琥珀色の戯言

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【映画感想】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ☆☆☆

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人気が落ちてきたドラマ俳優、リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、映画俳優への転身に苦心している。彼に雇われた付き人兼スタントマンで親友のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は、そんなリックをサポートしてきた。ある時、映画監督のロマン・ポランスキーとその妻で女優のシャロン・テート(マーゴット・ロビー)がリックの家の隣に引っ越してくる。


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2019年、映画館での18作目。
日曜日の夕方の回で、観客は10人くらいでした。


レオナルド・ディカプリオブラッド・ピット主演で、落ち目の役者とそのスタントマンの話、と聞いていたので、その二人の特殊な関係を用いての事件とかトリックが出てくる映画なんだろうな、と思いながらみていました。
このふたり、仲が良いよなあ、人気役者とスタントマンなら、もっとこう上下関係、みたいなものがあるんじゃないかと思ったけど……それにしても、スタントマンって、もうちょっと似た人を起用するんじゃない?とか考えたり、ハリウッドの人気者たちが集うパーティのシーンでは、ああ、こういうのが1960年代末のハリウッドなんだな、それにしても、このシーンのためだけに、いくらお金がかかっているんだろう、タランティーノ監督は、「当時のハリウッドやヒッピー文化、アメリカの様子を再現するためにこの映画を撮ったのであって、ディテールこそが主役なのかな」とか考えたりしていました。
しかし、前置きが長いな、この映画……

結論からいうと、ものすごく豪華な前置きと長い状況説明が続き、さあ!と思ったら終わっていた、そんな映画でした。
うーむ、これって、チャールズ・マンソンとかシャロン・テートのことを知らないと「何これ?なんでこのレオ様ともブラピとも関係ない隣人の女優が、やたらと魅力的に、かつ時間をかけて撮られているの?」と疑問を抱いたまま、エンドロールを眺めることになりそうです。
いや、「いちおう知ってはいる」という程度の僕でさえ、「160分も付き合って、これで終わり、なの?」って思いました。
当時のハリウッドの「雰囲気」と、ディカプリオ、ブラピのコンビ、シャロン・テートを演じたマーゴット・ロビーさんのまばゆいばかりの魅力で、なんとか最後まで観たけれど。

正直、タランティーノ監督とどう向き合うか、というのは僕には難しい。
映画ファンとしては「タランティーノがわからないの?」と言われるのは怖い。
でも、少なくともこの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に関しては、ハリウッドとかヒッピー・ムーブメントというアメリカの「文脈」を理解、体験していないと、わからないのではなかろうか。
たぶん、アメリカ人の多くは、出てくる店の看板とかCMとかテレビ番組とかドライブイン・シアターとかに「そうそう、こういう時代だったよね」と頷けるのだろうし、それだけで、この映画に馴染めると思うんですよ。

しかしながら、ずっと日本で生きてきた僕にとっては「ふーん、当時のアメリカって、こんな感じだったんだねえ」という「発見」はあるものの(それはそれで面白くはあるけれど)、親近感はわかない。

僕は以前、『崖の上のポニョ』をみて、これは、宮崎駿監督が、童話『人魚姫』の結末に納得できなくて、自らが望む結末をつくりだしたのではないか、と思ったのです。
そして、この『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』をみて、タランティーノ監督は、あの「シャロン・テートの悲劇」がどうしても許せなくて、せめて、映画の中だけでも、違う結末を描こうとしたのではないか、と感じたのです。
ただ、『人魚姫』と『ポニョ』は、どちらもフィクションだけれど、こちらに関しては、現実というのが存在しているわけで、観終えて、「でも、事実は……」と僕はすっきりしませんでした。
ただ、映画の世界で生きている人にとっては、フィクションも現実も「等価」なのかもしれません。
というか、予備知識なしでこの映画をみたら、「ブラピ強い! 犬賢い!」で終わりそう……

1960年代から70年代のアメリカや「ヒッピー文化」「シャロン・テート事件」についての予備知識がないとタランティーノ監督がやろうとしたことはわからない。
でも、あまりにも事前に知識を入れすぎていると、「観る前からネタバレ」という状態になってしまう。

たしかに、「雰囲気」はすごく魅力的な映画だし、それで良い、のかもしれませんけどね。
タランティーノ監督の映画は、僕にはちょっと難しい。


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