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ネタバレ厳禁。驚愕体験の本格ミステリ!
小石探偵事務所の代表でミステリオタクの小石は、名探偵のように華麗に事件を解決する日を夢見ている。だが実際は9割9分が不倫や浮気の調査依頼で、推理案件の依頼は一向にこない。小石がそれでも調査をこなすのは、実はある理由から色恋調査が「病的に得意」だから。相変わらず色恋案件ばかり、かと思いきや、相談員の蓮杖と小石が意外な真相を目の当たりにする裏で、思いもよらない事件が進行していて──。
「ネタバレ厳禁」なのはわかる。
でも、これ「本格ミステリ」なの?
舞台が博多(福岡市の中心部)ということもあって、福岡では多くの書店で大々的に推されています。
黒(青?)髪のちょっとミステリアスな若い女性が表紙に大きく描かれていて、タイトルが「恋しない」ですから、ジャケ買いというか、表紙買い狙いというか『成瀬シリーズ』っぽいなあ、と。
この表紙の「小石」も、ちょっと成瀬あかり(『成瀬は天下を取りに行く』の主人公)と似てるよね。
僕の土地勘があるところなので、作中に出てくる場所にも親しみが持て、登場人物がまったく博多弁を喋らないのもけっこう好きでした。
地域性を出すために、地元民もほとんど使わないような方言が日常会話に出てくると、ちょっと引いてしまう。
ミステリだし、何を書いてもネタバレになる、オビの「そのひと言で世界が一変する」という言葉さえ、ある種の「ネタバレ」ではあるのでしょうけど。
「この流れは、あの叙述トリック?」と、『葉桜』とか『セカンド・ラブ』とかを思い出しながら注意深く読んだのですが、こういうふうに収束させてくるとは思いませんでした。
「予想外のすごい結末」というよりは、正直なところ、「この設定、後出しすぎない?」と感じたところが多かったのです。
『シュタインズ・ゲート』の真エンドというか、「現実的にはかなり起こりがたい事象を実現するために、レアな要素を積み重ねていった」ような流れなので、これを読者が「推理」するのは至難でしょう。
犯人くらいは、当てられるかもしれないけどさ。
ミステリをそれなりの数読んでいると、「要するに、あんまり犯人らしく思えないように描かれている人が犯人なんでしょ」とか、「この登場人物の性別・年齢は明示されているのか?」とか、勘繰る習慣ができてしまう。
もちろん、僕はこの事件の犯人を当てられませんでした。
そして、すごく読み味、後味が良い小説です。
なんかもっと「大きなもの」が動いているふうな描写がある割には……と拍子抜けしたところもありますし、小石の特殊能力は「それ、本格ミステリで『あり』なの?そもそも、そんな能力がこの作品に必要なの?」と言いたくもなりました。
(結局、要るっていえば要る、という結論にはなるのですけど)
なんというか、揚げ足を取るような感想になってしまっているのですが、けっこう楽しめる小説でした。
「驚かされるミステリ」ではないけれど、心地よい娯楽小説だとは思う。
「恋愛至上主義」の20世紀の終わりから、「3人にひとりは生涯独身」「恋愛なんてめんどくさい」の2020年代まで生きてきた僕の実感として、「恋愛感情を持たないがゆえに、恋愛を客観視できてしまう」探偵小石は、きっと今の若い世代のほうが「しっくりくる」キャラクターじゃないかな。
僕はもともと「とってつけたような恋愛要素」は好きじゃないし、時代劇映画に強引に忍びの女がヒロイン枠で出てくるようなのは「見ていて恥ずかしくなる」のです。
そういう意味では、小石と蓮杖の「バディ」としての関係性には、心地よさがありました。
「ポリコレっぽさ」や「多様性への配慮」も感じるのですが、「こういうのも『多様性』として認めるの?」と言いたくなるような関係性も(たぶんあえて)描かれています。
「てか蓮杖くん。マジでわたしが薦めた本読んでくれないよね。せっかく初心者向けの取っつきやすいやつとか、読めば絶対度肝抜かれる系のやつを厳選して薦めてんのに。ほら、これもマジ面白いから読んでよ、『魍魎の匣』
「それのどこが初心者向けで取っつきやすいんですか」蓮杖はそれシリーズものの二作目でしょ、と言いかけたが、止めた。代わりに見た目に言及することにする。「もはや立方体じゃ無いですか。鈍器本ってやつでしょ」
「鈍器本って言い方、わたしはあんまり好きじゃ無いんだよねぇ」
「登場人物の性別を深読みしようとするような(ミステリ好きの)読者も想定されているのも伝わってきます。
作者はかなりのミステリ好きのようで、様々な作品の小ネタにもくすぐられます。
これはもう僕の好みの問題なのですが、僕はライトノベル的なキャラクターの個性や超常能力全開の「なんでもありエンタメ全振りミステリ」と「社会問題や警察組織を扱った、リアリティを追求したミステリ」の両極のどちらかはっきりしている作品が好きで、「すごいトリックで驚かされたい」のです。
そういう意味では、「なんかこれだと、エンタメ性もリアリティも中途半端なんだよなあ、読後感は滅法良いので、なんかいいもの読んだ気持ちは残るんだけど……」という小説でした。
スマホにネットに監視カメラにNシステムと、ミステリを書くのが難しい時代なのはわかっているんですけどね。
小説としては面白いけれど、ミステリとしてはあまりにもご都合主義すぎないか?
僕の印象を一行でまとめると「制約条件が多すぎる米澤穂信」でした。










