琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

桜庭一樹読書日記 ☆☆☆☆

内容(「MARC」データベースより)
こよなく愛するジョン・ディクスン・カーのミステリから、ガルシア=マルケスの小説、茨木のり子の詩集、三島由紀夫のエッセイまで。『Webミステリーズ!』好評連載に豊富な注釈や書誌データを盛り込んで単行本化。

 僕は基本的に他人の日記を読むのが好きで、「作家」という職業の人の日常に興味があるので、まさに「ツボにはまっている」本なんですよね、これ。僕と同世代の作家というのは、どんな本を読んでいるのかというのも非常に興味深いですし。ただ、最初のほうは、あまりに出てくる本が多いので、ちょっと頭がこんがらがってしまいそうになるんですけど。
 桜庭さんは、とにかくすごい量のミステリを日常的に読んでいて、その読書量には驚くばかりです。僕は自分のことを「本ばかり読んでいて、他のことはほとんど何もしなかった子供」だと記憶していたのだけれど、桜庭さんの読書っぷりを読んでいると、「負けた」というか、「作家っていうのは、こんなに本を読んでないとなれない職業なのか……」と呆然とするばかり。
 もっとも、作家の多くは読書家なのですが、東野圭吾さんみたいに、「学生時代はほとんど小説なんて読んだことがなかった」状態から人気作家になる人もいるし、西村京太郎さんのように、「70種類(だったかな、とにかくたくさん)の職業・アルバイトを経験してから作家になったという「人生経験派」もいるので、一概に「本さえ読めば作家になれる」ってわけでもないみたいなんですけどね。
 ただ、桜庭さんが書かれたものを読んでいると、桜庭さんというのは、自分の読書経験を自分の作品にすごく活かしている人なのだな、という気はします。あと、飾らないマニアックな人柄にも好感が持てました。でもなあ、僕がもっとミステリ好きだったら、この本、もっと愉しく読めたはずなのに!

 ところで、この日記には、「本好き」には、思わずハッとさせられるような「金言」が散りばめられているのです。

 わたしは普段、本や映画を選ぶときに、人が薦めるものをなるべく入れるようにしている。自分の選択だけだとどうしてもかたよって、その場所がせばまっていってしまう。せばまり続けるとちいさくなって完結して、そうなったら、死ぬ。それで、会う人に好きな本やらさいきんのお気に入りなどを聞くくせがあるのだが、ここ1ヶ月ほど忙しくて、部屋にこもるか慌しく打ち合わせするかで、循環していなかった。

 「本好き」を長く続けていると、自分で「自分の好きなタイプの本」っていうのがわかってきてしまうので、ついつい、選択の幅が狭くなってしまうんですよね、僕なんかいつもここで、「なんで最近の日本の若手女性作家は、家族の再生小説みたいなのばっかり書いてるんだ、飽きた!」などと愚痴っているわけですが、考えてみれば、そういう本って、ことごとく「僕自身が選んでいる」わけです。同じような本を自分で選んでおきながら、「なんでみんなこんなに似たようなのばっかりなんだ!」っていうのも、考えてみればバカバカしい話ですよね。でも、「本読み」には、少なからずこういう傾向ってあるんじゃないかなあ。
 極端な話、普段ミステリをあまり読まない僕などは、この本を眼をつぶってパッとめくり、そこで紹介されている本をとにかく読んでみる、というような本の選び方をするべきなのかもな、とも感じるのです。そうしないと、結局のところ「自分好みの本」の範疇でしか読まなくなってしまうんですよね。実際は「自分が読みたい本」をこなすことすらできない人生なわけですが……

 最後に、ひとつちょっとしたクイズを紹介してこの本の感想を終わりにします。

 帰宅してばたんと倒れて、それからひさしぶりにとあるミステリの古典を読み返した。これをいちばん最初に読んだのは小学校高学年のときで、図書室で借りて教室に戻ったとたんに友達が寄ってきて「それわたしも読んだー。目次見たら、最後の章が『悲劇の少年』だから、犯人は少年だってわかっちゃうんだよね?」と言った。ネ、ネタバレである。死刑である。けんかになった(どこの出版社のものかは忘れたけれど、現在の目次はこうではないらしい。犠牲者が多かったのかもしれない)。

 こ、この本、僕もまったく同じ目に遭ったのを思い出しました。ほんと、ミステリのネタバレは死刑!
 さて、この「とあるミステリの古典」とは?

 ミステリ好きとは言えない僕でも知っている作品なので、皆様すでにおわかりでしょうが、くれぐれも「答え」をコメント欄に書いたりしないでくださいね。わかった人は、一緒にニヤニヤしましょう。ではまた!


 ちなみに現在、東京創元社の「Webミステリーズ!」で『続・桜庭一樹読書日記』が連載中なので、興味を持たれた方は、こちらを「ためし読み」してみると良いのではないかと(しかしこのページデザイン、出版社の公式ホームページの連載とは思えない素朴さだな……)。

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