琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】今日の人生2 世界がどんなに変わっても ☆☆☆☆

今日の人生2 世界がどんなに変わっても

今日の人生2 世界がどんなに変わっても

  • 作者:益田ミリ
  • 発売日: 2020/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

内容(「BOOK」データベースより)
へこんだ気持ちにゆっくりと空気が入っていく。深呼吸を忘れていた。『今日の人生』(7万部突破)から3年半。この間の「日々」に、書き下ろし「ポーランドごはん」を加えた待望の第2弾。


 益田ミリさんが『みんなのミシマガジン』に連載されている、『今日の人生』の単行本2冊目。書店で偶然みかけて、「もう2冊目が出たのか」と思ったのですが、1冊目が出たのは2017年4月だったんですね。
 もう3年半も経っていたのか……
 
 年をとると時間が過ぎるのが速くなる、と母親が言っていたのを思い出した、今日の人生。
 いやほんと、この本を読むと、この「今日の人生」っていう決め台詞を自分でも使いたくなってしまうんですよね。前作もそうだったものなあ。


fujipon.hatenadiary.com


 今回は、新型コロナウイルス禍のなかで、東京在住の益田さんも、ステイホーム生活を強いられてしまうのですが、「それ以前」の2017年から2019年までの「ごく普通の日常」が、こんなことになるとは思いもしないまま切り取られていることが、僕はちょっとせつなくなってしまいました。

 益田ミリさんは本当に日常生活をうつしとる解像度が高い人だなあ、と感動してしまうのです。年齢が僕と近いだけに、同じ時代を見てきたという親近感もありますし。

「視野が狭いんだよ、あの人!!」
 と、怒っている人の声がめちゃくちゃ大きかった
 今日の人生


 益田さんのイラストは、基本的に写実的ではないし、印象的な言葉に添えられているだけ、というような感じがすることが多いのですが、今回、時間をかけて読んでみると、同じ人を正面からだけではなく背後から描いてみたり、並び方や距離感で人間関係を想像させたり、あえて顔がみえないようなアングルになっていたりと、言葉選びの感性だけではなく、表現するための技術の素晴らしさにも気づきました。
 いやしかし、この「声の大きな人の話」とか、僕自身もどこかでやっていそうな気もします。これは、どこで益田さんに見られて、聞かれているかわからないな、なんて思ってしまいました。
 「ふつうの人たち」が、日常の会話のなかで、ふと口にしてしまう「ツッコミどころのある言葉」を、こんなにきっちり拾っている人がいるのです。


 フルーツパーラーで「あたし、ドラゴンフルーツが食べたい気分だったのよ」と同行者に語る女性に、心のなかで「そんな気分あるんや~」とツッコミを入れるエピソードなんて、「言われてみれば、そんな気分は想像がつかない……」というのと、「そんな人や言葉を手繰り寄せてしまう益田さん」に、ちょっとニヤニヤしてしまうのです。
 もしかしたら、僕のまわりにも、こういう言葉は散らばっているのに、僕自身に反応する能力が欠けているのだろうか。

 新型コロナ禍のなかでも、閉塞感を抱えつつも、益田さんはなんだか淡々と生きていて、それでも、登場する人たちはちゃんとマスクをして描かれているのです。

 よく晴れた日曜日
 充実した休日を
 過ごさなくてもいいんだな
 と、どこかでホッとしているわたしがいるのでした


 僕は基本的にインドア好きだし、趣味も読書にテレビゲームにインターネットと、むしろ、新型コロナで株価が上がるようなジャンルばかりです。
 正直、ステイホーム生活というのも、「ああ、今はアウトドアに繰り出して、フェイスブックに写真をアップするような『リア充』生活をしなくても許されるんだな」と、気楽な面もありました。マスクしてたら、口臭とかもあんまり気にしなくてもいいし(自分自身で気になる、ということはあるとしても)。
 僕も「どこかでホッとしていた」のです。
 「出かけない言い訳」を考えなくて済むことに。

 読んでいると、自分が子どもだった頃のこと、その頃、自分がみた親のこと、そして、大人になった自分が子どもを見ていて感じることが、いろいろ心に浮かんでくる本でもあります。
 こういうのが「わかるような気がする」のは、年を重ねることの御褒美みたいなものなのかもしれませんね。

 本棚に置いて、半年に1回くらい、「なかなか寝付けず、何か読みたいけれど、疲れるものは避けたい」、そんな夜に読み直したくなる作品だと思います。

「こんな世の中でも、同じ空の下のどこかに、今日も『今日の人生』を描いている人がいるのだなと、ふと思う、今日の人生。


fujipon.hatenablog.com

今日の人生

今日の人生

  • 作者:益田ミリ
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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