琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

【映画感想】2022年に観た3作の映画を振り返る


年末恒例の企画、2022年に観た映画の振り返りです。

今年は23本観ました。
以前は「ベスト○」と順番をつけていましたが、このくらいしか観ていないのに順番つけてもなあ、という気分なので、とりあえず面白かった作品を3作振り返ってみます。


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(1月7日公開)
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メタバース」「マルチバース」という概念が、マーベルのヒーロー映画を面白くしているのか?と言われると、疑問ではあるのですが、この作品に関していえば、ヒーローものとしての出来云々というより、(さすがにもう少しはネタバレしてもいいよね)これまでの『スパイダーマン』の映画を観てきて、その栄光と挫折を知っている人間のひとりとしては、センチメンタルな気分にならずにはいられませんでした。
観客は、「リアルでの役者として、人間としての彼らの状況といまの気持ち」みたいなものを想像しながら、スクリーンの中のスパイダーマンを観ることになるのです。
こういうのは「飛び道具」みたいなものだと思うし、個人的には、「フィクション、とくにヒーローものなどの『現実離れしたい』作品」で、スクリーンの外の社会とか映画興行のしがらみとかにリンクするというのは「この作品に関しては、『スパイダーマンの歴史』に敬意を表して認めたいけれど、こんなのばっかりになったらイヤだなあ」と考え込まずにはいられないのです。
まあでも、「社会やその状況」というのは、「映画」と切り離せない関係ではありますし、今後もこういう「現実とスクリーンの中の物語がシームレスになっていく作品」は増えていくのでしょうね。
ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』も、演じていた役者さんが亡くなったことで、シリーズの大黒柱であったはずのティ・チャラ王も退場することになりました。役者さんは元気いっぱいでも、制作側の都合、あるいは「年齢的にキャラクターに合わなくなった」というような事情で「キャスト変更」されることはあっても、こういう形で、「現実がフィクションを変えてしまう」のが、いまの時代ということなのかもしれません。



トップガン マーヴェリック(5月27日公開)
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いまさら『トップガン』かよ!あれからもう36年も経っているんだぞ。トム・クルーズもネタ切れなんだな……
36年前に公開された前作は「アメリカ、戦闘機かっこいい!『アフターバーナー』!」と盛り上がっていた中学生としては、複雑な気持ちで観に行ったのです。
そもそも、自動操縦でターゲットを狙えるようなドローンが開発されているこの時代に、人間が操縦する戦闘機(パイロット養成のコストも高い)は、斜陽兵器ではないのか、とも思ったんですよね。

しかしながら、この映画は、その「斜陽であること」や「トム・クルーズ自身も年を重ねたこと」を作品のなかにうまく取り込んで、僕のような中年男には鑑賞と再度の憧れを、僕の息子たちには「やや荒唐無稽で、テレビゲームみたいな世界なんだけれど、これでもか!と繰り出されるクライマックスへのワクワク感」を与えてくれたのです。
観終えて、「面白いなこれ!」って思わずつぶやき、心の中で拍手してしまいました。



すずめの戸締まり(11月11日公開)
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『THE FIRST SLAM DUNK』『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』と迷ったのですが、3作目はこれにしました。

これ、あらためて考えてみると、「愛想と感じの良い『みさき』がいる『ドライブ・マイ・カー』」だよね。
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多くの人が犠牲になった災害を、こんなふうに「昇華」して良いのか?というのと、とはいえ、こういう形じゃないと、もう、みんな深刻な気分になってしまう「失われたものの話」に耳を傾けてくれなくなっている、というのが入り混じってしまいます。
実際に印象に残るのは、「猫と三本足の椅子が、ジェットコースターで追いかけっこをする場面」なんですけどね。
新海誠監督すごい、さすが『イース2』のオープニングデモをつくった人!という感じです。
新海誠監督の映画って、「みんなが助かるために、ひとりの人間を犠牲にすることは許されるのか?」という問いがこめられていて、それは、僕も含めて、多くの「僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男(Mr.Children)」に、すごく居心地の悪い思いをさせるはずなのだけれど、なぜだか観客はすずめ側に感情移入して、自分も救われたような気持ちになって家路につくのです。

個人的には、新海誠監督の作品は、監督が望んでいるようには、観客に伝わっていないような気がするのですが、だからこそ、興行的には支持されまくっているのかもしれません。
われわれは、数多くの草太や鈴芽に対して、見て見ぬふりをしている自覚もないまま、日常を生きているのです、たぶん。


なんだか駆け足での振り返りになってしまいましたが、2022年は、Netflixを導入したこともあり、「自宅で映像配信を観ること」と「映画館での鑑賞」について、けっこう考えることがたくさんありました。
最近の日本で大ヒットしている映画って、その作品そのものを観るのと同時に、自分の「推し」に忠誠心を示す、みたいな面がかなり大きくなっているような気がします。ほとんどの作品は、そんなに間隔をあけずに配信される。見放題、あるいは何百円かで。映画館ではマスク着用が必要だし、騒がしい観客がいるかもしれないし、トイレにも行きたくなる。往復の時間もかかる。大型テレビも配信サービスも安くなりました。映画も「みんなが観ている作品だから映画館で観る」という、「一極集中型」が目立っているように感じます。もちろん、それが悪いというわけではなくて、そういう時代なのだ、ということなのですが。「作品を観る」だけではなく「みんなと作品について語る」ための映画鑑賞。
それにしても、アニメ強いよね。とくに邦画は、アニメ面白いし質も高いものなあ。実写映画のほとんどは「配信されたら観ればいいや」と思い、配信される頃には興味を失っています。
そういえば、ディズニーやピクサーのアニメ、最近元気ないかも。


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