琥珀色の戯言

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【読書感想】巴里マカロンの謎 ☆☆☆☆

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)

巴里マカロンの謎 (創元推理文庫)


Kindle版もあります。

内容紹介
11年ぶり、シリーズ最新刊!創元推理文庫オリジナル
そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を。
謎に遭遇しがちな小佐内さんと、結局は謎解きに乗り出す小鳩君
手に手を取って小市民を目指すふたりの高校生が帰ってきました!

ここにあるべきではない四番目のマカロンの謎、マスタードが入った当たりのあげパンの行方。なぜかスイーツがらみの謎に巻き込まれがちな、小鳩君と小佐内さんの探偵行。「小佐内先輩が拉致されました! 」「えっ、また」?お待たせしました、日々つつましく小市民を目指す、あの互恵関係のふたりが帰ってきます。人気シリーズ11年ぶりの最新刊、書き下ろし「花府シュークリームの謎」を含めた番外短編集。四編収録。


 米澤穂信先生の「小市民」シリーズ、11年ぶりの新刊。
 11年か……うちの長男が生まれたときに前作が出て、それ以来なんだな……
 これまで、『春期限定いちごタルト事件』『夏季限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件(上・下)と続いてきていたので、次の『冬季限定』がシリーズ最終巻ではないか、と言われ続けて、はや11年。とりあえず、今回は「限定」ではなかったみたいです。この『巴里マカロン』が、番外編的なものなのか、米澤さんが「とりあえず、まだこのシリーズを続けてみよう」と思っておられるのかはわかりませんが、ちょっとホッとしつつも、40代後半が読むには若すぎるミステリだな、という気もしました。
 とはいえ、「秋期」のときだって、30代後半が読むには若いミステリではあったんですよね。
 でも、僕だって、人が死なない、「日常の謎」で安らぎたいときもあるのです。
 最近の米澤さんの作品では、「日常の謎」系の作品でも、人間の暗黒面みたいなものを潜ませていることが多いのですが、この「小市民シリーズ」も、一部にそういう「大人の事情」みたいなものは織り込まれているものの、全体的には、「うちの長男にも読ませてみたいな」と思えるくらいの穏やかさに満たされています。
 米澤さんにとっても、この「小市民シリーズ」というのは、気分転換というか、「あまり人間の裏面みたいなものに触れずに、観察と推理の面白さを描く時間」なのではなかろうか。

 ぼくが推理したがる傾向を矯正したいと願っているように、小佐内さんも自らの性向を押え込みたいと思っている。ぼくたちはお互いに見張り合い、助け合って、心穏やかで無害で易きに流れる、誰にも迷惑をかけない小市民になろうと誓い合ったのだ。その誓いを踏まえてもなお小佐内あんは、事情もわからず他人に躍らされることにはどうしても我慢がならないらしい。


 「古典部シリーズ」が、登場人物たちの「立場と人間関係の変化」を描かざるをえない局面を迎えていることもあり、この「小市民シリーズ」では、「あえて、人間関係を動かさない」ことを選んだように僕には感じられましたし、このシリーズに関しては、小鳩くんと小佐内さんは、このままでいてほしいような気がするんですよ。

 次の巻は、もう少し間隔が短くなるといいなあ。


さよなら妖精 (創元推理文庫)

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