Kindle版もあります。
冒頭で開示された7つの真実。それでも、あなたは騙される。
ミステリーの常識が崩壊する、前代未聞の”読者への挑戦状”。「島での最初の犠牲者は名探偵」「登場人物の一人は偽名」「島では四人が殺される」「共犯者がいる」など、巻頭に書かれた7つのネタバレ。嵐に閉ざされた孤島で起こる連続殺人を描いた作中作「双紋島の殺人」は、現実に起きた事件をもとにしたノンフィクションノベルだった。事件に巻き込まれたミステリー作家は、真相解明を読者に求めるため小説として刊行するが……。
仕掛け満載でアクロバティック!『同姓同名』『全員犯人、だけど被害者、しかも探偵』の著者が贈る禁断のネタバレミステリー。
リアル書店をぶらぶらしながら、何か一日で気軽に読めるミステリ、イヤミスとかバカミスみたいなのがないかな、と思っていたのです。
感動するのも、「どこが叙述トリックなんだ?」とか探りながら読むのも疲れるときって、ありますよね。
それなりの「物語」があって、読み流せるような小説。
タイトルが『ネタバレあり』で、オビには「王様のブランチ」でも話題沸騰!と書かれており、ああ、いま読みたいのは、こういう本なんだよな、トンデモミステリっぽいの、好き。
……そんなことを考えながら読み始めて、2日間くらいで読み終えたのですが、正直なところ、思っていたほど「軽い」作品ではなく、けっこう真面目なミステリでした。
その一方で、「真面目なミステリ」だからこそ、動機とかトリックとかに関して、「不可能な状況を説明するために、あまりにもご都合主義なんじゃないか」と思うところもありました。
気になったのは「視点」の問題で、「これはいったい誰が書いたんだ?」と言いたくはなるんですよね。
おそらく、ある程度ミステリ慣れしている人ならば、「この作者はいったい、何者?」と疑問を抱きながら読み進めることになるはずです。
また、この本を出版する際に、作者が出した「条件」についても、引っかかるはず。
ただ、最初に「7つのネタバレ」が提示される、というのは、大変興味深いし、これだけのヒントを与えられたら、どんな叙述トリックか見破ってやろう、という気分にはなりますね。
実際、解答編を読んでも、「理論上は可能なのかもしれないが、そんなことが実際に、短時間でできたのか? 誰も気づかなかったのか?」と感じるところもいくつかありました。
状況説明重視で、前半はけっこう退屈ではありましたし、分量のわりには、登場人物があまり印象に残らない。
「フェアであるかどうか……。特に本格推理小説では重要な要素ですね。後出しじゃんけんをしない、とか、手掛かりは全て出しておく、とか」
「そうなんですよ、作者が読者に対して嘘をつかない……というのも基本ですね」
「作者が欺いてしまったら、読者はどんなに頑張っても真相を推理できませんから」
「僕は、本格推理というのは、作者と読者の”契約”だと思っています。最低限、作者は嘘を記述しません、という”契約”です。読者を騙すのはいいんです。でも、出し抜くのは卑怯です。情報を隠しておいて、最後に『実はこうでした』なんて言われたら、読者は勝負の土俵にすら立てません」
この小説を読んでいると、「フェアネス」に徹底的にこだわっている、というよりは、最低限のフェアネスは確保しつつ、けっこう「後出し」的な情報が解決編で出てくるな、とも思いました。
動機はわからなくもないけれど、こんな大がかりな舞台設定が必要なのかは疑問だし、トリックも行き当たりばったりというか「嵐でうやむやになりました」みたいな「結果オーライ」が多すぎる。
そもそも、あの「凶器」の存在は、計算できるものだったのか。
この作品は、あまりにも「ミステリのフェアネス」にこだわりすぎるミステリマニアたちに寄り添っているようで、実は「そんなミステリマニアたちを、さらにその外側から冷笑している」のかもしれません。
最近、「本格」と言われるミステリは、どんどんトリックが繊細になってきていて、「そんなふうに糸を使って密室をつくるなんて、プレッシャーのかかる実行直後の現場で完璧にやりとげられるのか?」などと僕は考えてしまいます。
いくら冷酷非情な犯人でも、ジェームズ・ボンドやイーサン・ハントじゃないんだからさ。
これだけ携帯電話や監視カメラやNシステムが張り巡らされた社会では、「密室」というのは、「嵐の中の孤島」とか「豪雪のスキー場の民宿」というような、かなり特殊かつ不自然な状況じゃないとつくるのは難しい。
最後まで「これ、どういう結末に着地するんだ?」と興味を持って読めたのはまちがいないので(結末に関しては、100%満足、というわけではないけれど)、気分転換に読むためのお気軽ミステリ枠としては必要十分条件を満たした作品だとは思います。「人間ドラマ」とか「感動」を押し付けないところも、かえって心地よくはありました。
僕が「この名前が伏線だろう!」とか「そんな古典的などんでん返しじゃないよね」と思ったところが、ことごとく当たらなかったし、某、超有名古典ミステリを思い出すところもあったのです。
どこまでが「確信犯」なんだろうなあ、この作品って。










