Kindle版もあります。
私立雷辺(らいへん)女学園に入学した時夜翔(ときやしょう)には、学園の名探偵だった大叔母がいた。数々の難事件を解決し、警察からも助言を求められた存在だったが30年前、学園の悪を裏で操っていた理事長・Mと対決し、ともに雷辺の滝に落ちて亡くなってしまった……。
悪意が去ったあとの学園に入学し、このままちやほやされて学園生活を送れると目論んでいた翔の元へ、事件解明の依頼が舞い込んだ。どうやってこのピンチを切り抜けるのか!?
2026年度版の各ミステリランキングで知り、書店で古典的探偵風スタイルの女の子が決めポーズをしている表紙をみてなんとなく購入。パラパラとめくって、これなら読みやすそうかな、とも思ったので。
最近のミステリはけっこう複雑なトリックとかが多くて、社会問題とか警察の組織などを詳細に描いている分厚い本が多い気がしていましたし、僕もそういう気合が入ったミステリも嫌いではないのです。
でも、そういう本は読む側にもエネルギーが求められますし、読むと重苦しい気分になってしまう。
楽しく読めて、そんなに時間もかからない、そういうミステリを読みたい人には、ちょうどいい作品だと思います。
正直、事件の犯人の動機と行った行為のバランスが悪い(さすがに、その理由で、この立場の人が、こんなことまではやらないだろう)、という印象はありますし、それぞれの犯行も、理論上は可能かもしれないが、うまくやるにはあまりにも難易度が高いし、かなりの幸運が必要だったのではないか、とも思いました。
でも、そういう「リアリティを求めない」作品だからこそ、謎解きゲームみたいな気楽さとか、キャラクターの魅力を感じることができるという面もあるのです。
『謎解きはディナーのあとで』とか『インシテミル』とか『古典部シリーズ』のような「キャラクター重視型、謎解きゲーム系ミステリ」好きとしては、「ちょうどいい」感じでした。
僕は、安楽椅子探偵ものということもあり、『アリバイ崩し承ります』を思い出しました。
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キャラクターもののように見せておいて、設定は、『シャーロック・ホームズ』の最後の事件を彷彿とさせるものがあり、著者は「社会問題や人間ドラマを描くためのミステリ」よりも、「なるべくシンプルな謎解きの骨組み、みたいなものを読者に楽しんでもらうのが好き」なのではないかな、と。
シャーロック・ホームズを僕が学校の図書館で読んでいた1970年代から80年代前半くらいは、図書館には他に楽しそうな本もなく、多くの活字好きは『少年探偵団』『怪盗ルパン』『シャーロック・ホームズ』などを「図書館で読める楽しい本」枠にしていて、「本好きの通過儀礼」的な作品でもあったのです。赤川次郎さんの『三毛猫ホームズ』シリーズとかも、けっこうみんな読んでいたなあ。
僕は「赤川次郎とか、チャラチャラしやがって!」と「自称ミステリ好き女子」に内心毒づきながら、西村京太郎のトラベル・ミステリーを読んでいたのですが、いま思うと、赤川さんはすごいミステリマニアで、だからこそ、「若者にも読みやすいミステリ」を書きつづけていたのです。赤川さんの作品は、昔みたいに読まれなくなってしまいましたが、今の作家にあてはめると、東野圭吾さんのような存在でした。
売れすぎているから「俗な作家・作品」だと評価されがちだけれど、その根底には古今東西のミステリへの知識と愛着、読みやすさへの研鑽が詰まっている。
結局、キャラクター(登場人物)の魅力なんだよ、というのは、あらゆるコンテンツに言えるのではないかと僕も半世紀近くいろんな作品に接してきて痛感しています。
と、当時はメジャーすぎると赤川さんを敬遠してあまり読んでおらず、あんなミーハーなミステリなんて、と筒井康隆さんに行ってしまった自分の学生時代を思い出してしまいました(筒井さんは今でも作品を発表しつづけ、書店には文庫が並んでいるくらい超メジャーな作家なんですけどね)。
この『名探偵再び』の直接の感想を書いていないのは、ミステリはだいたいそうなんですが、何を書いてもネタバレになってしまうところがあるし、人間ドラマよりもゲーム、パズル的な謎解き志向の作品であればあるほど、あまり先入観なしに読んでもらいたいのです。
ホームズや少年探偵団のような「古典」と、20年くらい前、ある種のミステリが大ブームになった時代のことを思い出さずにはいられない読後感、そして、現代的なキャラクター設定との巧妙なアンサンブル。
読み終えて、時夜翔(ときやしょう)という人間に「やるじゃん!」って言いたくなりましたし、「蛇足になってしまう続編」のリスクが高いとは思いつつ、この作品の続きを読んでみたくなりました。
この主人公に対する読後の印象は好感と嫌悪感の両極になりそうですが、僕は好きです。
「軽いノリのミステリ」風ではあるけれど、子どもに読ませておきたい、人生の参考になる1冊、かもしれません(大げさすぎるかな)。
万人向けの大傑作!ではないけれど、僕はなんかこれ好き!って伝えたい。
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