琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】監督不行届 ☆☆☆☆

監督不行届 (FEEL コミックス)

監督不行届 (FEEL コミックス)


Kindle版もあります。

監督不行届 (FEEL COMICS)

監督不行届 (FEEL COMICS)

人気漫画家・安野モヨコと夫・庵野秀明のデイープな日常が赤裸々につづられた爆笑異色作! アニメ界と漫画界のビッグカップルが、こんなにもおかしく愛おしいオタク生活を送っているなんて…! 世界中に生息するオタク君はもちろん、オタ嫁(オタク夫を持つ妻)も共感すること間違いなしの衝撃作!!


 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開と大ヒットで、庵野秀明監督があらためて注目されています。
 NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で、「庵野秀明スペシャル」も放送され、その作品への愛情と執念も話題になりました。

 庵野監督の妻は、人気漫画家の安野モヨコさんなのですが、妻の側からみた、「あまりにもオタクすぎる夫の生態と夫婦の日常」を描いたマンガ『監督不行届』(2005年上梓)が、15年を経て、あらためて人気になっているのです。

 僕もこの『監督不行届』、出た直後に読んでいたんですよね。


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 ただ、このときには、「とりあえず読みました」みたいな感じでしか触れていないので、15年ぶりに読んで、「感想」を書いてみます。

 15年前に読んだときには、庵野監督の「おたく」っぷり、日常生活にアニメや特撮が溢れている様子に、「僕なんか、全然『オタク』のうちに入らないな……」と敗北感と安心感が入り乱れたような気分になったのを覚えています。

「日本のおたく四天王」と呼ばれる男、庵野秀明
 とはいえ、「おたく」としてコンテンツを楽しむ受容力と、クリエイターとして作品をつくる能力を併せ持っている人というのは、そんなに多くはないはずです。
 

 今回のおたく道
 擬音を口で!!!

 ぎくっ うるうる めそめそ しくしくしく
 ガガ~ン!!!
 
 マンガでよくあるあの音を実際に口で言う人達……それがオタクです


 ただ、正直、15年前に読んだときに比べると、「こういうオタクって、庵野さんには到底及ばないとしても、今の世の中にはけっこういるんじゃないかな」とも思ったんですよ。
 オタクをターゲットにしたコンテンツもたくさんあるし。
 逆にいえば、庵野監督や旧ガイナックスのメンバーたちは、「自分が見たいもの、欲しいものを手に入れるには、自分でつくるしかなかった時代」を生きてきたがゆえに、「つくる才能」が磨かれたのかもしれません。

 この本には、2005年、結婚した時点で、すでに40歳を過ぎていた庵野監督が、安野モヨコさんとの結婚によって、それまでの「日常なんてどうでもいい」生活から、「普通に近い人間の生き方を学んでいく過程」が描かれています。
 ちゃんとお風呂に入ったり、下着を着替えたり、片づけをしたり。食べられないもの(肉や魚は全然食べられないそうです)が多い庵野さんとのクリスマスディナーの話も出てきます。

 あらためて読み返してみると、『エヴァンゲリオン新劇場版』という一連の作品には、庵野監督自身の「結婚に伴う人生の変化」が反映されているのを感じました。

 巻末の庵野監督へのインタビューのなかで、監督はこんな話をされています。

 嫁さんのマンガのすごいところは、マンガを現実からの避難場所にしていないとこなんですよ。今のマンガは、読者を現実から逃避させて、そこで満足させちゃう装置でしかないものが大半なんです。マニアな人ほど、そっちに入り込みすぎて一体化してしまい、それ以外のものを読めなくなってしまう。嫁さんのマンガは、マンガを読んで現実に戻る時に、読者の中にエネルギーが残るようなマンガなんですよね。読んでくれた人が内側にこもるんじゃなくて、外側に出て行動したくなる、そういった力が湧いて来るマンガなんですよ。現実に対処して他人の中で生きていくためのマンガなんです。嫁さん本人がそういう生き方をしているから描けるんでしょうね。『エヴァ』で自分が最後までできなかったことが嫁さんのマンガでは実現されていたんです。ホント、衝撃でした。


 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観たあとにこれを読むと、感慨深いものがありました。
 安野モヨコさんとの出会いがなければ、『新劇場版』はつくられなかった、あるいは、全く別の作品になっていたのではなかろうか。

 15年前に描かれたものですが、いま読んでも十分面白い。
 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観た人であれば、ちょっとした「謎解き」をしているような気分になれる作品だと思います。


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