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- 作者: カトーコーキ
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内容紹介
それでも、生きていくために。
虐待、父の死、3.11の被災と故郷の喪失、強烈な自己否定、うつ病……。
悩んで悩んで悩みまくった男が辿りついたのは、
“しんさい"をきっかけに溢れ出た、己の「膿み」を描くこと。
ーーーーーー
誰からも必要とされず、
社会にとって有益なものを何ひとつ生み出せない、
非生産的な自分の存在が、
とても情けなく許せなかった。
情けないという思いに、ボクは幾度となく涙を流した(本文より)。
イースト・プレスっぽいなあ……
とか思いながら読みました。
父親からの精神的虐待の記憶と東日本大震災をきっかけに自分の「居場所」を失い、「うつ」を発症して苦しんでいる作者が、自分の気持を率直に描いたエッセイマンガです。
正直、僕は読んでいて、あまり共感できなかった、というか、このくらいの親からの厳しい扱いや仕事や社会と上手く関われない、っていうのは、そんなに珍しいことではないとも思う。
僕自身も親として、自分の子どもに百点満点の親ではない、というのを自覚していますし、自分が傷ついたから、他者を傷つけてもいい、わけではないはず。
うつで働けなくなった著者は、田舎の母親に支援を無心し、しばらく援助してもらっていたのです。
その母親への公的支援が打ち切られてしまい、援助はもう難しいから、働いてくれ、と言われた際に、「あなたは父親からの虐待に対して、何もしてくれていないじゃないか、今の自分の苦境に責任があるのではないか」と責める描写は、読んでいてつらかった。
世の中には、あからさまな「虐待」があるし、その対極に「すばらしい家庭」も、たぶんあるのでしょう。
ただ、大部分の家庭というのは、その黒と白のあいだの灰色のどこかに属しているはずです。
読みながら、「気持はわからなくもないけれど、そうやってなんでも人のせいにしても、どうしようもないんじゃない?」と言いたくなってしまったのです。
ただ、こういうのって、「人それぞれ」だとしか言いようがないところがあって、「あの人は、もっと辛い目にあったのに頑張っているんだから」というのも違うのだよね。
逆に言えば、このエッセイマンガは、そういう、自責の念と他人のせいだという感情が入り混じってしまう、「人間のどうしようもなさ」みたいなものが正直に描かれている貴重な作品だとも感じるのです。
どうしても「表現」にするときって、自分を美化しがちなものだから。
読んでいて、「被災し、突然自分の居場所を奪われて、仕事もうまくいかずに『うつ』になってしまった著者」なのに、僕の心に浮かんできたのは、「この人自身も大変だろうけど、現実でこの人に接してきた人たちも、扱いづらくて大変だっただろうな」ということばかりだったんですよ。
周りの人だって、そんなに余裕綽々で生きているわけではないのだから。
それでも、母親が援助してくれたり、部屋を掃除しにきてくれる友人の女性がいたり、他人というのは、けっこう優しいものなのだな、と感じるところのほうが多いのです。
僕自身は被災したわけじゃないけれど、「被災者にしかわからない」と言われると、そこで断絶してしまうような気がします。実際は「わからない」のだろうし、「被災者」のなかにも、家族や大切な人、住む場所を失ってしまった人もいれば、著者のように、周囲に亡くなった人はいなかったけれど、被災した場所での捜索活動や物資の窮乏、避難生活を体験した人もいる。
広義でいえば、東京で一晩「帰宅難民」になってしまった人たちも「被災者」ではあったわけで、ひとまとめにしてしまうこと自体に無理があるのかもしれません。
著者は、震災から4年経った際にテレビで「福島は元気に頑張ってっから、遊びに来て下さいっ!!」とアピールしている人の映像をみて、「頑張ってたり、元気だったりしないと、福島人じゃないみたいじゃないかよっ!!」と深く傷ついたそうです。
その人だって、そんなつもりでアピールしているわけじゃないのはわかっていても、傷つく人は、傷つく。
人間って、めんどくさいなあ、と思う。
僕自身も、そういうめんどくさい人間のひとりだという自覚はあって、だからこそ、著者に対して複雑な気持ちになるのです。
そのくらい、なんとかしろよ、って、言いたくなる。
創作物として読むには良いけれど、実際にこういう人を救おうとすれば、自分の人生そのものを捧げるくらいの覚悟がいるし、それでもうまくいくとはかぎらない。
安易に「共感」する気にはなれない。
良くも悪くも、すごく、正直なエッセイマンガだと思います。
そして、正直な人って、いまの世の中では、生きづらいんだよね。
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