琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

レッドクリフ Part I ☆☆☆☆


『レッドクリフ』公式サイト

あらすじ: はるか昔の中国で絶大な権力を握る曹操(チャン・フォンイー)は、その兵力にものをいわせて敵国を攻めたてていた。彼の天下統一の野望を打ち砕くため、孔明金城武)と周瑜トニー・レオン)はともに協力し、連合軍を結成。だが連合軍の数はわずか6万、片や曹操の軍勢は80万で、その兵力の差は誰の目にも明らかだったが……。(シネマトゥデイ

最初に書いておきます。
僕は小学6年生のときに、『人形劇三国志』から吉川英治の『三国志』にハマり、光栄の『三国志』で遊ぶためにフロッピーディスクを買った「三国志フリーク」なので、たぶん、「ああ、『三国志』て、横山光輝のマンガのやつ?ああ、昔ちょっと読んだことあるよ」という人とは全く違う感想になるのではないかと思います。

金曜日のレイトショーで、観客数は60〜70人程度。金曜日の夜でまだ公開1週目とはいえ、このシネコン基準でいえば、なかなかの客入りです。同じようなシチュエーションで、『クローン・ウォーズ』は、僕ひとりでしたから……
三国志』フリークとしては、あの「赤壁の戦い」を、あのジョン・ウー監督が100億円かけて映像化したということで、かなり期待していたこの作品、avexがかなり宣伝に力を入れていることもあり、なかなか好調みたいです。

僕は、『ロード・オブ・ザ・リング』を観終えたときに、こう思いました。

いろいろと言いたいことはあるけど、これ以上の作品はもうできないんじゃないかな。

この『レッドクリフ Part I』に関しては、こんな感じ。

いろいろと言いたいことはあるけど、まあ、これはこれでアリなんじゃないかな。

正直、ストーリーには不満だらけなんですよ。
「要らないシーン」があまりに多いような気がしたし。
この長い物語を映像化するためには、ただでさえ時間が足らないはずなのに、「なんでわざわざこんなシーン入れたの?」と言いたくなる場面がけっこうありました。
そして、この映画では、劉備曹操が全然魅力的に見えないんですよね。
劉備は本当に存在感が薄いし(草鞋ネタが挿入されているのですが、あれって元ネタを知らないと「なんでこの人、こんなことやってんの?」としか思われないはず)、曹操は単なるエロ親父。

女ひとりのために、この戦争を起こしたのか!

そんなわけねーだろ!! 曹操をバカにしすぎ!
僕は曹操嫌いですけど、『三国志』を読み返すにつれ、『三国志』の「一方の主役」はまぎれもなく曹操だとわかってきましたし、「手段を選ばずに旧弊を打ち破る革命家」としての曹操に惹かれてきているんですよ。僕は曹操にはなれないなあ、という諦念も含めて。
吉川英治の『三国志』の解説にも、吉川英治孔明の死で物語を終えた(『三国志演義』では、三国の滅亡まで描かれているにもかかわらず)ことについて、「『三国志』というのは、曹操孔明という二大英雄の興亡の物語で、前半の主役が曹操、後半の主役が孔明なのだ」と書かれていましたし。
張飛がビジュアル的に「似てる!」(って本人には会ったことないけど)のは笑ってしまいましたが。

アクションシーンも迫力は認めるけど、けっこう冗長だったし、公式サイトには、

この秋、最高のデートムービー

って書いてあって苦笑してしまいました。
趙雲萌え!」みたいな女子には良いかもしれないけど、けっこうグロテスクな流血描写が多いんですけど……

……とはいえ、ひとりの『三国志』フリークとしては、「『三国志演義)』の世界を中国人が映像化したら、こんなふうになるのか……」と感慨深いものがありました。
趙雲の赤ん坊を抱えての敵中突破なんて、現在僕が置かれている状況もあり、涙が出そうになってしまいました。
(ただ、ファンとしては、劉備が阿斗を地面に投げ捨てるシーンがちょっと観たかったし、「そいつを助けるから、将来の蜀が……」とか毎回考えてしまうんですけどね)。
赤壁に布陣した、(劉備孫権連合軍からすれば)絶望的な数の曹操軍を観ると、純粋に「すげーーー!」と感動してしまいました。

フリーク的には、「いや、これはエンターテインメント映画なんだ、ジョン・ウー監督の『好み』なんだ」と自分に言い聞かせなければやってられない、「ちょっと違うんじゃない?」と言いたいところが多かったのは事実なのですが、「こんなの違う!」ではなくて、「こういう『三国志』の描き方もあるのだな」と割り切って観れば、けっこう楽しめる映画なのではないかと思います。

とりあえず、『三国志』ファンには、一度は映画館の大スクリーンで観ていただきたい映画です。
「デート」にはオススメしませんけど……


以下はネタバレ感想&愚痴です。
映画を未見で、今後鑑賞予定の方は読まないほうがいいです。

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