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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

世の中には、天性の「イジメ上手」がいる。

雑記 社会

※2012年10月1日追記。
当エントリに関する大久保博元氏に対する言及は、2010年7月のサンケイスポーツの記事に基づくものです。
大久保氏や菊池選手、その他の西武ライオンズの選手の「菊池選手イジメ」について僕が書いた内容は、すべてこの記事や当時のその他の報道からの僕個人の想像ですので、ご承知いただいたうえお読みいただければと思います。
なお、この件に対する大久保氏本人へのインタビューをこちらで紹介しています。


サンケイスポーツの記事より。

プロ野球の西武は29日、選手に対する暴行行為や指導方法に問題があったとして大久保博元2軍前打撃コーチ(43)を解雇したと発表した。大久保前コーチは22日にコーチを解任され、球団本部長付となり自宅謹慎となっていた。さらに暴行を受けていたのはドラフト1位の雄星投手(19)=岩手・花巻東出=であることも明らかになった。

 埼玉県所沢市内の球団事務所で記者会見した小林信次球団社長は「関係者へのヒアリングをした結果、暴行行為が認められました。世間をお騒がせさせたことを深くおわびします」と話した。

世の中には、天性の「イジメ上手」がいる。
「イジメられた経験」を持つ僕は、そういう人間の「臭い」を嗅ぎつけてしまう。
もっとも、大人になれば、大部分の人間は、多かれ少なかれ、「イジメ、あるいはかわいがり」という類の経験をしてきたことはあるはずだ。
被害者の場合も、加害者の場合もあっただろう。
たぶん、この大久保という人も。

「イジメっ子」の典型例として、もっとも知られているのは、『ドラえもん』のジャイアンではないかと思う。
しかし、ジャイアンのような「誰彼構わず、相手に対して自分が上に立とうとするイジメっ子」は、どんなに悪性ではないのだ。

世の中には、「イジメ」というのを「他人を支配するための技術」として使うタイプの人がいる。

知り合いの劇画原作者に聞いた、ある病院での話。
そこの病院の某科部長は、新しくやってきた研修医のうちのひとりを、いつも「標的」にしていた。
カンファレンスでは、そいつがプレゼンテーションをするときには、これみよがしに厳しい質問をして、「お前はバカだ」と徹底的に責め立てる。
その一方で、他の研修医には、そんなに酷く突っ込みを入れずに「次までにちゃんと勉強しておけよ」と手加減してやる。

すると、どうなっていくかというと、
「ターゲットにされた一人を除く研修医」たちは、みんな、その部長を好きになるのだ。
アイツはいつもイジメられているけど、それはアイツが無能だからだ。ちゃんとすれば、あの人は優しくしてくれる。
そもそも、もし逆らったりして、自分が標的にされたら、大変だし……
そして、彼らは、部長と「仲良く」「和気あいあいと」して、「あそこの科は、いつも仲がいいねえ」なんて、病院の偉い人から一目置かれる。

傍からみれば、研修医に大きな能力の差なんて存在しない。
当たり前だ、まだ医者になって何カ月かの連中に、そんなに差がつくはずもない。
でも、部長は、その「接しかた」で、いかにも差があるように思いこませることができる。
「標的」には、人づき合いがちょっと苦手なヤツとか、口下手な人間が選ばれる。
周りの人間が、その人をいじめることに反発するような人間は、絶対に選ばれない。

ジャイアンは、「イジメっ子」であるために、世界と戦わなければならない。
しかしながら、部長は、ただひとりの「標的」を作りつづけることだけで、他人を支配することができる。

ジャイアンは、「乱暴者」として、社会から孤立する。
部長は、「人心掌握術に長けた人」として、社会から評価される。

バカバカしくて悲しい話だけれど、世の中には、そういう「イジメの技術」を持った大人が、少なからず存在するのだ。
彼らの標的になると、周囲からも「あの人はいい人なのに、お前がちゃんとしていないから厳しくされるんだ」と責められる。
「標的」に、逃げ場はない。

デーブ大久保というのは、あんなふうに見えて、実際は、「イジメの技術」を利用して世の中を渡ってきた人なのではないか、と僕は思っている。
イジメられていたのが、抽選の末にようやく西武が引き当てた、ドラフト1位のゴールデンルーキーだというのも、いかにも、という気がする。
傍からみれば、「注目される選手をイジメるなんて、バカじゃないの?」という印象なのだけれども、西武というチームの中からみれば、「高い契約金をもらって、マスコミからも注目されている、妬ましい異物」でしかない。選手たちのそういう気持ちを、大久保という男は、ちゃんと知っていたのだ。
そして、訊くところでは、そのルーキーは、真面目で責任感の強い人だそうだ。
彼は、どんなに酷い目に遭わされても、「プロの世界とは、こういうものなんだ」と自己判断して、追いつめられていたのではないだろうか。
もちろん、デーブ大久保は、相手が反撃できないことなど、百も承知。

デーブ大久保は、以前、女性問題でコーチをクビになった。
にもかかわらず、彼は、1年くらいで、「復職」してきた。
上司である渡辺監督に愛されていたのだろうし、彼を慕う選手も多かったのだろう。
いままでの彼は、少なくとも、それなりの数の人から信頼されていたし、有能だと思われていたのだ。
おそらく、女性問題でクビになる前も、彼の「やりかた」は、今回と変わらなかったはず。

世の中には、「標的」を次々と犠牲にしながら、「有能」だと言われ続けている「イジメ上手」が、溢れている。
デーブ大久保は、たぶん、「ちょっとやりすぎた」だけ。

僕がこれを書いたのは、「あなたがイジメられているのは、あなたが悪いわけじゃない。駒として利用されているだけなんだ」と、伝えたかったからです。
そして、そういう目にあっているのは、あなただけじゃない。

正直、「自分だけじゃない」とわかっても、どうにもならないことも多いんだけど、少なくとも、こういう「仕組み」みたいなものを知っていれば、少し自分を見なおせるんじゃないか、とは思うのです。
あなたは、あなたが思いこまされているほど、つまらない人間じゃない。