琥珀色の戯言

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【映画感想】マスカレード・ナイト ☆☆☆


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ある日、警察に匿名の密告状が届く。それはホテル・コルテシア東京で大みそかに開催されるカウントダウンパーティー“マスカレード・ナイト”に、数日前に起きた殺人事件の犯人が現れるというものだった。パーティー当日、捜査のため再びフロントクラークとしてホテルに潜入した刑事・新田浩介(木村拓哉)は、優秀なホテルマン・山岸尚美(長澤まさみ)の協力を得て任務に当たる。しかし、500人の招待客は全員仮装し顔を仮面で隠しており、二人は殺人犯の特定に苦戦する。


masquerade-night.jp


 2021年、映画館での11作目です。
 観客は僕も含めて10人くらいでした。
 僕の地元では10月1日から緊急事態宣言が解除予定、で、映画館もレイトショーが復活します。
 10月1日というのはキリが良い感じはしますが、いきなり週末+ファーストデイで割引だぞ。大丈夫なのかこれ?
 しかも、いつのまにか『007』の新作が10月1日公開になってるし。
 ダニエル・クレイグさん、歴代のボンドのなかで、もっとも「僕がイメージしているジェームズ・ボンドに近い」のですよね。
 今作でボンド役からは卒業されるそうですが。


 ……って、関係ない話でけっこう字数を稼いでしまいました。その時点で『マスカレード・ナイト』については、察してください、という感じなのですが。


 映画『マスカレード・ホテル』の続編なので、まず前作を観てみることをおすすめします。先日テレビ放映もされていましたよね。
fujipon.hatenadiary.com


 いや、けっして悪い映画ではないんですよ。というか、観ていて楽しかったし。
 けっこう厚い本を2時間にまとめているので、登場人物が多すぎて、誰が誰だか……というところはありましたし、ミステリとしては「素人がそんなことしないだろ……」とツッコミたくなる登場人物の行動+御都合主義の動機のオンパレードなのです。

 でも、やっぱり、木村拓哉長澤まさみ、という組み合わせは、それだけで絵になりますね。
 僕は木村拓哉さんと同世代なのですが、自分が若い頃、20代くらいのときは、本当に嫌いだったんですよ、キムタク。
 何を演じてもキムタクだし、やたらと女性にもてはやされていたし、『あすなろ白書』で、なるみの気持ちの隙間につけこんでベッドイン(古い!)とか、人間としてどうよ、そもそも、そこでなびくなるみもなるみだろ……と大変不愉快にもなったのです。

 すみません、それは木村さんが悪いわけじゃないですよね。しかし、当時の僕は、世の中にはそんなに簡単に寝ちゃう、村上春樹の小説の登場人物のような男女がいる、ということが許せなかった。そりゃモテないわ。

 今は、けっこう好きなんですよ、木村拓哉さん。
 「何を演じてもキムタク」っていうのも、これだけ長い間主役を張っているのをみていると、「もう、キムタクはキムタクを貫いてくれ!」的な気分になりますし。
 あらためて考えてみると、あの高倉健さんも「何を演じても高倉健」なんですよね。
 観客はそんな高倉健を観て、「やっぱり健さんだなあ!」って喜んでいたのです。

 木村拓哉さんというのは、そういう「スーパースターだけが許される立場」に達した、数少ない俳優のひとりなのかもしれません。
 役所広司さんみたいに「何を演じていても役所さんであることに違いはないけど、作品によって信じられる人になったり、怪しくなったりする」役者さんは、本当にすごいとも思うけれど。


 この『マスカレード・ナイト』なのですが、前作は、「ホテルマンと刑事のそれぞれの職務の文化的衝突」が興味深かったのです。
 「ホテルのお客様は、みんな仮面をつけている」というのは、まさにその通りだと思いますし。
 ただ、この映画は、続編ということもあって、文化的な衝突は少なめです。
 個人的には、長澤まさみさん演じるコンシェルジュ・山岸の「おもてなしの暴走」がけっこう僕には気になりました。

「ホテルマンは『無理です』と言ってはいけない
 ということで、さまざまな無理難題を山岸さんは実現しようとするのですが、そのなかに、「あのお客さんに自分を紹介してほしい」というリクエストがあるんですよ。
 いくら「お客様に無理です、と言ってはいけない」としても、相手がホテルと無関係な人の場合は、相手の都合ってものがあるでしょうに。他のお客さんの迷惑になりそうなことも「ホテルマンの意地」で引き受けられたら怖いよね……

 僕が基本的に人にあれこれ気を遣われるのが苦手、というのもあるのでしょうけど、もうちょっとお客を放っておいてほしいよこのホテル……リッツカールトンの「逸話」的なものが流行ったけれども、僕としては「誰かへの特別なサービスのアピール」よりも、「清潔な部屋と、客から依頼されない限りは客への儀礼的無監視を貫く」だけで十分なんだよなあ。
 いくら好きなアーティストのライブでも、客席に自分ひとり、みたいな状況って、僕なら辛いし、困る。

 この映画の脚本そのものは、最終的には登場人物に大して不快感があまり残らないように練られているのですが、わかりやすい伏線とともに、「ああ、いかにもフジテレビのスペシャルドラマの豪華版みたいな映画!」っていう感じです。
 フジテレビ発の映画って、みんな「三谷幸喜映画のできそこない」か、金がかかっていない『アマルフィ 女神の報酬』のように見えてしまいます。

 ……と、例のごとく悪口ばかり書いてしまったのですが、そんなふうにツッコミを入れながら、2時間くらい気分転換するには悪くない映画だとも思います。木村拓哉さんと長澤まさみさんのコンビを観られるだけで「眼福」って気もしますし。

 あと、ホテルで多くの人たちが歩き回っているのを観ているだけで「密だな……誰もマスクしていないし……」という気分になってきますね。
 現在のところ、「登場人物がみんなマスクをしている映画」というのは観たことがないのですが、この新型コロナの時代に映画を撮る人たちは、「これは一時的なことだから」と考えているのだろうか?
 そういう「時代」を切り取った映画があっても良いのではなかろうか。
 まあ、それじゃドキュメンタリーになってしまうし、これまでの歴史でも、感染症の流行は数年でおさまってはいるのですけど。


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