琥珀色の戯言

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【映画感想】キングスマン:ファースト・エージェント ☆☆☆

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イギリス、ドイツ、ロシアといった大国間の陰謀が渦を巻き、第1次世界大戦勃発の危機が迫ろうとしていた。そんな中、コンラッド(ハリス・ディキンソン)は父親のオックスフォード公(レイフ・ファインズ)に連れられ、高級紳士服テーラーを表向きの顔にしたスパイ組織キングスマンの一員として迎えられる。世界に迫る危機を回避しようと動き出す二人だが、その前に怪僧ラスプーチン(リス・エヴァンス)が立ちはだかる。

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2022年1作めの感想(観たのは2021年の大晦日の朝でした)。
観客は15人くらい。

「映画館だけで大ヒット上映中!」
マトリックス』の新作に心惹かれつつも、前3作の復習もしていないし、気軽に観るならこっちだよなあ、ということで。

……英国風スタイリッシュスパイアクション、というイメージのシリーズですが、観ていて、そういえば……と気がつきました。
キングスマン』って、シリーズのどの作品にも、「苦味がずっと残るようなシーン」があるんですよね。
 この『ファースト・エージェント』も例外ではありませんでした。
 けっこう残酷な描写も出てきます。
 これまでのシリーズに比べると、時代が遡り(100年以上前の第一次世界大戦の時代の話なので)、『キングスマン』の組織も出来上がってはいないので、思わずニヤニヤしてしまうような小道具や、引いてしまうような敵の虐殺シーンは少なめになっています。
 逆に「戦争・戦場というもの」がけっこう気合を入れて描かれており、あれ、『1917 命をかけた伝令』を観に来たんだっけ?と途中で思ってしまったくらいです。


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 しかし、あれだけ多くの人が亡くなった、人類史上初の「世界大戦」とそれに関係する人物を、ここまでネタにしてしまっていいのだろうか、「不謹慎」とか言われないのだろうか、と2022年の日本で生きている僕は気にかかってしまうのですが、それが「英国」という国とそのインテリジェンスの奥深さ、なのかもしれませんね。あらためて考えてみると、日本でも『るろうに剣心』では明治維新の志士たちや新選組の隊士たちがエンターテインメントとして描かれているわけですし、『帝都物語』という作品もありますし。『大逆転裁判』での夏目漱石さんの扱いに比べれば、まだ敬意がある、といえなくもない。
 それでいて、「ラスプーチンの毒耐性」なんていうのも史実に忠実に描かれているわけで(いや、それこそ「単なる伝説」ではあるのですが)。
 エンディング後の「おまけ映像」は、さすがにいろいろとヤバいのではないか、という気はしたんですけどね。
 彼らの国はもう無くなっているから、ということなのかな……
 西欧では、第一次世界大戦という「歴史を変えた戦争」を、こんなふうに描くことが許されるのか、「ネタ」にしちゃってもいいのか、というちょっとした驚きもあったのです。
 ラスボスの正体も、「つまらなくて意外」でした。

 ただ、『キングスマン』の面白さというのは、「現代で、時代錯誤的な『英国紳士風エージェント』が、その『ジェントルマンとしての誇り』を見せつけたまま活動するところ」ではあるので、この「ファースト・エージェント」に関しては、「ミスマッチ」が目立たず、「なんかふつうの、ひと昔前の『007』みたいな映画」になってしまった感はあります。これはこれで、なんだか懐かしかったし、人の親として、「刺さる」作品ではあったのですが。


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