琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【映画感想】ミッドウェイ ☆☆☆

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山本五十六(豊川悦司)、山口多聞(浅野忠信)、南雲忠一(國村隼)率いる日本軍の艦隊が真珠湾を攻撃する。戦艦エンタープライズの艦長ハルゼー(デニス・クエイド)は、パイロットのディック(エド・スクライン)と彼の隊に日本軍艦隊の追跡を命じた。アメリカ軍のニミッツ最高司令官(ウディ・ハレルソン)とレイトン少佐(パトリック・ウィルソン)は、次の戦闘に備えるため日本軍の戦略を分析し、やがてミッドウェイで両軍が激突する。


midway-movie.jp


2020年、映画館での8作目。
前回新作映画の感想を書いたのが『ランボー ラスト・ブラッド』で、そこから約2ヵ月。あれ?そんなに映画館に行っていなかったっけ?と思ったのですが、そういえば、ジブリの旧作公開を観ていたんですね。


fujipon.hatenablog.com


新型コロナウイルスも収束しつつある、というよりは、感染者数はみんなが「自粛」していたゴールデンウィークくらいの時期に比べるとかえって多いくらいなのですが、映画館にも少しずつ人が戻ってはきているようです。とはいえ、話題作の公開は軒並み延期や未定になっています。


さて、この『ミッドウェイ』。平日の朝からの回で、観客は僕も含めて10人くらい。『インディペンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』など、いろんなものをぶっ壊すディザスター・ムービーの巨匠ローランド・エメリッヒ監督の作品です。この人、これまで何回地球を滅亡させてきたんだ、って感じです。

史実をもとにした戦争映画というのは、観る前から結末がわかっている、いわゆる「ネタバレ」しているんですよね。
2020年に生きている僕は、『ミッドウェイ海戦』で日本の連合艦隊は空母4隻を失うという大敗を喫し、これが太平洋戦争のターニングポイントとなったことを知っています。

で、アメリカでつくられた映画だし、中国資本も入っているし、ネットでのレビューをみても、日本人には不愉快な映画なんだろうな、と身構えてはいたのです。
まだ新作映画、とくに洋画の大作はほとんど公開されていない状況でもあり、『ミッドウェイ』が観たい、というよりは、「何か映画を観たい」という状況での消去法での選択の結果がこの作品だったのです。

エメリッヒ監督の作品だけあって、戦闘シーンの迫力はさすが、という感じでした。
これは、映画館の大画面、大音量でなければ味わえない。
とはいえ、やられるのが日本軍、というのは悲しい。いや、あの戦争に日本が勝っていたら、今の僕が幸せになるというわけでもないし、そもそも生まれてすらいなかったのかもしれないけれど。

ただ、民間人への攻撃とか捕虜の扱いとか、日本軍に対するネガティブな描写はいくつかありましたが、少なくとも「日本軍をひたすら邪悪で狡猾な敵として(あるいは、過剰に武士道とか自決とかを強調して)描いた場面はほとんどありませんでした。
少なくとも「日本バッシング」の映画という印象は受けませんでした。


僕はこの映画を観るまでは「太平洋戦争は、経済力が圧倒的に劣っている日本が自分たちの力を過信してアメリカに無謀な戦争をしかけた」と思っていました。
真珠湾攻撃は不意打ちだったから成功しただけで、あとはやられる一方だし、日本人が飢えている間も、アメリカ人は食べ物に困るようなこともなく、余裕があった、とも。

しかしながら、この映画の冒頭では「ミッドウェイはアメリカ海軍にとって歴史上最大の海戦だった」と振り返られており、真珠湾攻撃以降の日本の海軍は連戦連勝で、零戦の性能やパイロットの熟練度も高く、アメリカ軍はすっかり自信を失っていたのです。

