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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

サマーウォーズ ☆☆☆☆☆


参考リンク:『サマーウォーズ』オフィシャルサイト

あらすじ: 天才的な数学力を持ちながらも内気な性格の小磯健二は、あこがれの先輩・夏希に頼まれ、長野にある彼女の田舎へ。そこで二人を待っていたのは、大勢の夏希の親せきたちだった。しかも、健二は夏希から「婚約者のふりをして」と頼まれ、親せきの面々に圧倒されながらも大役を務めることに……。(シネマトゥデイ

この映画を観ながら考えたこと。
「きっと監督や脚本家は、『セカンドライフ』が日本でも流行ると思っていたんだろうな……」

観終えて思わずつぶやいた言葉。
「シンジ、よくやったな」(c.v.立木文彦

8月1日、公開日が「映画の日」と重なったこともあり、18時から、しかも地元の花火大会と同日、ほぼ同時間帯という条件ながら、観客数は50〜60人程度。細田守監督の前作『時をかける少女』はテレビ放映などで高く評価され、知名度もそこそこあるとはいえ、地方都市では苦戦するのではないか、と予想していましたが、まずまず順調な滑り出し。

この『サマーウォーズ』、前半を観ながら、僕は内心、「ああ、細田監督、『やっちまった』な……」と思っていました。原案・脚本が書かれた時期には、「セカンドライフ」がもっと日本でも一般化されて、こういう世界観がそんなに説明しなくても受け入れられると予想していたのでは……
現状、「セカンドライフ」は見事にコケてしまっており、この作品で描かれている「ネット世界での危機と現実社会での危機のリンク」については、たぶん大部分の人は実感できないと思います。

そして、正直なところ、僕はこの作品の世界観が大嫌いなんですよ。
主人公は内気で「女の子と付き合ったこともない」高校生男子だけれど、物理部の「憧れの夏希先輩」とは、「普通に会話はできるくらいの関係」だし、「数学オリンピックの日本代表にもうちょっとでなれた」ほどの才能もあります。
夏希の実家・陣内家は、信州の名家で家は壮大なお屋敷、いまはつつましく暮らしているとはいえ、90歳の栄おばあちゃんは、政財界にすごい人脈がある大物。

……これってさ、「特別な人たちによる、特別な物語」なんじゃない?

世間的に言えば、90歳のおばあちゃんがあんなに元気なわけないし、「認知症で徘徊しまくるおばあちゃんの介護を押し付けあう陣内家」のほうが、はるかに現実的なはず。
そもそも僕は「旧家」っていうのがものすごく苦手なんですよ。僕が中学校時代に引っ越した家は、昔からの高級住宅街にあったのですが、近所の人たちは、なにかというと、「うちは家老の家柄で」とか「何代続いた名門で」などと言い出し、「それに比べてあなたの家は成り上がりで……」みたいなことを僕の母親に、におわせていたそうです。
僕はその時代、なんだかとても悔しかったし、そんな「先祖の栄光」にばかりすがっている人間たちは、なんてみっともない生き物なのだ、と憤っていました。いまを生きているのなら、いまで勝負しろよ、お前の息子より、俺のほうが成績は圧倒的にいいけどね、とか。
もうね、作中で陣内家の人が「ご先祖様は第二次上田合戦で……」とかやっているのを聴くと、虫唾がはしりまくり。くたばれ、戦国時代の亡霊!真田昌幸・幸村は情けなくて泣いているんじゃなかろうか。
娘が恋人を連れてきた、というときに、いきなり、「もう子供はできたの?」とかストレートに聞いてくる不躾さとかもイヤでイヤで。
僕たちは、ああいうのがイヤだから、こうして核家族化してきたんじゃないのか?

うわっ、延々とネガティブ感想ばっかり続いてしまいましたが、後半のあの事件後は急激に盛り上がり、仮想世界での戦い、そしてクライマックスの場面では、思わず泣いてしまいました。僕は「陣内家の人たちの結束」なんてどうでもいいけど、「世界の無名の人たちのささやかな善意の集まり」には、ものすごく弱いんです。うわっ、なんてベタなんだ、『逆襲のシャア』か?とか思いつつも、現代の世の中にも、ネットの中にも、そういう「善意」があるのではないかと信じたい自分がいて。まあ、たしかに「夏希ちゃんかわいい!」っていうのも大きな理由じゃないかとは思うけどさ。

映像、キャラクター、シナリオ、すべてにおいてクオリティが高くて、現代人にも(たぶんギリギリで)受け入れられるレベルの「時代性」があり、それでいて、普遍的な甘酸っぱさがある、素晴らしい作品です。
ただ、僕はこの作品の「背景」と「テーマ」がものすごく苦手で、手放しでは喜べなかった。

時をかける少女』に比べると、「わかりにくい」作品だし、観る人を選ぶのではないかとは思うし、「大家族のすばらしさ」や「人とのつながり」というテーマが観た人に伝わるかどうかは微妙だと感じるんですけどね。
(逆に、「そこが微妙だからこそ、商業的にはうまくいく」のかもしれません)
やっぱりこれは、「特別な人たちによる、特別な物語」だと思うから。
「アニメ」で「ひと夏の物語」だからこそ、なんとか「許せる」けど……

僕にとっては、「公開中に映画館でもう一度観ようとは思わないが、DVDが出たら買う」レベルの映画でした。
(ちなみに『ヱヴァ・破』は、映画館で絶対もう1回観るレベル)


しかし、みんな結構「大家族スペシャル」好きなんだねえ……
アニメだったら、許せるの?