琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】medium 霊媒探偵城塚翡翠 ☆☆☆☆

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

  • 作者:相沢 沙呼
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


Kindle版もあります。

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

内容紹介
三冠獲得!
「このミステリーがすごい!」2020年版国内篇 第一位
本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング 第一位
「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎【こうげつしろう】は、心に傷を負った女性、城塚翡翠【じょうづかひすい】と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。


 この本のオビには、「このミス」と「本格ミステリ・ベスト10」の「第1位」の文字が躍っていました。
 表紙には、緑の瞳の女性が描かれていて、ライトノベルっぽい。
 とりあえず、『このミス』1位の作品は読んでみることに決めているのです。
 こういうランキングを鵜呑みにするわけではないけれど、新しい作家や日頃読まない作風を手に取るには良い機会なので。

 正直なところ、この『medium』に関しては、可憐で浮世離れした霊媒若い女性と、ワトソン役のミステリ作家のやりとりを読んだ時点で、「なんか微妙というか、これって、『キャラ萌え』狙いのあざといミステリじゃない? 謎解きも文章を読んだだけではまわりくどくてわかりにくいし……」と、かなり微妙な印象だったんですよ。
 そもそも「霊媒」+「死者の記憶が見える」って、これ、『逆転裁判6』だろ……これが1位か、『このミス』も最近は、ミステリらしいミステリが少なくなって選ぶの大変なんだろうな、一昨年は『屍人荘の殺人』みたいな「飛び道具」が1位になったくらいだし……
 いやまあ、これはこれで、僕も「萌え要素」というか、ラブコメ的な展開も嫌いじゃないんですけどね、何とか堂古書店とか、喫茶店なんちゃらランとか、いっぱいあるんだけどさ。そういえば、あの手の「職業系ラノベ風ミステリ」って、『このミス』ではほとんど採りあげられていませんよね。「あれはミステリじゃない」という解釈なのか、レーベルとか、ハードカバーかどうかで判断されているのか。
 しかし、米澤穂信さんの一連の作品は、ラノベっぽいやつでもランクインしているわけで、よくわからない。

 ……というような、いかにも脱線、という内容を書き連ねてきたのは、この『medium』という作品は、読む人には、なるべく予備知識無しで読んでもらいたいから、なのです。
 映画とかミステリとかで、「最後のどんでん返しは予測不能」とか、「ラスト1行で、世界が変わる!」なんていう宣伝文句はありがちなのですが、困ったことに「どんでん返しがありますよ」という宣伝そのものが読む側にとっては、重大なネタバレになってしまっているのです。
 「まだこのまま終わるわけじゃないんだな」という心の準備をしていて、その「意外な展開」にたどり着くのと、まっさらな状態で、直撃を受けるのとでは、やっぱり、インパクトは全然違いますよね。
 とはいえ、「予想外の展開」をアピールする宣伝のしかたのほうが、「売れる」のも間違いないのでしょう。

 正直、途中までは「これが1位?まあ、2位も横山秀夫さんの作品としては微妙な『ノースライト』だからな……それにしても、ベタなキャラ設定にややこしくてまわりくどいトリック、うーむ……などと思いながら読んでいたのです。

 この本を読む人にお願いしたいのは、この、いかにも「キャラ萌え」を狙ったような城塚翡翠【じょうづかひすい】にうんざりしても、なんとか最後まで読み通してほしい、ということなのです。
 そうすれば、なぜ、この作品が「1位」なのかわかると思うから(絶対的な1位かどうかはさておき、少なくともミステリランキングの上位には値すると思います)。
 「なんでこんなベタなキャラ萌えミステリが高評価なんだ?」
 そう思った時点で、われわれはもう、最初のトラップに引っかかっているのです。
 先入観おそるべし。
 こちら側が「こんなのたくさん読んできたんだよ、もう飽き飽きだ」と「わかった」つもりになることも、たぶん、計算されているのです。
 人は「わかった」「見切った」つもりになっているときに、隙をつくってしまう。

 なんだかもう、作品の外側をぐるぐる回っているだけ、みたいな感想ではありますが、僕は寝転がって「ふーん」って読んでいたのが、最終章では、いつのまにか、机の前に座り、身を乗り出していました。
 個人的には、この作品は「凄いし、面白いとは思うけれど、好きではない」のです。なんのかんの言って、僕も「心地よい結末」を好むのだよなあ。
 たぶん、そういう人こそ、この『medium』の格好のターゲットなのでしょうね。


fujipon.hatenablog.com
fujipon.hatenadiary.com

このミステリーがすごい! 2020年版

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2019/12/11
  • メディア: 単行本
マツリカ・マジョルカ 「マツリカ」シリーズ (角川文庫)

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小説の神様 あなたを読む物語(上) (講談社タイガ)

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