琥珀色の戯言

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【読書感想】書くのがしんどい ☆☆☆☆

書くのがしんどい

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【note累計150万PVの人気記事を書籍化! 新しい時代の文章術 決定版!!】

 「『あなたの文章はわかりにくい』とよく言われる」「せっかく書いたのに読んでもらえない」「そもそも書きたいものがない!」。

 その悩み、すべて解決します。

 書けない理由の9割は「メンタル」です。「書こう」とするのをやめれば、伝わる文章はだれでも簡単に書けちゃいます。

 『メモの魔力』『言語化力』など話題書50冊以上(担当作累計100万部超)を手掛けてきたプロ編集者が教える「伝わる文章術」。

 本書は、文章ライティングや資料作成からSNS・プロモーションまで応用できるメソッドを大公開します。オンラインメディア「note」に投稿した「WORDSの文章教室」が累計150万PV超え。本書が初の著書。


 僕自身は、「(内容はさておき)書くのはそんなにしんどくない」人間で、書くことによるメリットというのも自分の精神の安定とちょっとしたお金くらいしか実感していないのです。
 そもそも、文章って、「どう書くか」よりも、「誰が書くか」のほうが重要じゃないか、という気がしますし。
 『note』で読まれている人たちも、見た目麗しい人が多いし。


 というような僻み根性はさておき、今の日本で生きていくには「書ける」に越したことはないのは事実です。
 大概の仕事には、ちょっとした報告書の作成がついてきますし、SNSでの発信だって、「いいね!」がたくさんついたら、ちょっと良い気分になれます(それがまた、調子に乗りすぎて炎上するツイートを生み出すことにもつながるのですが)。

 そう。
 みんな毎日何かしら「書いて」はいるのです。
 しかし、あらためて「文章を書こう!」「発信しよう!」と思うと、途端に手が止まってしまう。身構えてしまう。そうではないでしょうか?

 LINEは書けるのに、長文の記事は書けない。
 ツイートはできるのに、あらたまった文章は書けない。
 メールは書けるのに、コラムやエッセイは書けない。

 同じ「書く」なのに、どこが違うのでしょうか……。

 多くの人が「文章が書けない」と言うとき、足りないのはスキルだと思いがちです。
 でも、ほぼすべての日本人は文を書くことはできるのです。手を動かせばできる。

 実は文章が書けない原因は「スキル」ではありません。

 もちろんいろいろな原因がありますが、いちばん大きいのは「メンタル」です。

 書けない原因は、書くことに対する考え方や気の持ちよう、つまりメンタルにある。メンタルさえ修正すれば、誰だって書けるようになるのです。


 「LINEやメールなら書ける、ツイートはできるけど、コラムやエッセイは書けない」という人は多いのかもしれませんが、僕は「不特定多数宛てのコラムやエッセイを書くのは苦痛ではない」のだけれど、誰か特定の人にあててLINEやメールを書くのはすごく苦手です。そもそも、このタイミングで返信して良いのだろうか、ということから悩んでしまう。相手のことを知っていると、かえって、「あの人に嫌われたくない」と考えすぎてしまって、肩に力が入ってしまうのです。


 著者は「とりあえず書く」ために、「著者と編集者の一人二役をやること」を推奨しています。著者の役だけでも無理なのに、そんなのできるか!と思われそうなのですが、実際はこう書かれています。

 まず下手でもいいから、何も気にせずにダーッと伝えたいことを書きなぐる。そして、そのあと冷静になって「編集者」の立場で文章を見直して、整えていく。
 そうすればある程度の質の文章を一人で作成することができます。


 僕もこれと似たようなことをよくやっています。
「今日、映画館に行って『ドラえもん』の新しい映画を観ました。面白かったです」
 みたいな感じで、まず大まかな文章の骨組みをつくってしまい、そこに、『ドラえもん』を選ぶまでの経緯とか、映画館の混み具合、面白いと思った場面などを肉付けしていく、そんな感じです。
 最初から完成したものを書くよりは、ずっとハードルは下がりますし、人間というのは往生際が悪いもので、一度骨組みだけでも書いてしまうと、なんとか完成させよう、という欲が出てきますし。「取り掛かる」のが、いちばん難しいところなのかもしれません。

 著者は、書くことが「しんどい」原因として、以下の5つを挙げています。

(1)書くことがなくてしんどい
(2)伝わらなくてしんどい
(3)読まれなくてしんどい
(4)つまらなくてしんどい
(5)続かなくてしんどい


 文章を書いている(あるいは、書かなければならない)人は、この5つと無縁ではいられない。
 著者は、このそれぞれに対して、書こうとしている人たちにアドバイスを贈っています。


