、ある程度データが集積されてきていているのです。
 現在は、「どれをやるか」ではなく、既知の有効な方法の中で、「相手の状況に応じて、今、どういうアピールをしていくのが、好感度を上げ、最終的に買ってもらうためにいちばん有効なのか」が差別化のためのポイントになっているのです。
 順番とかタイミングというのは大事なもので、順番を間違えると、効果がないどころか、かえって嫌われてしまうこともある。
 最初のデートでいきなりプロポーズ、みたいなのは、それがハマる相手もいるかもしれませんが、引かれてしまう可能性のほうが高いはずです。

 このデートの話では、そんなの当たり前だろ、と思ってしまうのですが、この本を読むと、商品やサービスの間には、そういう「ミスマッチ」が頻繁に起こっているようです。

 2005年まではインターネットは施策の主力ではなく、テレビや雑誌での情報公開がメインだった。「雑誌に記事を載せて、翌週に公式サイトをオープン」という具合に、一つの施策から次の施策まで「1週間」を目安として、アクションプランニングをしていた。
 それが2006年頃から変化する。
 ウェブ上にSNSなどを通じてクラスタ(集団・群れ)が形成され、それらに向けた施策が増え始める。著者の肌感覚ではおよそ10年で、ゲーム業界のユーザーコミュニケ―ションはテレビ・雑誌からインターネットを通じてのものに軸足を移した。インターネット上での情報の拡散と消費は速く、アクションプランニングは「1日」単位で設計した。
 そして2016年から現在、高度にSNSが発達し情報への接し方が明らかに変わった。SNSを通じての情報の拡散・消費のスピードはかつてない速さで、一瞬で広まるが一瞬で価値を失う。体感的には「分単位」で情報の価値が蒸発していく。


 僕自身もネットでけっこう長い間書いているのですが、ひとつのコンテンツの賞味期限がどんどん短くなってきているのを実感しています。
 ホームページからブログ、そして、TwitterInstagramのようなSNSへ。Twitterの呟きは、まさに分単位でどんどん流れていってしまうのです。
 そして、多くの人は、ホームページやブログのような「ゆっくり読めるコンテンツ」は「遅くて冗長」と感じるようになっている気がします。

 著者は、実際に分単位でプロモーションを組み立てており、「in Minutes Operation」と呼んでいるそうです。

 あくまでさわりだけだが、たとえば、全くの新作のゲームを電撃的に告知し、話題にするための「in Minutes Operation」は以下のようになる。


〇月●日  17時59分 WEBサイト公開
     18時 TVCM放映
     同時刻 発表及びサイトオープンについてツイート
     同時刻 外部メディアにおいて一斉記事公開
     18時2分 施策Bのオペレーションを開始


 実際に実務に携わっている方ならわかるかと思うが、ここで重要になってくるのは、複数の部署・機能の分単位での連携である。
 異なるチーム、組織を分単位で有機的に連携させることこそが肝なのだが、これはまた別の話。別の機会があれば、話すことにしたい。


 それぞれの公開のタイミングが、分単位で計算されており、そのことによってユーザーの期待が高まるように、「設計」されているのです。
 と、言葉にするのは大変ですが、これは各部署の人たちが、「1分」の重要性を共有して、きちんと動いてくれなければ不可能なんですよね。
 フォローしている数が多い人であれば、Twitterのタイムラインは、1分の違いで、全く違うものになっているでしょうし。

 まあでも、ここまで「宣伝の方法」が突き詰められているのを知ると、ユーザーは「自分で選んでいる」つもりで、「選ばされている」のではないか、という気もしてきます。
 面白いゲームであれば良い、のかな……


まんがでわかる 伝え方が9割

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