アメリカの物量が相手なのだから、負けて当然、と思い込んでいたミッドウェイ海戦も、戦力的にはほぼ互角、空母の数でいえば、日本側のほうが多かったのです。

ただし、ミッドウェイの基地を攻略するのか、アメリカ海軍の艦隊を撃破するのか、そのどちらが主目的なのか、最後まで曖昧だった、という問題はあったようです。
戦力的にほぼ拮抗しているというのは、基本的に守備側有利ではあるでしょうし。

アメリカ海軍のニミッツ提督が「日本の海軍は、奇襲の必要がないときでも、つねに奇襲をしようとしている」と言っていたそうです。このミッドウェイ海戦当時の両軍が使える戦力を総合的に判断すれば、日本はしっかり準備をして、もっとたくさんの艦船を集めて正攻法で戦うほうが確実だったのかもしれません。

この映画のなかでも描かれているようにアメリカが情報戦に重きを置いていて、日本の艦隊の位置をかなり正しく想定できていたことも大きかったようです。

日本側からすれば、予想外の空母がいきなりあらわれたり、山本五十六司令長官が乗っていた『大和』らは、主戦場から離れていて、「ミッドウェイ海戦」には参加できませんでした。

この映画を観ていて、いちばん引っかかったのは「なぜアメリカ海軍がこの戦いに勝ったのか、それも圧勝したのか、この映画を観たかぎりでは、その理由がよくわからなかった」ことなんですよ。

映画を観たかぎりでは「アメリカ軍の情報戦での優位」と「勇敢なパイロットたちの活躍」で勝てた、ということなのだろうか、と思うのだけれど、情報戦はさておき、メインキャラが乗っているアメリカの戦闘機が飛んでいたら、いきなり日本の空母があらわれて、甲板に爆弾を落として撃沈、みたいな感じで、「そんなに簡単なの?」と思うんですよ。

なぜ連合艦隊はこんな惨敗を喫したのか、この映画を観た限りではどうも納得できなかったので、Wikipediaなどでかなり調べてみたのですが、この規模の大海戦というのはさまざまな状況の移り変わりもあって、読んでいてちゃんと経過を理解したという自信も持てず、そもそも、何かひとつの大きな理由があって負けた、というわけではない、ということみたいです。
南雲中将が空母の艦載機を地上攻撃用に換装する指示を出したタイミングでアメリカの飛行機の攻撃を受けたというのも、そのときの状況を考えると、それなりの合理性はあったのです。

そもそも、ミッドウェイ攻略を、このタイミングで(明らかに準備期間が不足していて、乗組員は疲労がたまっており、少し待てば、日本はさらに空母2隻を投入できる可能性がありました)行う必要があったのか、もう少し情報戦を重視していれば、ここまでの被害、あるいはこの海戦そのものを避けられたのではないか、と考えずにはいられません。
その一方で、物資が圧倒的に乏しく、経済力も劣る日本にとっては、「時間が経てば経つほど、アメリカが有利になっていく」というのも事実なわけで。

日本でつくられた戦争映画というのは、「やっぱり戦争は悲惨だ、やってはいけない」という目線で描かれることが多いのですが、戦勝国側からすれば「英雄譚」なのだ、と痛感します。
軍隊ってブラック企業だよなあ、と思いつつ、浅野忠信さんが演じていた山口多門中将の最期には「美学」みたいなものを感じずにはいられなかったのです。

当たり前のことなんですが、実際に戦っている人たちは「自分たちが正しい」と信じて、状況に応じてベストを尽くすしかないわけですよね。
もちろん、そんな清々しいものじゃなくて、さまざまな人間の弱さや暗部が浮き彫りにもされるのだけれども。

 1942年の『ミッドウェイ海戦』から、もう78年。
 これだけの時間が経てば、もう敵も味方も、すべてを「水に流す」ことができるのだろうか……

 この映画の感想にはあまりなっていない内容になってしまって、申し訳ない。

 たぶん、教訓的なものを受け取ろうとするのではなく、「うわー、すごい迫力の戦闘シーンだ!まるで自分が戦闘機に乗っているみたい!」とか思いながら楽しむ、それで良いのだと思います。


fujipon.hatenadiary.com

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