 (1)(2)については、類書で書かれ続けていることでもあり、「書き方よりもネタが大事」とか「一文は短くする」というような定番の話が例をあげながら、わかりやすくまとめられています。

 僕自身は(3)が一番気になっていたのですが、そこには、このようなことが書いてありました。

 ちなみに何が自分の求められているテーマかわからない人には、こんなアドバイスをします。
「あなたが講演会をするとしたらどういうテーマで話すと人が集まりそうですか?」と。
 税理士の方なら、多くの人は「税の話」「お金の話」を求めるはずですし、心理カウンセラーなら「心理学」について聞きたいはずです。
 リアルにどれくらいの人が来てくれそうか? これを想像すると自分が発信すべきテーマが見えてきます。
 こんなこともありました。
 会計士の人が「自己啓発書を書きたい」と言って企画を持ってきたのです。ぼくは「いや、あなたは会計士なので、自己啓発書じゃなくて税やお金のことについて書いたほうがいいですよ」とアドバイスしました。すると「え? そんなあたりまえのことでいいんですか?」と驚いていました。「自分が発信したいこと」と、「まわりが聞きたいこと」には意外と差がある。そこに多くの人は気づかないのです。

 読まれる文章を書くためには、そもそも「何を書くか」というテーマの見つけ方もより重要になってきます。CHAPTER1で「書くことがない」を克服したつもりですが、つねに「話題になるようなネタ」を説明し続けるのは難しいことです。
 どうすれば、話題になるようなネタが生み出せるのでしょうか?

 キーワードは「自分ごと」です。
マーケティングの世界では、消費者にとっての「自分ごと」にすることが大切だと言われますが、文章も同じです。読み手が「自分ごと」にできるような分野には、かならず需要があります。そうした分野を選べば、話題になるようなネタを生み出しやすくなるはずです。
「自分ごと」にしてもらいやすいエネルギーのあるテーマはこの5つです。何を書くか迷ったら、このテーマの中から考えてみるといいかもしれません。

(1)お金(仕事、働き方を含む)
(2)食欲
(3)恋愛・結婚・家族
(4)健康
(5)教育


 ただ、この(1)~(5)って、競合が激しいし、(2)を除いては、かなり炎上しやすいテーマでもあるんですよね(ただし、無名の人が多少過激なことを書いても、そう簡単に炎上しないのも事実です)。

 最近思うのは、「ネタがない」って苦しんではいるけれど、本当に身体を張ったり、手間を惜しまなかったり、プライドを捨てたりすれば、ネタはできる、ということなのです。
 駅のトイレでAVの音声を流して通報されたユーチューバーみたいなのは論外なのだとしても。

 「そこまでして書く必要があるのか?」というのは、常についてくる問題ではありますが。

 僕は、現代ほど「書ける人」が有利な時代はないと思っています。
 なぜか?
 ひと昔前まで、人と出会うのは「リアル」の場がほとんどでした。
 友だちや知り合いを介して出会う。なにかの会合やパーティで出会う。あいさつをして、名刺交換して「ぼくはこのあいだ会社を辞めて、ライターをやっている者です」などと自己紹介をする。そんな感じでした。
 そういうケースでは「話すことがうまい人」が有利でした。
 初対面の場面でうまく話せることができれば「いま、こういう本を書きたいと思ってまして。もしよかったら御社にお邪魔させていただけないでしょうか?」などとスラスラ言える。話が上手な人が得をするのです。「話す」のが得意な人が圧倒的に有利だったのです。
 しかしいまは「初対面がテキスト」というケースが増えています。
 最近の「初対面」は、ツイッターやメール、メッセンジャーやLINEだったりします。本人にリアルで会う前に「テキストにおける接触」がある。つまり「テキストが初対面」という機会が増えているのです。
 そういう時代に有利なのは、話の得意な人ではなく、書くのが得意な人です。最初にテキストでその人を判断して「この人、おもしろそうな人だな」というのがすぐにわかる。文章がアドバンテージになる、引っ込み思案の人の時代と言えるかもしれません。
 これからは「書ける人」が有利になっていくのです。


 「若者が本を読まなくなった、活字に触れなくなった」なんて言われがちではあるのですが、ネットで読んだりやりとりしたりしているテキストの量を考えると、以前よりずっと「文字によるコミュニケーション」が重視されてきてはいるのです。 
 「書くのがしんどい」のはわかっているけれど、「それでも書きたい」という人にとっては、読みやすい入門書ではないかと思います。
 僕は長年書いてきて、現在は、「向いてない、書くのが好きじゃない人は、無理して自分から発信しなくても良いし、他のやりたいことに時間を使うべき」だと、考えているのですけど。


fujipon.hatenablog.com

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